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32 「少女」イリカの「精神」的支柱

 リモリ。年は二十八歳。

 ロタと出会った時は十九歳だったので、もう、長い交流である。

 父親のマノウが、南方の遠い県にて町工場を営んでいる。

 イリカの骨格や動力は、マノウが開発・製作した。

 それを手伝ったのが、娘のリモリというわけだ。


 今は首都圏へ引っ越し、マンションで新婚生活をしている。

 職場結婚だ。勤め先は、機械工学系の大企業。

 リモリはエンジニアとして働いている。知識も手先も、腕力も使う仕事である。


 数か月ぶりに話した二人。ロタが、

「急に、夜分に電話して申し訳ない。今、しゃべって大丈夫ですか?」

「平気平気。夫は仕事だしね。まだ帰って来てないです」

 というリモリの声から、口の中に物が入っている気配を感じたロタは、

「あっ、でも、済まん、食事中だった?」

「ん。まあ。ハンバーガー食べてた」

 ロタは少し驚いて、

「いいのかい、そんなの食べて?」

「おなかの赤ちゃんに、ってこと?」

「そう」

 電話越しの笑い声と共に、

「関係ないって。むしろ、食べられる物を食べとかないとさ。取れる物から栄養取んないと」

「えっ。食欲ないんですか?」

「味覚が変わるんですよ。聞いたこと、ない?」

「すっぱい物が欲しくなるとか……」

「それは妊娠初期。しかも俗説。実際はもっと深刻なんだよ。

 最近、白いご飯も駄目になってさ」

「受け付けない?」

「匂いがねえ。ウエッってなるの。で、脂っこい物が食べたくなるんだよね」

「そういうものか」

 独身で子育て経験もないロタには、未知の世界である。


 リモリは妊娠四か月。

 徐々に産休への準備を始めているという。


 やがて、話は本題へ移る。

「ところでね、リモリさん。

 この前メールで、イリカの服を新たに作ってくれるって言ってたでしょ」

「うん。ワンピースか浴衣の型紙データが描けたから、どちらかを選んでね、と」

 と、リモリ。

 イリカの服は、リモリが定期的に製作してくれているのだ。ロタは謝礼を払っているが、半分はリモリの好意による。

 元々、イリカの体が試作段階の頃から、リモリは被服も担当。その名残もあり、現在に至る。


 ロタは、

「そう、そう。あれね、決まりました。浴衣にします」

 電話の向こうで、リモリの声がはずむ。

「了解。何、何。着て行く当てが出来たわけ?」

 クリクリと光るリモリの瞳が浮かぶ。

「ああ。イリカと一緒にお祭りに行こうと思ってね」

「へえ、いいじゃん。でも、ちょっと意外ー」

「なんで?」

「だって、出不精のロタさんがさあ。もしかして、誰かに誘われた?」


(うわあ。相変わらず鋭いなあ)

 ギクリとするロタ。

 今まで、イリカの「メンタル」面でも、リモリにはさんざん世話になった。

(感づかれた以上、隠し事はよくないかなあ)

 シュレナの件、話そうか。ロタの気持ちは揺れた。

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