スライム戦で服が溶ける
この物語は、フィクションであり、実在する人物・団体とは関係ありません。
----- 2話「スライム戦で服が溶ける」 -----
「ティア、最初の仕事が決まったぞ!」
「どんな仕事でしょうか?」
「排水溝に出るお化け退治だ」
「排水溝ですか……」
「まあ、簡単だけど汚い嫌な仕事は、下っ端や初心者がやるもんだ。
依頼をこなしていけば、汚い所での簡単な仕事はなくなるはず。
頑張っていこう」
「はい、頑張ります」
「まずは、装備を整えよう。教団の武器庫で武器選びだ」
「はい、了解です」
-- 武器庫 --
「ティアの武器は、やはり薙刀か?」
「はい、色々練習したところ、薙刀が一番しっくりきました」
「そうだな。薙刀でいいだろう。魔力のない武器だが、
聖女は、自力でエンチャントの魔法で聖属性を付加できる」
「はい、できます」
「僕はあまり魔法が得意ではないので、魔法の武器を選ぶ。
あった、これこれ。聖なるスピア! 聖なるナイフと
ひのきの棒を合体させた、簡易魔法の武器。考案したのは僕だ!
すごい安価で作れて教団からもほめられてボーナスが出たんだ」
「はい……。すごいんですね」
「あっ、じゃっかん自慢気味でひいちゃったかな。ごめんよ」
「いえ、いいんです。これからも色々教えてください」
「了解、他に予備武器として忍者刀も持っていくかな」
「忍者、好きなんですか?」
「いや、忍者が好きかと言われるとそれほど。
あと、今回は用心のためマントも1つ持っていくか」
「こんな暑い日にマントですか? 私は遠慮しておきます」
「そうか、僕は念のため持っていくよ」
「はい」
「それじゃ、出発だ!」
-- お化けの出る排水溝 --
僕達は、街の下水道に降り、お化けの出る排水溝付近までやってきた。
「やっぱり、排水溝だけあってちょっと臭いな」
「そうですね」
「上にも気をつけて! スライムが出る可能性があるから」
「スライム?」
ティアは上を見上げると、ちょうどスライムが落ちてきた。
「キャアアーーーーー!!」
ティアは驚いて、かがみこんでしまった。
「今、助ける!」
僕は、ティアに取り付いたスライムを引っぺがす。
「こいつめ、こいつめ!」
僕は、忍者刀を抜いてスライムを叩き切った。
「ふー、スライムをやっつけたぞ。ティア」
ふりむくと、ティアの服がスライムの溶解液で溶けて
肌があらわになっていた。
「ありがとうございます。アビスさん」
ティアは、まだ服が溶けている事に気付いていない。
教えるべきか、教えないでもう少し眼福にあずかるか?
⇒ 教える
教えない
僕は、迷ったあげく、教えるを選択した。
「ティアさん、あの……言いにくいんですが服が溶けてます」
「んっ? キャアアアーーー!! みないでください!!」
ティアは、自分の服が溶けているのを確認すると大声でわめいた。
「わかった。わかりましたから。これを着てください」
僕は、用意してきたマントをティアの方を見ないようにして渡した。
「はい、ありがとうございます……。このためにマントを用意して
くれていたんですね。さすがです」
「ああ、用心のためだったんだけど、まさか本当にスライムに
襲われるとは思わなかったよ」
「はい、でも最初からスライムがこんな能力を持っているって
教えてくれても良かったと思いますっ!」
じゃっかん語尾が怒っている口調になっている。
「そうだね。これからは、僕のウンチクを嫌わずに聞く事にしてねっ」
なるべく棘がないよう可愛く言ってみる。多少気持ち悪いか……。
「はい、先人の教えや知識は大切ですね。今回でわかりました」
「では行くか。本命の敵はお化けだからねっ!」
「はい!」
僕達は、お化けを見つけた。
「出たな、本命のお化け! こいつをくらえっ!」
実体を持たないアンデッドには通常の武器は効果がない。
僕は、聖なるスピアで、つんつんとお化けを攻撃する。
手ごたえは、あまりないが、魔法の武器のおかげで多少は反動があり
攻撃が通じている。
「あっさり、やっつけたぞ!」
「神よ! 聖なる力を我が武器に与えたまえ!」
ティアは、用心のため自分の武器にエンチャントの魔法をかけた。
「こっちにも、出ました! えいっ」
ザシュ。
「こちらも、あっさり倒せました」
他にアンデッドの気配はないようだ。
僕は帰る事を提案する。
「良かった良かった、帰るか!」
「はい、帰りましょう」
僕達は、暗くて臭い下水道から早く立ち去りたく口数少なく移動した。
明るいところへ出て一息ついて、ティアの方を見ると
ティアの長い髪がさっきのスライムのせいか溶けて短くなっていた。
「ティア、髪が短くなっている!」
「あっ、本当! さっきのスライムのせい……?」
「多分、そうだろう。あーなんていうか、そのー、ミドルヘアも
似合っているよ。うん」
僕は適当な事を言ってティアが気落ちしないようごまかしてみる。
「それを言うならセミロングヘアですっ。でも、お気遣いありがとう
ございます。ぷっ」
どうやら、ミドルヘアと間違って言ったおかげで和んでくれたようだ。
「それじゃ、帰って教団に報告だ!」
「はいっ、帰りましょう!」