表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/86

11 部長お着替え中

 数時間後。

 場所はケミホ中学校。昼休み。


 理学研究部の部室にて、シュレナが一人、立ったまま考え事をしていると。

 目の前のドアにノックの音。向こうから、

「シュレちゃん、いる?」

 よく知った女性の声。サミヤ先生だ。理学研究部の顧問。理科教師、三十三歳。

 なお、ここはプレハブで、校舎の離れ。辺りは中庭。他の生徒の声もする。

「どうぞ。あいてまふよ」

 シュレナが答える。「ます」と発音できなかったのは、おにぎりをほおばっているから。

 ドアが開き、白衣姿の女性が入ってくる。

 やや恰幅のよい、大らかそうな外見。

 が、すぐギョッとした顔に変わり、中庭をうかがった後、慌てて後ろ手にドアをバタンと閉め、

「こら、シュレちゃん!

 またこんな所で着替えて!」

「次の五限、体育なんでふよ」

「そういう問題じゃないでしょ」

 と、サミヤ。

「考え事ひてたんで」

 シュレナは会釈する。

「分かったから、早くそれ、履いちゃいなさい!」

 サミヤは苦笑して顔をそむける。


 シュレナの上半身には、制服の白ブラウス。長そで。

 前をはだけており、中は白い半そでシャツ。名札が縫ってある。家から着てきた体操服だ。

 制服のズボンは脱いだ後で、椅子の背に掛けてある。

 そのあと、赤いジャージに着替えていたのだが、履いている途中であり、膝で止まっていた。今、下は赤いハーフパンツ。


 しかられたシュレナは、左手に残っていた食べかけのおにぎりを口へ放り込み、両手でジャージのズボンをグイッと引き上げた。

 巻き込んでしまったブラウスの裾を出し、シャツを腰ゴムの中へ押し込む。

「ズボンの制服は動きやすくていいんだけど、」

 おにぎりを飲み込み、ブラウスから腕を抜きつつ、

「ジャージを下に履けないのがねー。そこはスカートの方が優れてるなあ」

 ぼやくシュレナであった。サミヤは、

「ハーフパンツは履ける?」

「無理。お尻きつくて。オーバーパンツは履けますけど」

「えっ。じゃあ今、四枚も重ね履きしてるわけ?」

 シュレナはうなずいて、

「世の中、物騒じゃん」

「まあねえ。

 とにかく、なるべく更衣室使いなね。

 で、着替えてる時は、ノックされても待っててもらうこと」

 と、サミヤは顔をしかめる。

「はあい」

「第一、私が今、男子を連れて来てたらどうする気だったの?」

「あっ、なるほど」

 気付かなかった。

(頭いいサミヤ先生なら、その場合は一言添えてくれるよね)

 とも思ったが。

 部活一年間での信頼関係というやつだ。


「それで?

 何、考え事って?」

 サミヤが問いかける。

 いつも、シュレナの話をよく聞いているところがうれしい。

 シュレナは、今朝からの疑問を口に出し、

「未来から過去へのタイムワープって可能ですかね?」

 唐突な質問にも、サミヤは即答する。

「それは無理よ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ