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アナタは何もしなくてもいいですよ!


季節は夏。


夏本番という頃、俺の住む街では

例年通りの賑わいを見せていた。







都心部に位置するこの街。

毎年この時期になると建てられる

おびただしい量のテントの群れ。


その近くには赤い提灯が飾られ、

一気に夏らしい格好へと町全体が変化していく。


一体なにかあるのだろうか。


その答えは1歩外に出てみれば

言わずとも見えてくる。


華々しい浴衣を着た人。

うちわを片手に走り回る子供達。

日が落ちるのにつれて、徐々に大きくなる喧騒。

そして、鍵屋と思わしき人達がせっせと準備を進めている。


そう、花火大会である。


ここの花火大会は全国レベルで有名で

もはや、知らない人は非国民

というのは言い過ぎなのだが、

それでも地方を越えて知られた

日本最大級の花火大会である事には違いないだろう。


そんな祭りに参加すれば、人混みに流されるのは必然。


「人がゴミのようだ!!」


なんて心境に陥るのも頷けるものだ。

今こうしてたちまち右へ左へ流される俺が

言うのだから間違いない。


いま、


「ん?なんでお前みたいな陰キャ不細工ヘタレ童貞が

リア充御用達の花火大会なんて行ってるの?」


と思った貴方。

不細工は個人の見解によりますし、童貞は関係ないので

今すぐ訂正しなさい。


しかし、


「ナタ村の勇者であるタケル様がなぜこのような

俗欲に塗れた場所に足を運んでくださったのですか?」


と疑問に思うのも無理もない。

仕方ない、教えてやるか。







事の始まりは、ナタ村滞在中にまで遡る。


「夏!夏といえば祭りっ!やりましょう!!」


そんな一声で、

現実世界と変わらず夏を迎えたナタ村は

小さな祭りを催すこととなった。


「楽しいことは、楽しいじゃないですかっ!!」


そんなことを口走ったカティに煽られた村長が

勇者の更なる活躍と、この村の発展を願って

開催することにしたのだ。


おかげで、村は一層活気に溢れ

夏の暑ささえ気にならないほどの熱気に包まれている。


なんせこの村初の祭りとあって、村人達は

俺の想像以上に楽しみにしているらしい。


カティが祭りについての知識を与え、

それに沿って大人から子供まで村人全員が一丸となって

祭りをつくりあげているとのことだ。


サラも例外ではなく、運営のお手伝いで

せっせと動き回っている。


「じゃあ、今日は俺も祭りの設営を手伝うことにしようかな」


祭りをより良くさせるのが、今すべきことだろう。

そう考えて腰をあげようとすると、


「あぁ!待ってください!アナタは何もしなくてもいいですよ!」


胸に大きなバツマークをつくったカティが

俺の前に立ちはだかった。


「どうして?」


「村人たちが、勇者の手を借りずに行おうと張り切ってて、

勇者本人が手伝うのはこの祭りの士気が下がりかねないですし……」


一旦言葉を溜めて、


「勇者が実はこんなへっぽこだって知られたら村の皆さんがガッカリするので、駄目ですっ!!」


俺をディスってきた。


「ん?それはまるで俺がへっぽこだ。という風に聞こえるんだが?」


「そういう風に聞こえるように言ってるんだら当然でしょう」


「馬鹿にしているのかな?」


「真実を述べただけですが?」


「傷ついたぞ?」


「本当に……思い当たる節ないと言い切れますか?」


「そりゃ、もちろん……」


いやいや、ないでしょ?

無論、自分を完璧超人だと

言い張るつもりは無いよ?

少しは、ほんの少しは弱さだってある。


適正魔法が『強化』しかなかったり、

モンスターにビビりまくったり、

格好つけた挙句、大事な場面で足を滑らせたり……


そう、ほんの少しだけだが!弱さはある。

しかしながら、この弱さは必要な「弱さ」なのだ。


弱点はしばしば人間性と言い換えられる。

それを個性と言う人もいれば、

コンプレックスと言う人もいる。


その言い換えに共通するもの。

それはどれもが人間性を語る上で必要不可欠な要素である

ということだ。


つまり、弱点は人間性であり

弱さを持つことで人して成り立つと

言うのも過言ではない。


よって、俺のこの弱さは人としての象徴であるので

あって当然、むしろなくてはならないものなんだ。


……よし、これでいこう。


「あのな、カティ?俺の弱さってのは人としてだな……」


「不自然なぐらい黙り込んで、やっと喋りだしたか

と思ったらそんなことですか」


「おい、俺の240字もの弁解をそんなこと

呼ばわりとは何事だ」


「そんなに考えてたんですか……」


「ちょ、更に傷付くからその『うわ……』みたいなのやめろ」


「ほらもうっ!オーバーキルする前に地元の祭りにでも

行ってきてください!」


「でも、サラだって働いてるし」


「サラはちゃんとした冒険者ですよ?

アナタと一緒にしないでくださいっ!」


「ねぇ、酷くない?」


そこまで拒否を貰ってしまっては居続けることは難しい。


「あぁ、もう分かったよ!地元の祭りにでも

行けばいいんだろ!?存分に楽しんできてやるわ!」


口をついた言葉。

俺の地元の祭りは地域最大級どころか、地方最大級。

あんな人地獄に立ち向かう気力などもちろん

持ち合わせていないのだが……


「そうですよっ!!」


何か思いついたようなカティが大声をあげる。


「タケルが行った祭りをここの祭りの参考にしましょう!」


「と、言いますと?」


「タケルはしっかりとその祭りを堪能して、

その祭りの工夫されたポイントなどをしっかり記憶して

私に教えてください」


「それは、祭りに行けということか……?」


「アナタが行くと言ったのでしょう?」


「いや、さっきの言葉はな?言葉の綾というか……」


突然、近くに寄ってきた村人が、


「すみません、カティさん。

会場設営班からいくつか質問が来ているので

少しお時間貰えますか?」


「あぁ、良いですよ!どんどん聞いてくださいね!」


そう言ってカティは横割りしてきた村人と一緒に

ギルドの方へ戻って行った……







かくして、今に至る。


頼られることが極端に少ない俺は

断る術も、自分を貫く度胸もなく、

仕方なくも祭り会場に足を運んでしまったのだ。


いや、頼られるのが少ないのは

俺が頼りないとかではなく、そもそも俺に話しかける友人が

いないだけだからな?勘違いするなよ?


……おい、友達がいないのを憐れむな。

別に、友達は作ろうと思えば作れるから。

作ったら人間強度が下がるから作らないだけだから。


ともあれ、こうして折角祭りへと赴いたのだ。

存分に楽しんでやろうじゃないか。


……1人で。

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