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24 ロボットを連れ歩く不便さ

 シュレナが、そばに立つイリカを見上げる。

「そんな……。

 イリカさんのせいじゃないですよ。私の設計ミス……」

 シュレナの口調は、うつろに聞こえた。無理もなかろう。

 自作ロボット暴走という大ショックを、受けたばかりなのだ。まだ、他を気遣う余裕など持てまい。

 イリカは首を左右に振る。キュイー、キュイーと頭部の継ぎ目がきしむ音。

 その音が、イリカの「アニメっぽい」悲しげな表情と相まって、

(やっぱり、イリカは人工のアンドロイドなのだなあ)

 改めて、ロタは認識する。

 中学生の作ったミニロボットを見学するという、ちょっとしたイベントでさえ、そう簡単ではないようだ。


 イリカは、ロタの方も見ながら、

「うまくいかないもんだねえ。

 私の手、つくづく、シュレナさんとは相性がよくないみたい」

 いつの間にか、イリカは腕をしっかりとケープの中へ隠していた。その姿が切ない。

 ロタは二、三秒考え込む。

(わざわざ、今それを言わなくてもいいのにな。まあ、ロボットだからな。毎回、空気読むのも難しいか。

 それに、言ってることは的確かも。あの握手でも怖がられたし……)


 その時である。

「どうされましたか!」

 不意に、部屋の出入り口から女性の大声。

 グレーのパンツスーツ姿の中年女性だ。この市民ギャラリーの職員であろう。

 今の物音を聞いて駆けつけたに違いない。

 一瞬、シュレナは棒立ちになったが、すぐさま中年女性にタタッと近寄ると、

「済みませんっ!

 あのっ、私の虫ロボットが囲いを越えちゃったんです!」

 少々、不自然なほど迅速な対応である。

 年長者として、場を取りなそうとしたロタは、出ばなをくじかれた格好。何だか、割り込まれた気分だ。

「あなた、出品者?」

「そうです。このロボットを展示してたんですけど、誤作動しちゃって」

 シュレナは、手に持った小型ロボットを見せながら答えている。

 女性職員は、

「もう大丈夫なの?」

「はい。問題ありません」

 強くうなずきながら、シュレナは、三メートルほど離れたロタとイリカをちらりと振り返って、素早く、もう一つの出入り口をあごで示す。目くばせであった。


「!」

 ロタはすぐ悟る。これは、今のうちに去れという合図だ。

 確かに、この職員にイリカを間近で見られ、ケープ姿や機械的な動作を怪しまれたら面倒ではある。

(でも、俺の責任でもあるんだけどなあ)

(中学生に任せて、大人の俺が逃げるってのか?)

 迷ったものの、

(イリカは、速くは歩けない。出るなら今しかない)

(それに、俺とシュレナさんの関係だって、第三者には説明しにくいぞ)

 考えている暇はなさそうだ。

 ここはやはり、シュレナの機転を無駄にすべきではなかろう。

「イリカ、出よう」

 ロタは小声で促す。

 緊迫感を察知したのか、イリカは無言でうなずいた。

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