表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/86

33 元・理系少女として

「いや、実はな……」

「今は言いにくいなら、別に無理して話してくださらなくていいですよ」

 五秒ほど考えてからロタがゆるゆる声を出すと、間髪を入れずに、電話口のリモリがさえぎってきた。

「えっ」

 ロタは面食らうも、

(ああ、これがリモリさんだったなあ)

 しみじみと思い出すのだった。

 十代の頃から変わっていない。気遣いが細やかなのである。


 でも。

 いや、だからこそ、だ。

 この人には話しておきたい気がした。見解も聞きたい。


 ロタは、シュレナの名前や展示会の地名は伏せ、これまでのいきさつを話した。

 春の駅前での突然の出会いから、展示会におけるトラブル、祭りへの誘いまで。

 リモリは、相づちと質問を挟みつつ、冷静に聞いてくれた。

 十分程度で話は終わった。リモリは、

「最初の対応からして微妙だよねえ」

「展示会、行かない方がよかったかね?」

「それ以前」

「以前?」

 聞き返しながら、ロタはあぐらを組み直し、自室の床で身構える。

(こりゃ、思ってたより厳しいこと言われるのかな)

 との予感もよぎる。スマホもしっかり握り直す。


「その女の子がイリカちゃんのことをロボットかと疑った時点で、ロタさんが間に入らなきゃ駄目」

「むう。確かに、イリカに任せてしまったなあ」

 ロタはうなる。リモリの語気がやや強まり、

「イリカちゃんは人工知能なんだから、言わばタッチパネルみたいなものでしょ。その子にどんどん押されて、イリカちゃんもそれに答えて、後戻りできなくなったんだよ」

「その前に俺が適当なこと言って、追い払えばよかったわけか」

「そ。今忙しいんだ、とかさ」

「なるほどな」

 言われてみればだ。


 リモリがスーッと深めに息を吸う音がした。

「だけど、イリカちゃんの指摘も、それはそれで重いよね」

 シュレナの将来に貢献し得る、と述べたことである。ロタも、

「だよな。我らがたどった道でもあり」

 リモリも、イリカ製作を通じて人生がひらけたのだ。

「うん。私もいろいろ出会えたからね」

 と、一旦は同意しつつも、リモリは諭すように、

「でも、中学生は子供過ぎますよ。何か教えるにしても手伝わせるにしても、ちょっと無理でしょ」

「まあな……」

「中途半端にその気にさせるのはかわいそうだよ」

「かもな」

 ロタの胸に痛みが走る。


 ロタは弱気になり、

「いっそ、祭りも断ろうかな」

「むしろ、お祭りを最後にしたら?」

 と、リモリの声が優しくなる。ロタは、

「それも手か」

「イリカちゃんとその子と、長めに話させてあげるとかさ」

「ああ、いいな」

「で、距離を置くの。

 早めに切り上げないと、その年頃って、思い込みが激しい子も多いから」

「思い込み?」

「ロタさんのこと、宇宙人とか、未来から来たとか思ってるかもよ」

 リモリの言葉に、

「まさか」

 とロタは笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ