エピローグ
閻魔様に呼び出された俺はよろずやに来ていた。
椿さんとそこそこ真面目に仕事をこなし、これといった失態をした覚えはない。閻魔様は俺に一体何の用だろうか?
「泰惰くん? 何で私がここに呼んだかわかるかね?」
「日ごろの努力に対するご褒美ですか?」
「そう思うかね?」
「そう思いたいです」
はいはいわかってますよ。どうせまた何か面倒事だろ、閻魔様に呼び出されると決まってろくなことがない。
「泰惰くん、君とても面倒なことしてくれたね。おかげで大赤字だよ」
「はあ、まったく身に覚えがないんですけど……」
たまに椿さんが客を怒らせるくらいで大きなミスはしていないはずだ。たぶん……
「あれだよ、ほら君この前の仕事で何でもしますとか言っちゃったそうじゃないか?」
いつのこと? 正直クレーマーが多すぎて何のことかわからない。
「へっ、そんなこと言った覚えないですよ?」
「あれだよ、凛を助けるために雪山で生ごみにお世話なった時のことだよ」
生ごみ=タケル
…………そんなこと言ったけなあ? クソはめられた! 許せねえあの生ごみ野郎……
「……そんなことあったような、なかったような……」
「困るんだよね。君の勝手な判断で無責任な発言をしてもらうと、君が何でもしますと言ったのは事実だし、おまけにあの生ごみに借りを作ったとなるとこっちも相応の対価を支払わざるを得ないのだよ」
「それは困りましたね……」
「泰惰君、失った損失を取り戻す方法が何だかわかるかね?」
「年末ジャンボですか?」
「うん、冗談を言う元気があって何よりだ。そんな元気な君には身を粉にしてもっと私に貢献してもらおうと思ってね。今日から君の仕事量を増やすことにした。さっさくだがこれから凛と一緒に頑張ってくれたまえ」
「俺、今仕事終えたばかりですよ!?」
「心配ない。承知のうえだ」
いや鬼かお前!
「……行ってきます」
「泰惰君、今日はやけに聞き分けが良いじゃないか?」
「だって断ったら地獄に落とそうとするじゃないですか」
「うん、理解が早くて助かるよ。嫌いじゃないよ君のそういうところ」
「はあ、そうですか……」
寮に戻り304号室のインターホンを鳴らすとまるで扉の前でずっと――――以下省略。
「おはようございます、泰惰くん」
「おはようございます、椿さん、相変らず早いですね。扉開けるの」
「そうだ! 泰惰くんにこのお守りあげます。私とお揃いです」
すると椿さんはポケットから小さな鈴のついたピンクのお守りを取り出した。
「ありがとうございます。いいんですか?」
「はい、願い事が叶うお守りです。泰惰くんは願いことは決まっていますか? 私はもう決まってます」
「へー、ちなみに椿さんの願い事は何ですか?」
「秘密です」
そう言って椿さんは悪戯っぽく微笑んだ。
「じゃあ、俺も秘密です」
願うこと何てとっくに決まってる。
――勇者何てみんな死んでしまえ。