表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/86

14 シュレナ直筆、未来人対策メモ

・イリカさんとロタさんが未来人だと仮定して


・目的は旅行か。陰謀なら、無防備に私と接触しないはず


・ロタさんが敬語だったのもつじつまが合う。未来人だから私の方が年上?


・私が成すべきことは、イリカさんから科学知識を吸収

(また会える前提で)


・歴史改変にならないよう注意!


 その夜。

 帰宅して私服に着替え、夕食後、二階の自室にて、シュレナはこのようなメモをノートに書いていた。頭を整理するために。

 昼のサミヤ先生の解説も、納得はしている。だから、イリカとロタが自分と同時代の者だという考え方も捨てない。

 しかし、今のところ、タイムトラベラー説に傾いている。

 イリカのロボットとしての完成度が高過ぎたからである。やはり今の文明では造れない気がする。


 加えて、シュレナにはファンタジー好きの一面もある。

 サンタもタイムスリップも、半分は信じている。

 この辺は、十代前半の少女らしさかもしれない。


「お姉ちゃん、風呂上がったよ!」

 三歳下の弟が、一階から知らせてきた。声変わり前の高い声。

「ありがと。入る!」

 シュレナも叫び返す。

 廊下へ出ると、正面の部屋から父親がひょいと顔を出し、

「シュレナ、制服のズボン出しといて。今からアイロン」

「分かったー」

 シュレナが、中学校の制服をスカートからズボンへ変えて以降、アイロンがけは母から父に交代。

 父は三日おきに自分の背広ズボンのアイロンをかけており、ついでというわけだ。

「スカートは分からんけど、ズボンなら出来るからさ」とは父の弁。

 なお、母も勤め人。まだ帰宅していない。


 シュレナは部屋へ引き返し、クローゼットから制服ズボンを取り出し、ハンガーごと父に手渡す。

 その直前、ハンガーを少し高く掲げ、ズボンのお尻をちらりとチェックしたが、今朝の汚れはもう落ちていた。


 階下の風呂場へ。

 着ていた青いトレーナーを首から抜く。

「!」

 不意に、ギクリとするシュレナ。

 トレーナーの袖からニュッと現れた自分の腕が、洗面台の鏡に映り、それが今朝のイリカとの握手シーンに重なったからである。

 鏡越しのシュレナ。白いキャミソール姿。

 肩から指先までむき出しの、きゃしゃで、やや色白の腕。

 一方、朝のあの光景。ケープから出てきたイリカの腕。

 可能な限り、人の腕に似せてあったはず。だが、それでもなお、継ぎ目やぎこちなさは隠しようもなく。


「服の中は普通に下着、それから体。シュレナさんと同じだよ」。

 イリカから告げられたせりふを思い出し、改めて恥ずかしさがよみがえる。

 ザブン!

 眼鏡を外し、服を脱ぎ、わざと乱暴に湯船へ飛び込んだ。

 三秒ほど、頭まで潜り、膝を抱える。

(楽しいことだけ、覚えていられたらいいのにな)

 いつだって、甘い夢は苦い現実とセットで、かむと変な味がする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ