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腕がなくなる危機、後ろから抱擁



この物語は、フィクションであり、実在する人物・団体とは関係ありません。



----- 5話「腕がなくなる危機、後ろから抱擁」 -----


 僕とティアが仕事を始めてから5年が経過していた。

 僕達は、教団では中堅の団員くらいだろうか。


 いつものように武器庫で次の依頼へ行くため装備を整えている。


「今度の依頼は、ゾンビやそこに住む魔物退治だ。ティア」


「簡単そうな仕事ですね」


「んー、どうだろう、報酬の多さと他の魔物の内容が気になる。

そもそも何の建物だったのか、怪しい」


「用心に越した事はなさそうですね」


「ああ、そうだな。気をひきしめて行こう」


--



-- 依頼された場所 --


 建物は、石で組まれた丈夫なもので、窓は破壊されゾンビが多数

徘徊している。


「ゾンビ多いな」


「ですね」


「ティアは、もう武器に魔法を付加しておけ」


「はい、了解です。神よ! 聖なる力を我が武器に与えたまえ!」


「行くぞ、ティア」


「はい」


 僕は、ゾンビを聖なるスピアで次々と刺して浄化していく。

 

 ティアは、魔法が付加された薙刀でゾンビを浄化していった。

 

 15体以上は、倒しただろうか。

 あたりのゾンビは、いなくなった。

 

「ふー、だいぶ片付いたな」

 

「はい、けっこういますね」

 

「まだ、奥にもう一部屋あるよ……」

 

「はい、いったん休みますか?」

 

「そうだなあ、休むか、休憩!」

 

「はい、休みましょう」

 

 いつからか、二人で野外で座る時は、お互いの背中を合わせて

座るようになっていた。

 その方が背もたれできて休まるし、ティアとの仲もだいぶ良くなっている。

 

「アビスさん、お茶も持ってきたんですよ。飲みますか?」

 

「ああ、飲むよ。ありがとう」

 

 ティアは、お茶の水筒から、コポコポとお茶をコップに入れる。

 

「はい、どうぞ」

 

「おお、ありがとう。ごくっごくっ、ぷはー、うまい。

おいしかったよ」


 僕は、コップをティアに返す。

 ティアもコップにお茶を入れ、そのまま飲んだ。

 

「それじゃ、仕事、続けますか」


「はい、はじめましょう」


 ゾンビ達も待っていたかのように隣の部屋から、またゾロゾロと出てきた。


「まだ、こんなにいるのかよう」


「愚痴ってもしかたありません。がんばりましょう」


 僕達は、また戦闘態勢をとる。

 かすかにゾンビとは違う足音がした。

 

「ティア、気をつけろ! ゾンビ以外に何かいる!」


「はい、気をつけます」


 出てきたのは、ゾンビ化した犬だった。2匹いる。

 普通のゾンビよりすばやい。

 

 ゾンビ犬は、なかなか攻撃せず、僕たちのまわりを旋回する。

 

「ティア、背中合わせで迎撃に専念だ!」


「はい、了解です」


 僕達は、また背中合わせになり、ゾンビとゾンビ犬の攻撃をしのぐ。

 

「こうやっていると、最初の頃の狼との戦いを思い出すなあ」


「そうですねっ、えいっ」


 ティアは、答えながらゾンビに攻撃する。

 なんとか、ゾンビとゾンビ犬を全て倒した。

 

「ふー、やったな」


「はい、ゾンビ犬がなぜここに?」


「んー、なんでだろう? とりあえず奥の部屋も探索するか」


「はい、行きましょう」


 僕達は、奥の部屋へと入る。

 もう、ゾンビやゾンビ犬はいないようだ。

 

 地面に人の頭2つ分くらいの穴がある。

 すごい怪しい。

 

「ティアは、そこで戦闘態勢を維持して待機。

僕が穴を調べてみる」


「はい、気をつけてください」


 僕が穴を調べる。

 とりあえず、聖なるスピアをつっこんで見る。

 ザクッ。

 何かに当たった。

 

シャー!


 聖なるスピアを折り、大蛇が飛び出してきた。

 狙いをティアに定めて飛びかかろうとしている。

 

「危ない!」


 僕は、ティアをかばって腕を大蛇に噛まれた。

 大蛇は、僕の腕を噛んだまま穴へと逃げる。

 僕は、穴に引きづりこまれそうになるが、出口でふんばる事ができた。

 

「アビスさん、大丈夫ですかっ?」


「あまり大丈夫じゃない。腕を噛まれていて取れない」


「とりあえず、治癒魔法をかけます!」


「ああ、お願い」


 ティアは、治癒魔法で僕の背中に手をつけて回復する。


 僕は考える。

 なぜ、ここに大蛇がいるのか?

 さっきいたのは、ゾンビ犬。

 もしかしてこいつもゾンビ化した大蛇?


「ティア、頼みがある。こいつゾンビ化した大蛇かもしれない。

だから、浄化の魔法、ターンアンデッドを試してくれ」


 ターンアンデッドの魔法は、できるだけ近く、触れれば最高の

効果でアンデッドを浄化できる。


「はい、わかりました」


 ティアは、僕の背中から抱きつき穴に手をいれ大蛇を触ろうとする。

 僕の背中に強くティアの胸が押し当てられる。


「あっ、触れました。ターンアンデッドを始めます」


「頼む」


「ターンアンデッド! 死霊よ、ここはあなたのいる場所ではない。

いるべき場所へ帰れ!」


「おおっ、効いているぞっ!」


 大蛇がのたうちまわっているのがわかる。


「もう一度、いきます。ターンアンデッド!」


 後ろからティアに抱擁されるのは、嬉しいが、こんなに強く

密着する必要はあるんだろうか? いや、嬉しいけど。


「ターンアンデッド!」


 ティアは、大蛇に触っていない方の腕を僕のお腹にまわし、

これでもかというくらいの力でギュッと抱きしめて胸を押し当ててくる。

 いや、嬉しいんだけどね。


「大蛇がボロボロと崩れていくようだ」


「はい、そのようです」


 ティアは、ほっとして僕から離れた。

 

 僕も穴から腕を出し、腕が存在しているのを確かめる。

 

「腕がちゃんとある。食べられなくて良かったあ」


「はい、治癒魔法をかけますね」


「お願い。あと、やはりゾンビだったから、僕がゾンビ化しないように

解毒魔法もかけてね」


「はい、今、かけます。アビスさんがゾンビ化したら嫌ですからね」


「はあ、嬉しい事言ってくれるねえ」


「はい、解毒も治癒も終わりましたよ」


「ありがとう。しかし、ここは何かの研究所だったんかいな?」


 僕は何気に、ふと口に出した言葉に納得した。


「ああ! そうですね。ゾンビ化の研究所だったのかもしれません」


「しかし、今回の大蛇がゾンビ化してなかったら、僕の腕、

食べられれ無くなってたよね?」


「はい、そうかもしれません」


「ゾンビ化してて助かったー」


「ふふっ、変な話ですね」


「僕たちみたいな対アンデッド特化の者じゃないと

かなりの難易度の依頼だったね。依頼者に文句言っとこ」


「はい、それがいいですねっ」


「帰るか」


「帰りましょう」


 僕達は、仲良く教団へと帰った。


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