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プラトニックラブマスター



この物語は、フィクションであり、実在する人物・団体とは関係ありません。



----- 最終話「プラトニックラブマスター」 -----


-- 司祭の部屋 --

 

「ティアも25歳になった。もうベテランの聖女じゃ、

実力も高く数々の武勲もお主と一緒にたてておる。

そこで心配なんじゃが、ライバル教団から刺客が放たれたとの情報がある。

ティアにも気をつけるよう伝えておいてくれ」


 司祭は、僕を呼び注意をうながした。

 

「わかりました。至急、ティアにも伝えておきます。

では、失礼します」

 

--



-- 聖女の待機部屋 --

 

「ねえ、君、ティアは、どこに行ったのかな?」

 

 聖女は、答えた。

「まだ、買出しから戻ってきてませんよ」

 

「そうか、ありがとう」


 嫌な予感がする。

 早く、見つけないと。

 

--



-- 街外れの街道 --

 

「日が暮れてきたし、急いで帰らないと」

(この場所は、前に強盗に襲われたあたりね)

 

 フッ。

 

「いたっ! これは、吹き矢」

(腕に吹き矢がなぜ? 急に眠く……)


--


 

-- 街外れの小屋 --


「うう、んん?」

(眠ってた? ここはどこ? 腕と足が柱に縛られて動けない)

 

「やっとお目覚めかい、聖女さまはよー、待ちくたびれたぜ。

寝ているやつをどうこうするのは、俺の性分じゃねえからよお」


「貴方は、あの時の強盗!」

 

「おっ、覚えていてくれたのかい。嬉しいねえ、こうして復讐に

きてやったぜえ!」


「改心しなかったのですね、残念です」

 

「改心したさあ、もう聖女にはかかわらねえって。ところがよう

俺を捕まえた聖女を犯して、大金も貰える美味しい依頼がきたんだよお。

おまけにこんな強力な睡眠薬の吹き矢もある。やらないわけないよなあ」


「やめて! やめてください。お願いします」

 

「そう、そうやって反抗してくれないと面白くないよなあ。

少しずつ、ひんむいてやるからな」


「いやっ!!」

(強盗は、ナイフを出し、服の襟から下までナイフを入れ、切る)

 

 パサッ。

 

「ほうほう、なかなか良い体してるじゃねえか、着やせするタイプだな。

次は下着のほうも……っと」

(強盗は、胸の下着にナイフを入れ切る)

 

(胸がさらけ出されるっ、いやっ!)

 

「タイヨウコウッ!」

 

 ピカーーーーー!!!!!

 

「うおっ、まぶしい!! 目が!! 目が!!」

 

「貴方が悪いのです。失明したかもしれませんが、それが報いです」

 

--


 

-- 街外れの小屋付近 --


「ハア、ハア、ハア」

 僕は、息をきらせて走りティアを探していた。


 胸騒ぎがする。

 前にティアがこのあたりで強盗にあったのを思い出して走ってきた。

 

 あたりは、すっかり暗くなっている。

 

「ティアーー!!!」

 

 声を出して探すが、見つからない。

 

 ピカー!

 

 近くの小屋から光がもれている。

 

「もしや、あそこにティアが……」

 

 僕は小屋へと走り出した。

 

--


 

-- 街外れの小屋 --


 戸を開けようとするが、中で棒に押さえられているようで開かない。

 

「ティア、中にいるのか、返事をしてくれ」

 

「アビス! ここよ。繋がれて動けないの。助けて!」

 

「わかった。今、助ける!」

 

 僕は戸に何度も体当たりをして戸を開けた。

 

 ティアは、柱に縛られている。

 

 強盗が目を痛がりながら、ナイフをふりまわしてくる。

 

「目が見えねえ、おらー!」


 僕は、装備していた改造忍者刀を刃を抜かずに攻撃する。

 怒りで殺してしまいそうだ。

 

「おまえが、ティアを!」


 僕は、鞘で殴り、強盗をボコボコに痛めつけた。

 

「ひー、お助け~」


 強盗は、目が見えないにもかかわらず、手探りで小屋から逃げて行った。


 ティアの束縛を解き、僕の上着を着せる。

 

「もう、ティアを危ない目にあわせるのは嫌だ。

ティア、好きだ。結婚しよう」


「はい。……ずっと貴方が好きでした」


 僕達は、目をつむり長いキスをする。

 

 すると、僕の髪が青く光り、ティアの聖女の力が流れ込んでくる。

 

 心の中に声が聞こえた。

 

「我は、純愛神。聖女の代行者の称号をそなたに授けよう。

称号は、その青く光る髪だ。女の力がそなたに移った。

その女以外と純潔を無くす行為をした場合、力はなくなる。

これからも我のため純潔に励むのだ。よいな」

 

「ティアも聞こえた?」

 

「ええ、神様の声が聞こえました。アビスの髪が青く光っています」


--


 

-- 司祭の部屋 --

 

 僕達は、報告のため司祭に会う。

 

「私を襲った理由は依頼されたからと言っていました」


「強盗は、失明したと思われます。痛めつけたのですが、

ティアが気になって逃がしてしまいました」


「ほほう、そうか。これからは、お主が狙われるじゃろう。

ハニートラップが増えるだろうから気をつけてな。ふぉふぉふぉ」


 聖女との結婚は本来破門だが、聖女の代行者の力により、

特例で、聖女育成の教官をまかされる事になった。


--


 

-- 新しく買った小さな家 --


 結婚してから、ティアの肌はつやつやしている。

 

「いってらっしゃい、あなた」

 

 僕は、今日から聖女見習いを教育するため、教官として復帰する。

 

「行ってきます。ティア」

 

 チュッ!

 

 僕は軽くキスをして仕事に出る。

 

--


 

-- 教団の広場 --


 10人の聖女見習いの前で挨拶をする。

 

「今日から君達の教官になります。アビスです。

よろしくお願いします」


 なんだか僕を見る目が、やたらキラキラしているように見える。

 

 ひそひそとおしゃべりが聞こえる。

 

「あの人が、教団の英雄? 髪が青く光っているよ」

 

「あれが聖女の代行者の証よ」

 

「あれが、プラトニックラブマスターね」

 

 なんだか、変なあだ名で呼ばれている……。

 

 そこへ司祭がやってきて説明する。


「ティアにも子供ができるまで聖女見習いの教官をやってもらう事になった」

 

 ティアも教官をやるのか、聞いてないよ……。


 ザワザワ。

 

「ティアって誰?」


「教官と結婚した聖女よ……」


 聖女見習い達は、情報を教えあっている。


 ティアが入ってくる。

 聖女見習い達とティアの目に電撃の火花が飛び交う。


「聖女たるもの純潔を忘れてはなりません。

特に近場の欲望などに惑わされないよう気をつけてください」


 聖女見習いの誰かがぼそっと呟く。

「職場結婚の貴方が言う……」


 ティアが怒ってどなった。

「ちょ、今、言ったのは、誰ですか!

言いたい事があるなら、はっきり出てきていいなさい!」


 誰も何も言わない。


 しばらく、ギスギスした職場になりそうだ……。


「それでは、解散して戦闘訓練の実技に移る。訓練場で行くぞ!」


「「「はーーーい」」」


 聖女見習い達は、返事の後、我先にと僕の腕を取り、訓練場へと引っ張る。


「ちょっと、そこ、アビスから離れなさい!」

 

 僕は、思う。

 常に神に試されているようだ。

 

 やれやれ、この先もこんな生活が続くんだ。

 ……それも悪くないか。

 

 

 完


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