労いが最大の報酬だと思いません?
「キッチリ必要量はありますね!
クエスト達成おめでとうございます!
お疲れ様でした!!」
麻袋に詰まった銅鉱石をギルドに常設されている秤に乗せると
そう告げられた。
「あとサラさんも、クエスト達成です!
報酬はこの場で受け取りますか?それともこちらで
口座の方へ入金しておきましょうか?」
「じゃあ、入金しておいてください」
「はい!承知しました!」
腐っても受付嬢
普段はちゃらんぽらんでもこういった時は真面目である。
サラを「サラさん」と呼ぶのが良い証拠だ。
ところで……
「俺にはなにか報酬はなかったのか?」
「?」
「え、そんな『渡しましたけど?』みたいな顔で
見られても困るんだが」
「渡しましたけど?」
「言われても困るんだが」
「言ったでしょう?『お疲れ様でした!!』って」
「それだけ?」
「労いが最大の報酬だと思いません?」
「その労いを具現化して欲しいな」
「労いが詰まった使い終えたボールペンの芯です。どうぞ」
「なにも詰まってないじゃねえか」
「冗談はさておき」
そう言って、カティは
「こちらが、今回の報酬です」
と、ひと振りの剣を取り出してきた。
見たところ西洋のロングソードに近いだろうか。
手に取りそれっぽく構えてみる。
決して軽いとは言えないが、それでも振り回せないほど
重くはなく、駆け出し冒険者に丁度良いと言えるだろう。
こういったロングソードを振り回せるということは、
クエストを通して少しはレベルアップ出来たのだろうか。
「大変だったんですよ〜元々用意されていたロングソードは
貧弱な勇者様にとっては重すぎてですね、
わざわざ特注で軽くしてもらったんですよ?」
あ、そうですか。
「あとですね、このレアドロップどうします?」
「と言いますと?」
「先日説明した通り、このアイテムは売れば金に
加工すれば最高位の武器に生まれ変わります」
「どっちか選べるのか」
えぇその通りです。と首肯
村を発展させるという面で考えると売る方が良いのだろう
が、俺は勇者。レアな武器は持っておいて損は無い。
というか欲しい。
「武器の生産に回してくれ」
「承知しました!」
「……では、改めて。クエスト達成お疲れ様でした!!」
時間は既に11時を過ぎている。
もうひとクエストする余裕はなさそうだ。
「じゃあ、俺はもう落ちるわ」
「はい!ではまた!!」
「お疲れ様です」
*
架空世界の方が自分は馴染めていると自負している。
学校では一言も喋らずに、家ですら「おはよう」しか
言葉を発さないのだから当然だろう。
架空世界にいる時の自分が本来の自分なのかは
分からないが、現実世界よりも気兼ねがないのは事実だ。
俺は、一人の方が楽だ。と思い込んで出来るだけ人との関わりを持たないように行動してきた。
幸か不幸か自分にはその才能があるらしく
自分が他人を忌み嫌う時はもちろん、人肌が恋しくなった
時でさえ誰一人と関わりを持つような人は現れなかった。
だからこそ、自分は好きなタイミングで
人と交流が出来るゲームにハマったのだと思う。
近年、技術の進歩は目まぐるしく、
ゲームにはAIが搭載され、人ではない人と交流を
持てるようになった。
お陰で自分のコミュニティは今現在ゲームの中に存在し、
最近では自分は元々ゲームの中の住人なのかもしれないと
思ったり思わなかったりする。
そんな馬鹿げたことを考えてしまうほど
自分の生活にゲームが密接に関わっていると言える。
つまり、ゲームはもはや体の一部なのだ。
そして、現代、世界の最新技術の結晶であるゲームを体の一部として所持している俺は、ドラスティックで
ベストプラクティスなナウい存在と言えるだろう。
まぁ、そんな訳で。
お決まりのように学校生活のエピソードなどは微塵もなく、
今日も今日とて始めるとしよう。
「なんでログイン事に村の景色が変わるんだ?」
「さぁ」
煙突から煙が吹き出ている。
まるでドワーフのような職人達が村のあちこちで
見受けられる。
ってかあれ、ドワーフだな。
「勇者の為に武具を作るぞー!って張り切ってると思ったら
こうなってました」
ワタシ、ナニモシリマセン。
「さいですか……」
「おはよう!」
「お、おはよう」
良かった、楽しく話せたようだ。
カティが腕を組みながらニヤニヤしている。
構ってほしのかな?
「なんとですね!この村の発展もあって武器が完成したんですよ!」
「おぉ、結構早いな!」
「レアドロップを使用した武器はギルドに保管してあるので
早速ギルドに向かいましょう!!」
武器が早く見たい。その意思を汲み取ってもらえたので、
急いでギルドへ向かうこととなった。
「ここが、ギルド?」
「そうですよ!!」
石を中心に造られた大きな建物。
…これがあのギルド?
最初に訪れた時のボロっちいギルドとは比べ物にならない程
立派になっている。
これもクエスト達成の影響なのだろうか。
「まぁまぁ!お入りくださいっ!」
背の高い門を抜ければすぐに目に付く。
「あれが、最高位の武器か……!」
テーブルの上に恭しく置かれた一振のショットソード。
なんというべきだろうか、一見は漆黒の1色なのだが
太陽の光の入り具合によって黒の中の様々な色が輝いている。
白、赤、青、緑、黄色、黒全ての色が混ざり合いこの色を
生み出しているのだろうか。
なんとも幻想的で惹き込まれてしまう。
「この剣がこれから俺の相棒か……!」
「それがですね」
「……何か問題があるのか」
「その剣、私もサラも持てないんですよ」
「まさか」
「厳密に言うと、その剣で攻撃を仕掛けようとした途端
弾かれるんですよね」
はいはい、なるほどね。伝説級の武器あるあるですね。
もし、これがSA○ならば、
余裕で剣を扱うことが出来るに違いない。
そんでもって黒の剣士なんて異名でチヤホヤされるに
違いない。
この世界で俺TUEEEEを実現させたいのであれば
この剣を扱わなければ話にならないのだ。
絶対成功させてチヤホヤされるんだ……!
「では、確かめますのでこの打ち込み台を切りつけてみてください!」
「よし」
なれない手つきで剣を構える。
「さぁ!やっちゃって下さい!」
ゆっくりと腕を大きく振りかぶる。
振り下ろす一瞬
その一瞬が今後の活動に大きく影響することになるだろう。
酷く緊張しているのか、微かに腕が震えている。
イメージは、軌道がブレないように
剣を真っ直ぐに下ろす感じで。
しっかりと敵意を持ち
慎重に、落ち着いて。
もう1度イメージを鮮明に持ってから腕に再び力を込める。
「はっ!」
風を切りながら、真っ直ぐに
打ち込み台へと振り下ろそうとし……!
ーーそれはそれはスパっと。
見事、真っ二つに切ってみせた。
「よっしゃぁ!!」
思わず生まれるガッツポーズ。
安心と脱力感に襲われるが、今はそれどころではない。
この剣が、俺のものに。
俺TUEEEEへの1歩を確実に踏み出した……!
安心よりも、脱力感よりも何よりも喜びが強かった。
「おめでとうございます!!」
「おめでとう!」
「やったぜ」
でも、とサラが口を開く。
「どうして何も出なかったんだろうね?」
どういうこと?
「あぁ、タケルは無属性にしか適性がないんですよ。きっと」
え?え?
「あれ、自分の属性知らなかったんですか?」
呼び捨てで良いか?という質問も、
自分の属性についても何も聞かされていない。
……呼び捨ては別にどうでもいいんだけどね?
「属性は大まかに6属性ありましてですね」
とカティが言うと
「炎、水、風、光と闇、あと無属性だね」
とサラの補足が入る。
「まぁ先の5つはいいとして、最後の無属性ですが、
これに関しては結構部類があるんですよ」
治癒でしょ?強化でしょ?爆破なんてのもありますね。
あー毒なんてのもありましたかね?
まだまだ大量にあるんですよね。あれにこれに……
と呪文のように次々と無属性の種類を挙げていく。
「そしてですね、プレイヤーは1~3種類の属性を持って
います。とは言っても3属性持ちなんてごく稀ですけどね!」
「で、俺は……」
恐る恐る聞いてみると
「1属性ですね」
何の戸惑いもなく、あっさりと。
「しかも、あの剣を降って何も反応がなかったということは
恐らく無属性の強化でしょうね」
「それって、強い?」
「怪力になれます」
oh……
「あの剣は、1~2属性しか適応していない普通の剣とは
違って全ての属性に適応しているんですよ。
ですので、何かしらの属性を持っているなら、
それに合った何かが起きるはずなんですよね。
まぁ、なかなか無属性の強化に適応した武器なんて
ありませんし丁度いいんじゃないですか?」
「一応聞いておくが、無属性強化に適応した武器はどのような特殊効果があるんだ?」
「めっちゃ良く切れます」
oh……
つまり、俺はめっちゃ切れる剣を手に入れたわけだ。
…うん。充分に強いじゃないか。
名刀ではないか。
ケン、ツヨイ。オレ、ウレシイ。
「私は、炎、水、そして無属性の爆破、の3属性持ってるよ」
突然、サラの追い討ち
「私は全属性持っていますよ!」
カティの追撃
……待て、お前強過ぎない?
「ドヤァ!」
うぜぇ
最高位の伝説級の武器に選ばれた。
これはとても名誉あることだ。
普通ではない。超凄い。
はずなのだが……
「なぁ、サラ」
「はい?」
「俺の属性はハズレなのか?」
「い、いやー私には分からないなぁ……」
やめて、目を逸らさないで。
「そんな心配しなくても、ハズレですよっ!」
ですよねー
なぁに、まだ冒険は始まったばかりじゃないか。
焦る必要は無い。これからじっくり成長する。はずだ。
大器晩成、万歳!




