陰キャは個性ですよ!!
『ナタ村』
それがこの村の名前らしい。
「そして、この村の受付嬢を務めさせていただきます
カティと申します。どうぞよろしくお願い致します」
妙に恭しく、両手を前に組んでお辞儀をした彼女からは、
淑やかな印象を受けざるおえなかった。
数分前の元気で無邪気な姿はまるでどこかへ
消えてしまったようだ。
「……こちらこそ、よろしくお願いします」
「はいっ!よろしくお願いされましたっ!」
あ、戻った。
「いやぁ〜あの口調疲れるんですよぉ制作側も
初っ端の挨拶を、全受付嬢共通の雛形で済ますなっての。
キャラ分けはちゃんとやれよって感じですよねぇ〜」
どうも、キャラ作りが雑な事にご乱心なようだ。
「……あの、キャラ分けってことは、ソフトの個体によって、受付嬢の仕様が異なるってことですか?」
「そうですねぇ……ふむふむ?
『受付嬢は髪型から性格まで多種多様なパターンがあります。その中でソフトダウンロード時にランダムに形成されます。』だそうです。 へぇ」
カティは、頑張って概要説明書を
音読してくれた。
……わざわざカンペ読ませるとは演出凝ってるなぁ。
「あっ!ちなみに決められているのは最初だけで、私達には人工知能が搭載されているので今ここにいるカティは
世界に一つだけのカティですよ!!!
良かったですね!!!!」
恩着せがましいわ
「あと、既に名前を言い合った友なんですから、
敬語なんて辞めてくださいねっ!」
……突然で申し訳ないが、読者のみなさん。
コミュニケーション能力を母胎に置いてきた陰キャが、
人と会話する時に困るシチュエーションは
どれか当ててもらいたい。
1、相手が自分とは真逆で超ハイテンション。
2、「なんでいつも敬語なの?敬語やめて
喋ってよww」って言ってくる。
3、実は気にしている陰キャである事をいじってくる。
さぁ、どれでしょう?
正解はーーーードゥルルルルルゥゥージャンッ!
全部でしたーー!!
はい。そうなんですよ。1は一緒にいるだけで
疲れるし、2、3に関しては割とグサッとくる、
コンプレックスに塩を塗るワードなんですよ。
みなさんも陰キャさんと会話する時はぜひ
気を使ってくださいね。
カティは今、上記の2つを満たしている。
もしコンプリートされたなら、もう自分の
精神力は砕けてしまうだろう。きっともう立ち上がれない。俺の心は儚い硝子のハートなのだ。
硝子のハートって言えば、なんとなく良く聞こえるよね。
「おやおや?反応がありませんねぇ?別に、見た目が陰キャっぽいからって行動まで影薄ーくしなくてもいいんですよ?(笑)」
パリーンッ! 聞こえるはずのない音が、聞こえて欲しくなかった音が、頭の中で駆け巡った。
「……」
「おやぁ〜?まさか、真性の陰キャさんでしたか!いやはや、大変申し訳ございませんっ!
まさか、ホンモノさんだっとは露とも知らず」
この子、まだ俺のメンタル殺しに来てるよ
死体蹴りとは趣味が悪い。
「……もう帰る」
「ああっ!待って待って!!私が悪かったです!遊びすぎました!!ほらっ今からクエスト行きましょう!ね?ね?」
ゲーム内で人工知能少女にからかわれ、
泣く高校生。新たな黒歴史の誕生である。
「さぁ!クエストの説明をしたいと思います!」
「……はい 」
「クエストの内容ですが、基本的に村の活性化に繋がるものとなっています。クエストを終えるごとにこの村は成長し、
いくつかの段階を踏むと、他の村と貿易をすることが
出来るようになります。
当面の目標は『貿易できる村を作る』ですっ!」
「他の村、と言うのは?」
「他のプレイヤーさんの村ですね」
なるほど、貿易をすれば、飛躍的に村は活性化するだろう。
それに、他のプレイヤーに自分の村を自慢する
ことだってできる。
「では早速、、、記念すべき第一回目の
クエストはーーー」
ここは王道に凶悪なモンスターの討伐だろうか。
はたまた、未開拓の土地の調査だろうか。
やはり最初だし、地道な採取系かな?
カティから発されるであろう次の言葉を待つのが
もどかしい。
けれど、このもどかしさは嫌いではないな。




