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35 夏祭り・会うのは「女友達」

 夏祭り会場は、シュレナの通うケミホ中学校と同じ区域にある。

 文化展示会を行った市民ギャラリーとは、駅を隔てた反対側である。

 公園と球場、神社がつながった広い一画にて、年に一度、金曜から日曜にかけて祭りは開かれるが、最も盛大なのは真ん中の土曜、すなわち本日となる。八月八日。


 夕方、六時過ぎ。

「えーと、次はシャツ」

 自室にて着替えながら、シュレナは独り言。

(胸元より首筋と背中が見えちゃうって、ネットに出てたよね。スポーツブラだからいいかな?

 いや、よくねえな。シャツでガードと。下はパンツ透け対策で体操服履いてと)


 身支度を整えたら、一階へ下り、台所にいる母親にあいさつ。

「ママ。じゃあ行ってくるね、お祭り」

「今年は気合い入ってるじゃないの。好きな男の子でも来るの?」

 シュレナの格好を見た、母のコメント。

「それ、ユツコにも言われた」

「違うの?」

「違う。女の子だよ。知り合いの」

 うそは言っていない。母は、

「ユツコちゃんはソフトボール?」

「そう」

「運動部は大変ね」

「だね」

「夕飯は一応軽めに用意しておくから、お祭りであんまり食べられなかったら、帰ってから食べなさい。おなかいっぱいなら、明日の朝でもいいし」

「ん。ありがとー」

「行ってらっしゃい。気を付けてね」

「行ってきます」

 シュレナは家を出発する。


 外に出ると、遠くから祭りの太鼓の音が聞こえた。

 辺りは住宅街だが、近くには高層ビルの明かりも見える。

 早くも祭りから帰ってきたらしき人たちが、何かを飲み食いしつつ歩いていた。もちろん、今から向かう人波もいる。街灯に照らし出された笑顔は、皆、楽しそうだ。シュレナの胸もソワソワする。

 祭り会場は、歩いて十数分の距離。


(球場ベンチ裏付近の砂場・鉄棒のそばってメールに書いたけど、迷ってないかなあ?)

 少し不安になる。この待ち合わせ場所を決めたのは、もちろんシュレナだ。地元だからこそ知る穴場。目立たず、比較的見つけやすいスポット。

(ロタさんのことだから、また下見してたりして)

 歩きながら、小さく笑う。

 道路の端などにも、ちょうちんや屋台が増えてくる。会場へ近づいている証拠だ。

 いつしか、周囲は人ごみに変わっていた。子供たち、若者、家族連れ。知らず、シュレナもパタパタと早足になる。

(こんなお祭りの夜ですから、神様、素敵なひとときを、どうか私にください。

 未来からお越しのあのお二人に、また会わせてください)

 雰囲気に飲まれたのか、感傷的、情緒的にもなるシュレナ。


 公園の入り口を抜けると、メイン会場の方へは行かず、ぐるりと外側へ回り込む。球場の裏へ。一気に人は減る。

「あっ……」

 不意に、シュレナの耳から太鼓の音が消える。

 真っ正面、三十メートルほど離れた砂場に、二つの大きなシルエットが見えた。

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