承諾されたマウントポジション
この物語は、フィクションであり、実在する人物・団体とは関係ありません。
----- 3話「承諾されたマウントポジション」 -----
「スライムに負けるようでは、これからの戦闘が不安です。
鍛えるため実戦訓練を行なう。ティア、いいな?」
「はい、教官。ビシビシと鍛えてくださいっ!」
ノリがいいのか本気なのか、考えながら訓練場へと移動する。
「武器の選択だが、僕は改造忍者刀にするけど、今回は本気出す。
この改造忍者刀は鞘が打撃武器用の棒になって鍔もついている特殊武器だ。
ちなみに紐もついていて振り回して盾の上から打撃攻撃にも使える。
訓練なので刀の方は、訓練用の直刀を使うので安心してくれ」
「その忍者刀は、アビスさんが考案した武器だったりするのでしょうか?」
「よくわかったね。僕以外は、あまり使う人がいないんだよなあ」
「了解しました。私は、訓練用の薙刀でいいんですね?」
「そうだ。弱点を考えて対処したいと思っている。それでは、いくぞ!」
「はい、お願いします」
「はじめ!」
僕は、踏み込んでティアの攻撃を鞘で受け、露出している肩に
直刀を当てる。開始3秒で勝負が決まった。
「思ったより薙刀は二刀流との相性が悪いようだ。次、いくぞ!」
「はい、お願いします!」
「はじめ!」
ティアは、攻撃をまかれないように突き攻撃を繰り出す。
踏み込まれないようにするためズルズルと後ろへ下がり、すぐに
壁を背にして下がれなくなる。
僕は、そこへ迷わず踏み込み、あっさり直刀をティアの首に当てる。
「ダメだな。こりゃ、何か解決方を考えないと……」
「ううっ、そうですね……。アビスさんがこれほど強いとは
思いませんでした」
「いや、ただの相性の問題だよ。そうだなあ、利き腕の右手には手甲を、
近接時に薙刀を捨てて左手には聖なるナイフを使うってのはどうかな」
「はい、それで近接では私が有利になるんですね」
「いや、それで互角かなあ。直刀や鞘は、柄でも殴れるんだよ。
とりあえず、武器戦闘の訓練はここまでにして次は、武器が無い場合の
訓練を行いたいと思うけどいい?」
「はい、教えてください教官!」
またティアは、ノリのいい事をいっている。
「よろしい、教えよう」
僕もつられてノリがよく答えてしまった。
「武器を持ってない時は、相手が男なら性器を蹴るなり膝で蹴るなり、
目潰しや、スネを蹴って逃げるのが良いかもしれない」
「はい、時と場合によるんですね教官!」
「そうだな。後は、相手の指を捕まえて投げるという方法もあるが、
僕は投げられるのは嫌なので、今回は訓練やらない」
「残念……」
「代わりに、マウントポジションという圧倒的な有利な状況の訓練なら
やってもいい。説明すると寝技で、相手が仰向けになっている腹に座り
有利な状況で攻撃する体勢だ」
「はい、興味があります。どのように有利になるのでしょうか?」
「やってみる? ティアが仰向けになって僕が腹に座るんだけど」
「はい、ぜひお願いします!」
まさか、やるとは思わなかった。
「では、そこに横になってくれ」
「はい、教官!」
ティアは、ノリよく答えると、仰向けに横になった。
「えーと、お腹に座るんだけど本当にいいの?」
「はい、教官! ビシビシと鍛えてください」
僕は、悪いなーと思いながら恐る恐るティアの腹に座った。
ぽよよーん。
めちゃくちゃ柔らかい。
鼻の下をのばしてないか、すぐに気をひきしめる。
「よし、この状況から攻撃して脱出してみろ!」
「はい、教官!」
ティアは腰を浮かして脱出しようとするが重さで腰は浮かない。
拳を握って殴ろうと右手を出すが、僕はそれを受け拳の付け根を掴む。
すぐにもう片方の手で殴り返そうとするが、それも僕は簡単に掴んだ。
僕は、ティアの両方の腕を僕の片手で掴んでティアの頭上で押さえこんだ。
「この状態になったら、後はもう相手のやり放題だ。
目潰しや顔を殴ったり、首を絞めたり」
僕は、そう言って、ティアの顔や首を言葉のように軽く触る。
「これで終わりでいいかな?」
「まだです。教官! 腕を離したところからまた挑戦させてください」
ティアは、負けず嫌いなのか。
「いいだろう」
僕は腕を放し、また両手が自由な状態にした。
ティアは、また同じように攻撃してくるが、僕はそれを受けまた同じように
それぞれの手をそれぞれの手で掴んだ。
さっきと違うのは、ティアも両手を近づけようとさせず、僕の片手を自由に
させない。
長い間、同じ状況が続くとよからぬ考えが頭をめぐる。
僕がティアを押し倒して襲っているかのような気持ちになる。
ティアが何かを思いついたのか小さな声で言ってきた。
「顔を近づけてください」
僕は、ティアの次の行動を予想していたが誘いにのって両腕を押し倒し
顔を近づけた。
ティアは、チャンスと目を一瞬見開いたが、それを読んでいた僕は
ティアの額に自分の額も押し当て動けなくした。
「読まれていた?」
ティアは、独り言のように思わず口に出した。
「この状況で抜け出すには、頭突きか唾液での目潰しくらいしかないからね」
僕は、恥ずかしさもあり目をつむりながら答える。
ティアの腕と僕の腕の大部分が密着し、すべすべで気持ちいい。
ティアの息遣いが近く、匂いが理性を蝕む。
熱い吐息が直接、僕の顔に吹きかかる。
僕の理性の限界が近い。このままティアを押し倒し襲ってしまおうか?
⇒襲う
襲わない
「まいりました……」
襲う直前で、ティアは負けの宣言をした。
危なかった。もう襲う選択をしていた。
「ふう、あぶなかった……」
ティアから離れた僕も本心を口にしてしまった。
「何がですか?」
「いや、えーとアレだよ。脱出する方法は他にあったんだよ」
「どんな方法ですか?」
思わずごまかそうとしたが、方法は確かにあった。
「魔法で太陽光っていう光を出す魔法があるんだ。
ちょっとやってみるね。タイヨウコウッ!」
僕が声を出すと一瞬強い光が顔から出た。
ティアはまぶしそうにしている。
「この魔法は、肌の部分から光を出す魔法だ。
魔力を使うから長時間の多用はできないけど」
「ありがとうございます。教官!」
「今日は疲れたね。終わりにしようか」
「はい、ありがとうございました。お疲れ様です」
「はい、おつかれー」
僕は、うまくごまかせたと思いながら訓練場を出た。