模擬戦後に膝枕
この物語は、フィクションであり、実在する人物・団体とは関係ありません。
----- 1話「模擬戦後に膝枕」 -----
「アビスさん、担当の聖女です」
人事から書類を渡された。
書類には、名前ティアと書かれている。
まあまあ優秀な成績のようだ。
上司候補の一番に僕を選んでくれていて
無事自分が選ばれたようだ。
「失礼します」
16歳くらいの少女が部屋へ入ってきた。
長い黒髪で年齢のわりにスタイルがいい。
鋭い目つきで綺麗な顔をしている。
僕の所属する教団の制服を着ている。
教団の制服は袖がなく横には大きなスリットがあり
聖女が着るには扇情的な気がする。
今日から僕の部下として働く聖女が来る予定だったが、
彼女がそうだろうか。
「今日からお世話になります。聖女のティアと言います。
私の上官となる方はどちらにいらっしゃいますでしょうか?」
「こっちだ」
手を振って合図を送る。
ティアの顔が一瞬、華やいだ気がする。
期待通りの上官で嬉しかったのだろうか。
「僕はアビスと言います。アビスと呼び捨てて
くれてかまいません。よろしく」
「よろしくお願いします。アビスさん」
「どのくらいの能力があるか腕試しだ。
ついてきてくれ」
「はい、アビスさん」
初々しくて可愛いなあ。
僕は、試合をするための訓練場へ場所を移した。
「模擬戦をしようと思う。武器を選んでくれ。
僕は、直刀にしよう」
「私は、薙刀にします」
「いいだろう。腕を見るためだ、武器も
模擬戦用のものだし、本気でかかってきて」
「わかりました。本気で行きます!」
「それでは、はじめ!」
小手調べに飛び込んでつばぜり合いを試みる。
体重差があるにもかかわらず、体勢を崩さずこらえた。
離れ際のこっちの攻撃もいなす。
ティアは、こちらの間合いが届かないところから
足を狙って薙刀を横に払ってきた。
いてっ。
足を上げてギリギリでかわしたはずが小指にかすっていた。
そのまま頭上に振り上げた薙刀が降りてくる。
がこっ。
頭に薙刀の刀の部分があたり、目の前が真っ白になった。
僕は倒れ、気を失い、気付くと横になっていた。
「大丈夫ですか?」
ティアの顔が上にあり、声をかけられて目が覚める。
どうやら膝枕をされいる。
頭に手を当てられ、痛みが消えていく。
ヒーリングの能力を使っているようだ。
「大丈夫だ。ははっ、ティア思ったより強いね。
ヒーリングの能力も問題ない、すぐに痛くなくなったよ」
「いえ、模擬戦なのに止められなくてすみません。
はっ、まさか私の治癒能力を試すためにわざと……。
さすがです」
「いやいや、本当に強かったよ」
「ありがとうございます。もう痛みは治まりましたか?」
「なごりおしいけど、もう大丈夫」
僕は、体を起こし、ティアの手が離れる。
「なごりおしい?」
「いや何でもない。こっちの話。
ティアの強さは十分わかった。頼りにしているぞ」
「はい、頑張ります」