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19/21

それで、祭りはどうでしたか?


「それで、祭りはどうでしたか?」


「あぁ、それがな……」


着々と村の雰囲気が賑やかに変わり始める中、

俺達3人はギルドの一角の机を囲んでいた。


「大変だったんだよ」


タケルはジュースを一口飲んでから、まるで夢の中の出来事を思い出すように話し始めた。




✳︎




時刻は19時を過ぎた。

つい一時間前はまだ暑かったのに、すっかり

二の腕に触れる風は冷たさを感じるものとなった。


とはいえ、今日は祭りの日。

その程度のことで来客は後を絶たず、

現在進行形で会場に人が集まり続けている。


人が集まれば、明かりが集まる。

屋台は行列を絶やさず、 活気に溢れる。

その活気と明かりに釣られて人が集まる。


こうして、およそ2kmもの会場は、

毎年95万人が訪れる歩行者天国と化していた。


俺の家は幸か不幸か会場近くにあり、

嫌でも祭りの存在を意識せざる得なかった。

意識したから、足を運ぶ。

というのはまた別の話であるので

例年は祭りに行くことなど無かったのだが、

今年はそういうわけにはいかなくなってしまい……


おそらく小学生の頃、親と遊びに

行った時以来だろう。

俺は祭りに村の活性化のため、という事で

祭りへ行くことになった。


ここまでが前回のあらすじだ。

みんな、思い出してくれたかな?


さて、ここからは本題。


そもそも、ここの祭りの特徴は何だろう。


この会場に集まる人々は口を揃えて


「花火」


と答えるに違いない。



およそ2万発にもなる

大きく、美しく咲き乱れる花火が

視界いっぱいに打ち上げられる光景は、


「夜空に華が咲く」


と謳われるのも頷けるほどの絶景。


一年に一夜だけ、

この街は日本一美しいスポットへと

変わり果てるのだ。


そして、この花火は当日にのみ

存在感を放つわけではない。


近年、より良いコンディションで花火を見れるようにと高層マンションが建てられている。


高層マンションは贅沢を求める

富豪たちによって見事完売。

人口増加により、交通機関も見直されるなど

花火を利用した商売によってこの街は

大きな発展を遂げることに成功した。


祭り、いやこの街のシンボルは「花火」で

間違いないだろう。


とは言っても、この街の祭りは花火が全てではない。


花火だけ見て帰るというのは些か勿体ない。


祭りはもっと楽しめるのだ。

ぶっちゃけ、花火開始時刻ぴったりに来て、

ぴったりに帰る人などそうそういないのだから

極一般的な共通認識であることは

間違いないのだけれども……


祭りといえば、屋台であろう。


焼きそば、たこ焼き、かき氷にリンゴ飴……

例を挙げるだけでテンションが上がるのは至極当然。


そんなバラエティーに富んだ屋台の数々が

ひしめき合い、競争し合いながら

並ぶその光景は花火にも勝る華麗さがある。



そんな歩行者天国にいる俺は、

数ある屋台に目を配りつつ

お目当ての屋台を探し始めた。


お目当ての品とは、ずばりリンゴ飴だ。


見た目や食べにくさが原因で

メジャーながらもマイナーな1品だが、

俺は全然嫌いではない。


小さい頃にインパクトに目を引かれ

親に買ってもらった以来、屋台の中で

最も目に付く食べ物はリンゴ飴となった。



一口にリンゴ飴と言っても

作る人が違えばその味も大きく変化してくる。


例えばこれ。

歩き始めてすぐに見つけたリンゴ飴。


このリンゴ飴は目ためこそ綺麗だが、

味はそれほど美味しいものではなかった。

飴は歯にくっつくし、リンゴは酸味が強くて

主張が激しい。



リンゴ飴に重要なのは、大きくわけて3つ。

1つ、見た目が美しい。

2つ、飴の仕上がり。

3つ、飴とりんごの調和。


この3つをクリアして初めて美味しいと

頷くことが出来る。


先程食べたリンゴ飴は

30点満点中、19点といったところだ。


ずんずんと進んでいくと再びリンゴ飴が現れる。


大きさは良いが、飴の塗りに

ムラがありりんごの大きさも不揃いなリンゴ飴。


チャラそうな青年に代金を支払い、

リンゴ飴を受け取る。

正直、見た目はそれほど良いものでは無い。

重要な味は……

あぁ、これダメだわ。ハズレもハズレ。

雑に塗られたムラのある飴の層。

シャキともなければシャリともしない

くたびれたリンゴ。

見た目から味まで全てが

最低レベルなリンゴ飴だった。


うーむ、5点。


しかし、失敗は成功の母。

このリンゴ飴があるからこそ、より良い品が生まれ

良いものがより素晴らしく感じることが出来るのだ。


そう心に聞かせ、ペロリと残りを平らげる。


もう既に2つ3つ食べ終えて感じるが

今年はハズレ年だったのだろうか……

そんな失礼な事も、さっきまでは

重みのあった財布を想うと

否応なく考えてしまう。





長い長い歩行者天国もそろそろ終盤。

あと50mも歩けば自分が見た入口とはまた別の

入口が見えてくるだろう。


リンゴ飴店はそう多くはないので、

この50mで一軒でもあれば良い方だ。


若干の高揚が混ざった焦燥感を感じながら

人混みの中、探していく。


……そして、見つけた。

屋台の看板に大きく書かれた「綿菓子」という

文字の下に、「リンゴ飴」と書いた紙を。


綿菓子のついでに売られているのは明白。

正直、期待するだけ無駄と言われても仕方ない。


しかしもう先には数店しか無いので

これが最後の店舗であるというのも明白だ。


一厘の希望を胸に支払いを済ませ、実物を手に取る。



大きさは、小さくもなく大きくもなく。

形は、綺麗な形とは言い難い。


飴の質感は、まぁ悪くは無いか。

味も……うん、まぁこんなもんかな。


不味くもなければ、特筆するほど美味くもない。

綺麗なレーダーチャートが書けそうな一品。


最後なんだから、もう少し面白みがあった方が

盛り上がったのに……


なんだろう、この釈然としない気分は。

もしかするとまだ見落としていた屋台があるのでは、

と周囲を見渡したい衝動に駆られる。


これで、お終い?

話的にも、気分的にもこれでいいのか?

もう一度戻って探して見るか?


あぁもう、()()()()()()なぁ!!


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