第七話
「えっ! 本当ですか椿さんを見たんですか?」
「お前の言っている人かどうかはわからないが、メガネをかけた黒い服を着た女の子なら確かに見たぜ」
「椿さんは無事なんですか!? どこにいるんですか!?」
「慌てるな、その子ならこの近くの小屋で休ませている。体力を使い果たして寝ちまったがな」
鍛冶屋の男は腕を組みながら言った。
「良かった」
椿さんが生きていることを知り、俺は心の底から安心した。
「お前がもしかして泰惰か?」
鍛冶屋の男が俺に訪ねる。
「はい? そうですけど」
俺が不思議そうに思ってるのを察したのか竜騎士の女性が、
「あの子、あんな格好でずっと泰惰くんって心配そうに何度も名前を呼びながら歩き回ってたのよ」
と説明した。
「そうだったんですか……」
すると、タケルが俺の背中をバンッと強く叩いた。
「早く行こうぜ。彼女をあんま心配させるなよ」
「いや、ただの困った上司ですよ」
歩いて10分もしないうちに小屋にたどり着いた。
小屋には暖炉とベッドがあり、ベッドには椿さんが小さな寝息をたて眠っていた。
「本当に良かった」
「感動の再開を邪魔するわけには行かねえしな、俺らはここへんでお邪魔するぜ」
そう言ってタケルは小屋の外に出ようとした。
「タケルさん、本当にありがとうございました」
「よせ、勇者として当然のことをしたまでだ」
「俺タケルさんのことなんか誤解してました」
「それは、お互い様だろ。念のためこの辺の魔物は俺達が一掃しておくが、あまり長いするなよ。じゃあな泰惰」
俺は勇者達の背中に深々と頭を下げ見送った。
タケルを見送って数十分後、小さな寝息をたてていた椿さんがゆっくりと起き上がった。
「泰惰くん?」
椿さんは寝ぼけた顔をしながらゆっくりとこっちに歩み寄ってきた。俺のそばまで近寄ってくると突然力が抜けたように倒れ込んだ。
俺は慌てて椿さん抱きとめた。
「ちょっと大丈夫ですか!? 椿さん!?」
椿さんは弱弱しい華奢な身体で俺を強めに抱きしめた。
「椿さん?」
椿さんがゆっくりと顔をあげた。その顔には涙がこぼれた後が残っていた。
「心配しました、本当にすごく心配しました」
「まったくそれは、こっちのセリフですよ」
「泰惰くんちゃんと生きていますか? 怪我はないですか?」
「大丈夫ですよ。椿さんのほうこそ大丈夫ですか?」
「私は泰惰くんが大丈夫なら大丈夫です」
「なんだそりゃ」
何でもないやりとりに、思わず笑みがこぼれる。それはどうやら椿さんも同じようだ。
「そんなことより、さっさとこんなところ離れましょう」
「そうですね」
椿さんが例の光の扉を出現させる。
「ちょっと待ってください」
俺は先に行こうとした椿さんを呼び止めた。椿さんは「どうしたんですか?」と不思議そうに首をかしげた。
「また、迷子なったら困るんで手をつないでいきませんか?」
「そうですね」
椿さんはうれしそうに微笑むと俺の手を優しく握った。
こうして、俺たちは無事に元の世界に辿りつくことができた。