living me
「なんだこいつら!気持ちワリィな!」
「とにかく一度、この車から降りた方がいい!この車に何かあるのかもしれない!」
畑が扉を蹴り、前にいた人間を押しのけて扉は開いた。
その隙間から急いで外に出る。
2人とも後部座席に乗っていたのが幸いで、2人とも車外に出られた。
だが車の扉を大きく歪んでいた。
「テメェら人の車になにしてるんだー⁉︎頭おかしいんじゃあねーか⁉︎」
「…ちょっと冷静になって車の奥を見るんだ。あれはどういうことだ?」
俺が車から見たのは教会の右横にある大きめな墓地の地中から、死人が出てくる様だった。
「オイオイ、まさかこいつら全員ゾンビだって言うのかよ!」
ゾンビというのは驚くことだが、何より数が多すぎる。何百というゾンビが教会周辺を徘徊している。
八代が教会に入ってからの数分でここまで湧いて出たんだ。
車に集っていたゾンビは、俺たちが車外に出ると此方に向かって走り出した。
「もう一度あの爆弾で追い払うしかない。俺たちが噛まれる前にっ!」
「分かってる!歳上だからって命令するんじゃあねぇー!」
今度は3つの爆弾ボールが投げられていた。
爆発したところから煙が上がり、ゾンビの四肢が飛び散る。
「ゾンビだからか、バラバラになってない奴には効いてないし、怯んでもいない!このままじゃあジリ貧だぞ!」
「うるせーな!いちいち言わなくても分かる。こっちに来ないようにすれば問題はないだろ!」
ゾンビは足を止めないうえ、墓からどんどん湧いてくる。
いずれこの辺り一帯がゾンビだらけになってしまう。
奥の手を残している場合じゃあない。
「その爆発を一度だけっ!一度だけなら俺にも起こせるっ!たった一度だ!」
「固有魔法をお前も持っているって言うのか?だけど今は必要ねぇー!俺1人で凌ぎきることはできる」
一体、何度爆発を起こすことができるのだろう。
10発?100発?それでゾンビは殲滅できる?
「違う。俺が断つのは根元だ!これもその固有魔法だというのならば!使用者がいるはずだ!俺たちを殺しに来たなら!俺たちを見ることができる距離に!」
「その肝心の魔術士が見つからねぇーからゾンビを倒しているんだ!」
「教会の裏はどうだ⁉︎そこにいるかもしれない!」
「いや、あり得ねー。裏はさっきここに来るとき時に見たんだ!透明のステンドグラスが付いてたんだよ!教会からの死角がないほどデケーやつが!」
八代という男も固有魔法を持っていて、もし見つけることがあれば既に倒しているというのか。
確証はないが裏に回って確認する術もない。
もうこれ以上は凌ぎきれない。ゾンビが四方八方から迫って来ている。
湧いて来ているのは墓場だけなんだ。
農場エリアであるこの近辺は田畑も多い。
その田畑の下からはゾンビは湧いてはいない。
どこになら誰にもバレずに隠れられるんだ?
教会内でもその裏でもない。遠くにいても田畑の中には障害物がなくて隠れられない。
…いや、1つだけある!仮説ではあるが、誰も手を伸ばすことのできない場所が。
「隠れる場所なんてこんな真っ平らな場所じゃあありやしないだろう。教会に入ったならば、八代だっている。なら、どこにいるのかッ!あるじゃあないか!隠れるに最適な場所がッ!誰かに攻撃される可能性の低い、セーフエリアが!」
俺は炎に包まれた槍を発現し、上に投げる。
太陽に届くように高く、高く。
「これが俺の固有魔法。<殺人蝋燭>と呼んでいる」
初めて能力戦を書いて、いろいろとガバガバなのは許してほしい。倒し方を考えてたら一週間飛ばしてしまった。