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第六話 

「山頂にいるんだなその子は?」


「はい、おそらく」


 俺はタケルから借りたマントのようなものを身にまとい山頂を目指していた。このマント生地はすごく薄いのに何故か身に着けているだけで全く寒さを感じない。不思議だ。


「急いだ方がいいな。ここの魔物は凶暴だ。それに噂じゃ……」


「ちょっ! 何ですかあれ!?」


 俺が指さした前方上空には全長10メートルはあろう巨大な飛龍が飛んでいた。飛龍はこちらを睨むと突然飛龍の周囲に魔法陣のような物が出現し巨大な氷塊を飛ばしてきた。


「うそうそうそ! あんなの食らったら死ぬって!」


「慌てるな泰惰、確かに強力な魔物だが俺の敵ではない」


 タケルは背中に担いだ身の丈ほどある巨大な剣を片手で持ち「パーティション」と唱え空を切ると離れた距離にある氷塊がバラバラになった。


「破片! 破片飛んできますよ!」


「慌てるなと言っただろう」


 砕けた複数の氷の弾丸が迫っているというのにタケルは落ち着いた様子だっだ。


「紅蓮の炎よ我が盾となれ。ファイヤーウォール!」


 そう言って剣を地面に突き立てると、俺とタケルの周囲を覆うように炎の壁が出現した。

 炎に飲み込まれた氷の弾丸は一瞬にして霧となった。


「無慈悲な閃光よ、深き絶望を与えろ」


 タケルがそう唱えると剣が突然青く輝きだす。


「食らえ、ブルースクリーン!」


 タケルが勢い良く振った剣から巨大な青い衝撃波が飛んでいく。巨大な衝撃波は飛龍に直撃するとまばゆい光を放ち爆発した。攻撃を受けた飛龍はあとかたもなく消え去ってしまった。


「すごいっすね……」


 この人ただのクレーマーじゃなかったのか……

 客としてはこの上ないくらいうざいけど、味方になるとこうも頼もしいとは。


「まずいな、どうやら今ので奴らを呼び起こしてしまったようだ」


「えっ、何かいます?」


 あたりを見回すが何もいないし、気配も感じない。」


「泰惰、こっちに来い。お前に精霊の加護を授ける」


「ヘッ? あ、はい」


 言われた通りタケルに近づくとタケルが俺の頭に手を当て「ブラインドタッチ」と唱えると一瞬だけ俺の身体が光った気がした。


「これで、お前はしばらくの間魔物から認識されなくなるはずだ。安全な場所で大人しくしていろ。そっちに被害が及ばないよう努力するが、なにかあったら俺を呼べ、いいな?」


 そう言ってタケルが俺のそばを離れた数十秒後、大きな狼の群れが現れた。

 タケルの精霊の加護とやらのおかげで狼の群れは俺に気づいていない様子だ。

 狼の群れがいっせいにタケルに襲い掛かる。タケルは豪快な剣さばきと魔法で次々と現れる魔物を倒していった。


「さすがに、一人であの数を相手にするのは堪えたな。……あいつらがいればどうってことなかったんだがな」


「……すいません」


「いいんだ、過ぎたことを気にしてもしょうがない。それに俺に非があったのも事実だ」


「本当にすいません」


 こいつ、性格はあれだけど根はすごくいい奴なのかもしれない。迷惑をかけてしまった俺達をこんなに体を張ってまで助けてくれるなんて……

 俺はタケルに対して少し認識を改めなければならないと思った。


「いくぞ、山頂まであと少しだ」


「はい、タケルさん!」


 山頂は視界が悪くひどいありさまだった。椿さん大丈夫かな……


「椿さーん! いたら返事してください! 助けにきました!」


 俺は何度もその名前を叫び歩き続けた。


「防具もなしにこの環境に長い事いたとなると、まずいかもしれないな……」


 タケルが重苦しい表情をしながらそう言った。

 俺が名前を叫びながら捜索を続けていると、どこからか大きな機械音と地響きがこちらに近づいてきた。

 音の発信源を辿るとそこには機械仕掛けの巨人がいた。


「あぶない! 泰惰!」


 タケルはそう言って俺を突き飛ばしゴーレムの拳を剣で受け止めた。

 しかし、衝撃に耐えきれなかったタケルは吹き飛ばされ後ろに木に叩きつけられてしまった。


「くそっ、まさか本当に古代兵器がいるなんてな……」


「大丈夫ですか! タケルさん!」


「ああ、大丈夫だ、万全の状態ならともかく今古代兵器の相手するのはさすがにつらいぜ」


 ゴーレムはさらにタケルに追撃を加えようと巨大な拳を振り下ろした。

 タケルはもう一度剣で受け止めるが衝撃に負け吹き飛ばされてしまう。さらに力をなくした右手から剣は離れどこかに飛んでいってしまった。


「ぐあっ!」


「タケルさん! くそっ、離れろ!」


 俺は近くにあった石をゴーレムに当て気をそらそうとしたが、ゴーレムは全く動じず、タケルのほうに向かって掌を向けた。

 ゴーレムの周囲に魔法陣が展開するとともに掌が光り出す。光は徐々に輝きを増していく。その光は離れた位置にいる俺が感じ取れるくらい高熱を帯びていた。

 まずい、このままじゃ……


 そう思った瞬間巨大な隕石がゴーレムを襲い掛かりその巨体を揺らした。


「この魔法はまさか……」


 タケルがそう言って視線を向けた先には見覚えのある三人組みがいた。


 白魔道士、竜騎士、鍛冶屋あの時のタケルの仲間だ!


「ったく、だらしねえぞタケル!」


「ガイ! それにセシルにティアまで。助けに来てくれたのか!?」


「お話してる場合? まずはあいつをさっさと倒しましょう」


 竜騎士の女はそう言うと天高く飛び上がった。


「頼れる仲間を持てて俺は幸せ者だ……」


 タケルが顔に手を当てた。指の隙間からは小さなしずくがこぼれていた。


「いくぞ。オラッ!」


 鍛冶屋がそう叫ぶと突然何もない空間から身の丈の3倍はあろう大きな金槌が出現した。

 鍛冶屋はゴーレムに接近すると金槌でゴーレムの足めがけて殴りつけた。バランスを崩したゴーレムが転倒する。

 さらにそこへ、先ほど高く飛び上がった竜騎士が槍で渾身の一撃をゴーレムの胸に突きたてた。連撃を受けたゴーレムは火花を散らし動きが鈍くなる。


「ティア! 強化頼む!」


 タケルがそう叫ぶと白魔道士は杖をタケルの方に向けて何やら唱え始めた。するとタケルの身体が光り輝いていく。


「待たせたな古代兵器、俺の剣の錆にしてやる」


 タケルが剣を握りしめゴーレムに飛び掛かった。


「対古代兵器用剣技シャットダウン!」


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