27 ワンピースとズボン、役割分担
「これ書いたの、まずかったかなー。いや、でも隠すのも何か変だし」
たった今、ロタに返信したメールを、読み返しながらシュレナはつぶやく。
まだ展示の会期中であるのに、予定を繰り上げてロボットを自主回収した件である。
今日と明日は金曜、土曜で、最後の二日間。客の増加も見込まれ、正直、悔やまれた。
しかし、昨夜のあの誤作動がまた起きても困る。
それに、親類や先生、友人と、事前に期待していた人たちは既に、ほぼ来てくれていたのだ。ダメージは小さい。
(けどなー、気を遣われたら嫌だなあ。ロタさん、俺のせいだ、って思うかなあ)
シュレナは、スマホを持たぬ方の手で、頭をバリバリとかいた。
ロタの、人がよさげな笑顔を思い出しながら。
市民ギャラリーでの文化展示会を、ロタとイリカが見に来てくれた日の、翌日である。
夕方。場所はケミホ中学校。
校舎から独立したプレハブ。放課後。
理学研究部の部室だ。
制服姿で椅子に座ったシュレナが、机とのすき間に挟むようにして、両膝を立てていた。手にはスマホ。
行儀のいい座り方とは言えぬが、下は長いズボンである。
仮にスカートだったとしても、その場合には必ずハーフパンツを中に履くし、そもそも部室にはシュレナ一人。
気にしなくてよいのだが、スカートだと、すそが垂れてきたり挟まったりで、煩わしいのだ。
そんなシュレナも、昨夜は久しぶりにスカートを着た。私服の赤いワンピース。
実は、これにはシュレナなりの思惑があった。
ロタを「おびき寄せる」ためであった。
シュレナは、ロタとイリカのことを、未来からのタイムトラベラーだと思っている。
何らかの方法で、シュレナのいる「現在」を、のぞき見しているのではないかと考えたのだ。
元々、ロタは逃げ腰で、展示会には来る気がなさそうに思えた。
実際、日曜から水曜には来なかった。
そこで、一計を案じて、ワンピースを着てみたわけである。
未来からそれを見たロタが、来場するかもしれないと読んだのだ。
水曜の朝、教室で、クラスメイトのガイチに「ズボンは色気がない」とからかわれたことも、この作戦を後押しした。
あのセクハラ発言には腹が立ったものの、「男って、やっぱりそうなのか」と参考にはなった。
そういえば、先週土曜の準備でロタとバッタリ会った時にも、ロタはシュレナのズボン姿を、どこか物足りなさそうに眺めていた気がした。
これらを総合し、ワンピースをタンスの奥から出したわけだった。
(けど、その割には、ロタさんは最初、私だと気付いてなかったけど。あれは演技?)
と、引っ掛かる点もあるが、
(結果オーライだよね。めくれ上がっちゃったのは計算外だったけど。まあ体操服着てたし……あんま見えてなかったよね)
その時、メールの返信がロタから届いた。




