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背中合わせで温泉



この物語は、フィクションであり、実在する人物・団体とは関係ありません。



----- 4話「背中合わせで温泉」 -----


 今日の仕事を終えて、ゆったりとお茶を飲んでいると

買出しに出かけていたティアが帰ってきた。


「ただいま戻りました」

 

「お帰りなさい」

 

「聞いてください。アビスさん! 強盗が出たんですよ!」

 

 ティアは、荷物を机に置くと、話しかけてくる。

 

「隣の大きな街まで買出しに行ったんです。

最近、強盗が出て物騒だからと武器も携帯して。

買出しのついでに、自分の手甲も良いのがないか探して

気に入ったものがあったので、買ってそのまま付けて

帰り途中に出たんですよ!」


 興奮しているのか、ティアの口数がいつもより多い。

 

「強盗が出たのか」

 

「はい、出たんです。それも二刀流の小剣使いの男で

腕に自信があるのか、薙刀を持っていた私を脅してきたんです」


「それは、災難だったなー」

 

「はい、昨日までの私なら負けていたかもしれません。

脅しに屈しない私に、攻撃をしかけてきた男を、

最初薙刀で牽制したんですけど、ニヤついて踏み込んできたので

薙刀を小剣で払って攻撃する事を見越して、この買ったばかりの

手甲を付けた拳で、アッパーカットを一撃入れて倒してやりました」


 腕を振り上げる仕草で、嬉しそうに手甲を見せ付ける。

 

「おおっ、良かったなー。その後、強盗はどうした?」

 

「近くに居た衛兵を呼んで捕らえてもらいました」

 

「良かった良かった。その手甲も似合っているぞ!」

 

「はい、ありがとうございます。中指に指輪をはめるように装備して

おしゃれな細工もされていて綺麗なんですよ」


 ティアは、嬉しそうに手甲の細部を見せ説明しようと接近した。

 

「おおっ、そうだな。俺も手甲の装備をすすめた甲斐があった」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 ティアは、手甲の装備をだいぶ気に入ってくれたようだ。

 しかし、訓練で解決法を見つけて良かった。なかったら

どうなっていた事やら。捕まってあんな事やこんな事を……。


「アビスさん?」

 

 考え込んでいる僕にティアが話しかけた。

 

「いや、教えておいて良かったなーと感慨にふけってたんだ」

 

「はい、良かったです。勝てたのもアビスさんのおかげです」

 

「話は変わるが、明日は遠出して一泊するぞー、山小屋で温泉も

あって貸切だ。仕事内容は、増えすぎて手に負えなくなった狼を

5,6匹間引きしてほしいとの依頼だ。明日に備えて休んでおけ」


「はい、了解しました。早めに休みます」

 

「今日の仕事は、これで終わりだ。それじゃおつかれー」

 

「はい、お疲れ様です」

 

--

 

 

-- 次の日 --

 

 いつものように装備を武器庫で整える。

僕の装備は、聖なるスピアと改造忍者刀だ。

聖なるスピアは、山登り用の杖代わりにもなるだろう。


「私も、いつものように薙刀と、新しく買った手甲と

予備武器に聖なるナイフを持っておきます」


 ティアも薙刀と新調した手甲を嬉しそうに装備している。

聖なるナイフも隠し持てるところに装備したようだ。


「そうだな。じゃあ、行くか!」

 

「はい」

 

--

 

 

-- 山の中 --

 

 一度、山小屋まで行って荷物を置き、

目的の狼の群れを探して山の中を歩き回る。

あたりも日が暮れて暗くなってきた。


 獣臭がかすかにした。

あたりに狼の気配を探す。

前後左右、いつのまにか囲まれている。


 木が茂っている森の中だと、どこから攻撃されるかわかりにくい。

 隠れても匂いでこっちの位置もすぐにばれるだろう。


「ティア、囲まれている。開けた所に逃げるぞ!」

 

 僕はティアの手を取って走り出す。

 

「はい!」

 

 なんとか開けた所に移動する事ができたが、

囲まれている状況は変わらない。


「ティア、僕と背中と背中を合わせて離れるな。

数が減るまで迎撃に専念する!」


「はい! 了解しました」

 

 僕とティアは、お互いの背中を合わせ、狼の攻撃に備える。

狼は、距離をとりながら、周りをゆっくり歩いて攻撃の機会を

狙っている。


「アビスさん、狼は、なかなか攻撃してきませんね」

 

 ティアは、沈黙に耐えられなくなったのか声を出す。

背中越しからでも心臓の動悸が激しくなっているのがわかる。


「太陽光の魔法を使って先制攻撃してみるか?」

 

「はい、それはいい考えですね!」

 

「3つ数えて魔法を一緒に出すぞ!

3、2、1、タイヨウコウッ!!!」


 ピカーーーーー!!!!!

キャイン、キャイン!!


 狼達に強い光が投射される。

 

「今だ! 目に付く狼に攻撃をして

10秒後に元の姿勢に戻るぞ!」


「はい! 了解しました」

 

 僕は目に付く狼を忍者刀を抜いて、ザクッザクッ切っていく。

3匹切り殺して1匹に致命傷を与えた。


 ティアも3匹ほど薙刀で切り殺していた。

ティアと僕は、また元の体勢へと戻る。


「やったな!」

「やりましたね!」

 

「ノルマは、達成したし、後は狼たちを追い帰せれば終わりだ」

 

「はい、良い魔法があります。恐怖を倍増させる魔法です」

 

「そうだな、今なら効果的に使えるかもしれない」


「では、使います。『神よ! 恐怖におののく敵に更なる恐怖を!』」

 

「アオオオーーーーン!!」

 僕が致命傷を与えたリーダーらしき狼が吼えると、狼たちは去って行った。

 

 僕たちは、死んだ狼を集め、山小屋近くの指定された場所に死体を置いた。

 

 ゾンビ化しないよう魔法での処置もしておく。

 

「成仏してくれよ」

 

 ティアは魔法での処置をすませ話しかけてくる。

 

「狼も、大変ですね。増えすぎると食料が減り人間を襲うようになって

逆に人間に殺されてしまう」


「人間もわからんよ。増えすぎると人間同士で殺しあう事になるかもな」

 

「そうですね……」

 

「しんみりしちゃったな。温泉に入ろうか。一緒に入る?」

 

「そうですね。いいですけど、一つお願いがあります」

 

「えっ、いいの? 何だろうお願いって」

 

「背中合わせでずっと温泉に入ってください。離れたらこっちを見ていると

判断しますよ」


「そんなんでいいの? 入る。絶対入るから嘘はなしだよ」

 

「はい、そんなに嬉しいですか? さっきも戦闘でずっと同じ状態

だったじゃないですか」


「戦闘と温泉は、違うよ」

 

 銭湯で戦闘というダジャレを思いついたが、言わずに飲み込んだ。

 

--

 

 

-- 温泉 --

 

 僕から先に温泉に入る。

先に温泉のお湯で軽く体を洗い、温泉につかる。


「ふー、極楽、極楽」

 

「おじさん臭いですよ、アビスさん」

 

 ティアがやってきた。

振り向こうとすると止められた。


「アビスさんんは、あっち向いていてください」

 

「わかった……」

 

 ティアの衣を脱ぐ音が聞こえ、体を洗う音がする。

温泉に入って近づいてくるようだ。

ティアの背中が僕の背中に当たる。


「ふう、いい湯ですね」

 

「そうだな」

 

 裸で背中越しに密着している。

今度は僕の方が心臓の動悸が激しくなってティアに聞かれているようだ。


 沈黙が続く。

 

「月が綺麗ですね」

 

「えっどこ?」

 

「私の向いている方角です。少しならこっち向いていいですよ」

 

 お言葉に甘えて、ティアの方を向くが、目の端にある胸のふくらみが

気になりついついそちらを見てしまう。


 ティアは、胸を片手で隠し、もう片方の手で月を指差している。

 

「どこを見ているんですかっ! あっちです。あっち!」

 

「いやー、つい……。本当だ。月が綺麗だね」

 

 月を見るのは満足した僕だが、誘惑にかられないよう、なごりおしいが

元の背中合わせの状態に戻る。


「見ましたね。お詫びに歌でも歌ってください!」

 

「えっ、歌? じゃあ、即興で考えて歌います。

んー? いい湯だなー、いい湯だなー、はい次!」


「私? 今夜も月が綺麗ですねー」


「ははっ、あまりあってないぞー、歌は苦手なのか?」

 

「突然、ふるからです。ぷっ、ははっ」

 

 僕たちは、温泉で楽しいひと時を過ごした。


 山小屋にはベッドが2つ用意されており、なんの問題もなくすごし

下山して教団に帰る事ができた。


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