表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/86

36 浴衣、あだ名、脚

「おー、シュレナさんも浴衣だね!」

 シルエット二つのうち、より長身の方が声をかけてきた。

 シュレナは走って近づきながら、

「おそろいだね」

 と、はずんだ息で返事をする。相手はイリカである。

「よくお似合いですよ」

 シルエットの、もう一人が褒めてくれた。ロタだ。

「ウケる。褒められた!」

 と、シュレナは噴き出す。意外さとうれしさで。ロタはキョトンとした顔で、

「えっ。何がウケるの?」

「服、褒めてくれたの初めてじゃん」

「そうだっけ?」

 強くうなずいたシュレナは、

「ワンピースの時も、何も言ってくれなかったですよね」

「んー、そういえばそうかなあ」

 ロタは顔の側面をポリポリかいて、

「今はセクハラとか、色々言われかねん世の中だからねえ。服装も、下手に褒められないんだよう」

 シュレナは意地悪するように、

「えー、セクハラって。どこ見てたんスか?」

 ロタは気まずそうに苦笑し、

「えっ。どこって。いや、そういう意味じゃ……」

「あっ。やっぱり、い、いいですいいです」

 シュレナは質問を引っ込めた。ワンピースがめくれた件を突然思い出し、恥ずかしくなったからである。

「まあとにかく、褒めていただけて超うれしいです!」

 と、シュレナは締めくくる。


(よーし。私の浴衣、ロタさん気に入ってくれたみたい。着て来て正解だったな。多分、未来から見てたんだろうし。

 もし浴衣じゃなかったら、今日、お祭り、来てくれなかったかも)

 そう、浴衣を着たのは、「未来人」ロタをおびき寄せるための、シュレナなりの作戦だったのである。隙あらば逃げようとする、ロタへの牽制だ。

 シュレナの浴衣は白。

 一面に、赤いイチゴの実のイラストがプリントされている。

 帯は、黄色に、白抜きの水玉模様だ。


 女子二人のトークに花が咲く。

「シュレナさん、イチゴの浴衣かわいい」

「ありがとう。呼び方、シュレでいいですよ」

「ナを略すの?」

「うん。そう呼ばれてます」

「分かりました、シュレ。その原則だと、私はイリだね」

「イリちゃんでいいかな?」

「もちろん。浴衣はよく着るの?」

「ううん。去年の夏に、祖母が買ってくれた。中学の入学祝いにね。けど、着付けが面倒で。家で一回試着したきりだったなあ。

 イリちゃんの浴衣は特注品?」

 尋ねてから、

(ストレートに聞き過ぎか?)

 と、一瞬シュレナは後悔したが、あっさりイリカはうなずき、

「そう。知り合いが作ってくれて」

「素敵。青がきれい」


 会話が平穏につながったことにホッとしながら、シュレナは、普通の賛辞でワンクッションを挟んだ後、

「その人、ロボットの専門家?」

 少し核心へ踏み込む。

 ロタの笑顔が曇ったようにも見えたが、口は出してこなかった。

「そうだよ。私の脚を、細くしてくれた人」

 何と、イリカの方から更に踏み込んできた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ