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掘って掘って掘り尽くしましょう!



採掘場は、この村を出て西に進んだところにそびえ立つ

山の山腹にあるらしい。


馬車に乗って早30分、そろそろ山が見えて来る頃だろうか。



「このクエストも5時間以内に終わらせないといけないんだろ?」


「えぇ、そうですよ」


「この移動時間も含まれているのか?往復で1時間程度取られるんだが」


「もちろん、含まれていますよ!」


「長くないか?」


「いえいえ、ほかの村の方から比べれば全然近いですよ?


そもそもですね、この世界は大きな円形をしてーーー」



カティが話し始めたのはこの世界の地理についてだった。


この世界は海に浮かぶひとつの大きな島らしい。

そして円の中心部分にはくり抜いたような形で

大きな湖がある。


俺の村は土地の中央、どちらかといえば海に近い位置にある。

しかし、湖までの距離もそう遠くはないらしいので、

湖の資源は取れないのか?

と尋ねてみたが、話を聞く限りどうも厳しいらしい。

なんでも、海側の土地と湖側の土地を分けるように山脈が

ぐるりと一周通っており、行くには山をいくつか超えなければ

ならないとのことだ。


ちなみに今向かっている山はその山脈の一部に属している。


「それでですね、この村は東地方に属していて、

東部の山と言えば標高が高くて…おや、そろそろ到着ですね」


話に夢中で気が付かなかった。

目線に釣られて見上げてみれば、雲で頂上が隠れた山が

俺達を見下ろしてるではないか。


「これ登るのか……?」


「楽しみですねっ!!」


「もうやだ……」


若干の馬車酔いを感じつつ、ツルハシと

泣け無しのやる気を持って山を見る。


うーん……これは無理!







「まだ、着かないのか……」


「あと少しですよ!」


「帰りたい」


鉱山を登り始めてかなり経つ。

しかし、思いの外進むことは出来ず、

ことが上手く運ばないことに対する不満と

自分の足が奏でるペキパキという音への恐怖で、

タケルの心はかなり蝕まれていた。


「なぁ、まだ着かないのか?もう結構歩いたろ?」


「何言ってるんです?登り始めて10分も経ってないじゃないですか」


ん?

10分経ってない?


「近くの採掘場まで最低30分は歩かないと」


へ?

30分……?

アニメ1話見れるじゃないか。

秒に直すなら、1900秒。実に長い。


「あ、計算間違ってますよ」


「ん?」


「30分は、1800秒ですよ!」


「あぁ、本当だ。助かった」


…だから、なんで心を読めるんだよ



「それよりも、大丈夫です?そんなにしんどいですか?」


「めちゃめちゃしんどいよ。なんせ、ココ最近全く運動してなかったからな」


「慣れてないとこの山は結構しんどいよね」


「いや、勇者なんで、ある程度現実の身体よりも強化された状態のはずなんですけどね?」


「普通にしんどいですけど?」


なんということか。

これでもパワーアップしてたらしい。


……うん、きっと不具合だ。あとで運営に報告しよう。


「……なるほど、これがこの村の勇者ですか」


ほっとけ



さらに歩く。

険しい斜面を登り、転び、

ゴツゴツした岩で出来た足場の悪い道を進み、転び、

七転八倒の思いで山を登り続けた。



足が棒となり、遂にツルハシとしても使えそうになった頃、


「さぁ!掘って掘って掘り尽くしましょう!」


どうやら、近場の採掘場に着いたらしい。


露天掘りによって階段上に削られた地面がある。

そこにはまるで棚田のように斜面いっぱいに銅鉱石が

生っているではないか。



「ここの全てを掘り尽くしても明日には再生してるので、

どうぞ気にせず、じゃんじゃん掘ってくださいね!」


流石、ゲーム世界。


「あと、稀にレアドロップがありましてですね、

それはとても貴重なので、売れば金に、加工すれば

最高級の武器・防具になるので

それにも目を配りながら作業してくださいね!」


「はーい」


そうは言ってもレアドロップだ。制限時間もあるので、

レアドロップは気にせず一目散に銅鉱石を

集めなければクエストは終わらないだろう。


……さて、頑張らないとな。



「なぁカティ」


「なんでしょう?」


「残り時間もそう多くないだろ?だから、ここは作業を分担し、効率化を図るべきだと思うんだ」


「はぁ」


「そこでだな。山登りでもへっちゃらなお前が掘って、

俺は後ろからどんどん回収していくっていうのはどうだ?」


「働け、クソニート」


「ははははぁ!?二、ニートじゃねーし!!

最近はちゃんと週に3日は学校行ってるし!!」


「そこは毎日行きましょうよ」



さっさと始めろ、と言わんばかりの顔をしたカティが

ツルハシを投げてくる。

しゃーない、やるか。




*




『言うは易く行うは難し』という言葉がある。


掘る。と一言で言ってもそう簡単なものでは無い。

硬い地面に渾身のツルハシが弾かれる。


はるか昔の人々はこれを毎日ひたすらやっていた

かと思うと本当に頭が上がらない。

今まで軽視していたのに、いざやってみれば

数十センチも掘れない自分が恥ずかしくて仕方が無い。

正直、穴があったら入りたい。


なんと、辺り1面穴だらけではないか。

試しに近くの穴に埋まってみる。


ほぅほぅ案外温いんだな。


「はて」


この穴は、なんだろうか。

俺は数十センチも掘れてはいない。

しかし今入っている穴は軽く1メートルは越えている。

自分がほった穴ではないことは明らかだ。


「大丈夫?」


ポツリと後ろから声をかけられる。

カティの声ではないのならきっとサラだろう。


つい先程仲間になったのに声と名前を

しっかり覚えていた自分に感心だ。


「あの、出れます?手、貸しましょうか?」


……はっ!親密度アップイベント発生か!?


「出れません。ありがとうございます」


下から見ると、ただでさえ綺麗な金髪が太陽の光を

浴びてより一段と神々しく見える。


そんな彼女に手を掴まれ、ズボッと勢いよく引き揚げられる。

結構、力強い。


「じゃあ」


「え、あのちょっと……」


つい、慌てて声をかけてしまった。


この後、なんて言葉を続ければいいんだ?


いや、もう賽は投げられたんだ。

このチャンスを活かせるようにとりあえず話を……!


「もうちょっと、お話」


「ごめんなさい、まだ掘ってる途中だったから。

あとでいい?」


「あ、はい。ごめんなさい」


「じゃあ」


終了。


まぁ、こんなもんだよね

などとあっさり思えるはずもなく、哀愁を漂わせながら

離れていく背中を見るほかなかった。


そんな時、目に付いたのは本当に偶然。

掘られた穴の底にある不気味に光る石

そこにスポットライトが当てられているのかと疑うほど

目が離せない。

異様なまでの好奇心に突き動かされた。

手に取ってみれば、拳大の岩が熱を帯びているのが分かる。


「なにサボってるんですか?ぼうっとして」


「……!カティか」


「なんですそれ?……それって!」


「あぁ、そこの穴にあったんだよ。なんか知ってるのか?」


「レアドロップですよっ!!しかも上質!」


なんと、まさか本当にあったとは……


「このサイズにこの質、売ればかなりの金額になりますね!


これさえあれば、欲しかったものなんでも……ぐへへ」


カティが金に目がくらんでいる。


「さぁ!もう帰りましょう!こんな面倒な労働なんて

やめちゃいましょう!」


金は人をおかしくするという。

本で読んだことあったがこういう事だったのか。


カティが壊れた。


「それが、噂のレアドロップ!?」


今までよりも数段声を弾ませて

サラが戻ってきた。


「この大きな穴の中にあったんだ」


「あ、そこ私が掘った穴だ」


「おぉ!お手柄ですよ、サラさん!!」


カティに褒められサラは

嬉しい様な恥ずかしいような顔をしている。

かわいい。


「この調子で、じゃんじゃん稼いでいきましょう!」


レアドロップ効果もあってか

その後の作業も滞りなく、順調に進められた。



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