表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/21

それは、制作側に言ってください


「そろそろ本格的なクエストをしましょうか!!」


「ほう」


今まで2度のクエストをこなしてきた。


初クエストは、村人にご挨拶。

2度目のクエストは採掘へ。


2度目は初心者クエストということを踏まえれば、

妥当なのかも知れないが、

冒険の花形かと言われれば、そうではないだろう。


つい最近、伝説級のめっちゃよく切れる剣を手に入れた。

つまりこれは、神が俺にモンスターを討伐しろと

言いたいのだろう。


だとすれば、俺が次に起こすアクションは

もはやひとつしかない…


ひと狩り行こうぜ!!



*



ってなわけで、

俺、カティ、サラの3人で

芝生が何処までも広がるエリアでのクエストを

攻略している。



「改めて説明しますが、今回のクエストは小型獣の

討伐となっています」


説明ご苦労様


「その討伐するモンスターは、ダチョウよりも一回り大きい

ドードーです」


「絶滅種を架空世界で蘇らせて、もう一度殺すのか……」


「人聞きが悪すぎません?」


「ドードーと言っても、あくまでも似ているだけで、

ちゃんと名前がありますよ」


「「 へぇ〜 」」


「……カティは知ってたよね?」


「あ、あったりまえですよぉ!」


ダウト。



どうやらしっかりカティとサラはしっかりと

打ち解けてくれたようだ。


冒険で信頼関係はとても重要な役割を果たしてくれる。

仲間同士で信頼関係がしっかりと築かれているのは

それだけで頼りになるので、俺も信頼関係を

築くべきなんだろう。


……違うんだ、俺はメンバー間交際を皮切りに

瞬く間に崩壊していくロックバンドみたいに

なるのを避けるために、あ え て、

仲間との距離を気をつけているだけなんだ。

俺なりの配慮なんだ……!!


現実味がない可能性にまで余念が無いなんて、

さすが俺。痺れるぜ。



「唐突に頷き始めたと思ったら、ドヤ顔かましてくるなんて

流石、勇者様ですね。肝の座り具合が半端じゃない」


「……大丈夫?」


もうやめて!とっくにタケルのライフはゼロよ!!



*



そんなこんなで、随分と草原を歩いてきた。

もう疲れた。レジャーシート敷いておむすび食べたい。


「なかなか出てきませんねぇ……」


「普段なら既に2、3回出くわしてもおかしいくないのにね……


まさか大型モンスターが近くまで来てたり……?」


「まさか〜乱入ってことですよぉ?

そんな珍しいこと、あるわけないじゃ無いですかぁ」


「ちょ、おい!フラグを立てるなよ!!」


「心配性ですねぇ」


「そうよね、そんな偶然あるわけ……」


その時、

待ってましたと言わんばかりに身体が身の危険を

知らせてくる。


手足が震える、

今までなんともなかったはずなのに、全身が強張り

奥底眠る何かが、ただ逃げろと伝えてくる。


この感覚を味わう時は大体決まっている。


……モンスターだ。


今のように五感でモンスターや物体の気配を感じ取ることが

出来るのが、VRMMOの最大の特徴と言えるだろう。


普段の生活ではこの感覚は味わうことが出来ない。

ゲームの中だからこそのアドバンテージ。

この身体の芯から緊張するこの感覚は、

身の危険というリアルな感覚とともに

改めてこれはゲームなのだと教えてくれる。


だからこそ、俺のような小心者でも凶悪なモンスターに

立ち向かうことができるのだ。


「いくぞォォ!!!!」


敵の数はおおよそ10体ほど。

幸いにも今回の討伐対象のモンスターだ。


1人当たり、3体の討伐がノルマだろうか。


では、3体だけ討伐するのか?

残りの1体は誰かに任せる?


いいや、俺は勇者だ。

現実世界ではどれだけ弱くても、

ここでは英雄を約束されていると言っても過言ではない。


ここは2人に頼らず、4体……いや、

全ての敵を相手する気持ちで!!


敵は広範囲に広がってこちらへ走ってきている。


剣士である俺は近づかなければならないが、

おいそれと距離を縮められば群に巻き込まれておしまいだ。

っていうか、止まることなく全速力でこちらへ

向かってきている。


え、待って、これあと数秒後には衝突間違いないんだけど?

避ける?駄目だ。そんな時間はとうに残っていない。


あたふたしているうちに

10台の軽自動車、もといダチョウ型のモンスターが

砂埃を撒き散らしながら走ってくる。


「な、なぁ……これさ、やばくね?」


あ、あれ?逃げたいのに腰が抜けて……


勇者とかなんとか言って、浮かれていた数秒前の自分を

殴りたい。


これが、モンスターか。


小型とはいえ、その体躯は我々人間を大きく凌駕している。

ゲームだとしても迫る恐怖は本物らしい。


わりぃ おれ死んだわ


「仕方ないですねぇ!!このカティが助けてあげましょう!」


突如、巻き起こる旋風。

空気を震わせ、モンスターに向かって上空から

無数の雷撃が降り注ぐ。


雷は敵を射ち、雷光に視界が奪われたほんの一瞬で

草原の空気は静寂に戻される。


「セリフがアレだったのでカミナリ落としてみました!」


変なところで空気を読むなよ



「大丈夫!?」


「一応は……サラこそ、大丈夫だったか?」


「カティが全部やっつけちゃったから

なんともないよ」


「それは良かった」


「この命の恩人といっても良いほどの功績を残した

私には何か言うことがあるんじゃないんですかぁ?」


ニヤニヤしながら顔を近づけてくる。


「……助かった」


「あっれぇ?それだけですか??」


「受付嬢TUEEEEって、誰得だよ」


「それは、制作側に言ってください」


今座り込んでいるのは青々とした芝生の上。

360度見渡してもそれは変わらず広がっている。


「なぁ、雷撃の跡がないのはどうしてだ?」


10ものモンスターを跡形もなく消しとばすほどの威力だ。

地面が焦げるなり何かしらの痕跡があるのが自然であろう。


「ありませんよ?そんなの。


あの魔法は範囲攻撃ではなく、単体攻撃なので」


いや、でも確かに全ての敵に攻撃してたと思うんだが……


「単体攻撃で、とても火力の高い攻撃魔法を

10発同時に放っただけですよ?」


「……なぁ、サラ。

普通って一度にどれくらい撃てるものなんだ?」


「下位の魔法師で、一度に2発撃てれば上出来だね。

中堅、上級者でも5発同時に撃てる人は数人しかいないと思うよ」


「そうか……」


「しかもあの威力、いくら強力な魔法といってもあそこまで

強くするには相当な魔法適性がないと」



上級者の2倍の平行魔法行使。

常人離れの魔力適性。


そのステータスは、宛ら勇者のようで、


「ゲームバランスおかしくない?」


「こんなもんでしょっ!!」


んなわけあるか


「私はレベルカンストしてますしね。

ある程度強いのは当然ですよ」


「えっ?カンスト?」


サラが両目を大きく開けながら聞き返す。


「え?えぇ」


信じられない……嘘でしょ……と何やら言い出している

サラを横目に、


「俺のレベルって今」


「1ですね。最弱です」


なんかイラッとするが、まぁよかった。

もし「カンストしてます」なんて言われたのなら

絶望のあまり今流行りの闇落ち勇者になるところだった。


「レベルを上げたら、強くなれるんだな?」


「そうですね」


「じゃあ、次会った敵は俺にやらせてくれ」


「いいですけど、また腰抜かさないでくださいよ(笑)」


「お前を含め、残さず切り刻んでやるよ」


「私、斬撃軽減持ってるので傷一つ付きませんよ」


「お前のチートスキルってどうにかならないの?」




ーーー静寂。


普段の静寂とは全く異なる、嵐の前のような静けさ。

身を切るような鋭い殺気の含んだ空気。


先ほどのモンスターが随分とマシに思えてくる程の気配。


今の今までなかったのに……

自分たちの村の方、進行方向から、それは

ひしひしと伝わってきている。


「これって」


「乱入、ですね」


「乱入?」


「クエストを受けた時って、都合よくモンスターが

いるじゃないですか?


あれって、ある程度運営の方で管理、調節している

おかげなんですよ。

でも、モンスターにAIを搭載したり、エリアの自動更新機能

とかを施していくうちに勝手に増え始めたらしいんですよね」


「じゃあその勝手に増えたのが?」


「その通りです。勝手に増えたモンスターは管理外ですから

調節が難しいんですよ。

で、その管理外のモンスターにクエスト中に出くわすことを

乱入と呼んでいます」



どうもこの世界で、新たな生態系が興っているらしい。


モンスターの近くにはナタ村がある。

…最初以来の登場なので改めて説明するとナタ村とは、

俺達の村の名前だ。


兎に角、そのモンスターがどうであれ、倒す方が良さそうだ。


「先ほど言っていたこと、どうします?」


「あぁ、俺にやらせてほしいってやつか」


それです、それです。とカティが頷く中、


「私はやめておいた方が良いと、思う」


サラが俺の身を案じてくれた。


それは、とてもありがたいことなのだが


「いや、一度立ち向かってみるよ」


「そうですか……」


「もし、俺が助けを求めたらその時は是非、力を貸してくれ」


「わかりました。気を付けてくださいね?」


はい、ちょっとカッコつけました。


格好をつけたからには、もう怖がってなんていられない。


……今度こそ、やってやるぞ!


乱入モンスターは、獣であった。

猪のような、熊のような。

太く丸太のような二本足でドッシリと自立するその姿は

恐怖の対象でしかなく、余った前足には

あたかも人間のように、大きな石斧が握られている。


全身を覆う体毛ごしでも見て取れるほど筋肉は発達し、

2mを優に超える体躯を不安げなく支えている。


分厚い筋肉と体毛は充分に鎧の役割を果たしているのだろう。


怖い。とても怖いのだが、先程のような恐れはない。


それは、既にそのモンスターを見た事があったお陰であって、


「ハイオークですね」


カティはそう告げた。


やはりそうだったか。

ゲームで見ていた頃はこれほどムキムキとは

想像もしなかったが。


「では、勇者さんは私の魔法が完成するまでの時間稼ぎを

お願いします!」


「了解」


「サラは、相手の動きを止める魔法を撃ってください!」


「まかせて」


大体の役割は決まった。あとは行動あるのみだ……!


大丈夫、これはゲームだ。

死んでも、まぁ、生き返れるはず……!!


そう思い込み、息を整える。


敵はもう数十メートルの距離まで接近している。

あの巨体でも、5秒とかかる距離ではない。


じっくりと慎重に様子を伺う。


そして、ついにオークが動き出そうとする時……!


「今です!!」


ポータの氷魔法が相手の足元を地面に引き留める。


足を凍らされたオークはその怪力で振り解こうと試みる。


この隙は、見逃さない。

相手が足元に意識を向けている間に叩く!


剣を構え、腰を落とし身を屈め、

震えた足に鞭を打って、最初の一歩を踏み出した。


グッと足に力を入れる時、太ももの辺りが淡く光る。


そのせいか、妙に踏み込みに力が入る。


それは、自分の想定していたスピードとは、

比べ物にならないほど速くて。

二歩目を踏み出そうとしても身体が追いつかず

体勢が崩れ……。


あろうことか俺は、オークの丁度足元にヘッドスライディングを決めてしまった。


グラウンドでやれば、拍手喝采間違いなしの完璧な滑り込み。

今後永年、末代にまで語り継がれる程の美しい。


しかし、ここはグラウンドではない。

どれだけ綺麗に飛び込んでも、訪れるのは静粛のみ。

残念ながら、末代まで語り継がれるようなことはない。

というか今、末代になりかけている。


……どうしてこうなったのだろうか。

走り始めたばかりの俺に、なにか不思議な力がこもったことは覚えている。


淡い光……妙な加速。

これは色々と調べる必要がありそうだ。


だが、その前に……


どうか、

神の御加護があらんことを


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ