プロローグ
閻魔様は呆れた様子で手元の資料に目を通しため息をついた。そして手元の資料をくしゃくしゃに丸めるとゴミ箱に向かって投げ捨てた。
「泰惰君、勇者、冒険者といった類の人種はどいつもこいつも死んだ方が良いゴミクズばかり、そう思わないかね?」
閻魔様が不満げな表情で俺に同意を求めてくる。
「たしかに、地獄に落ちた方がいいようなクズばかりですけど、あれでも一応お客さんなんでしかたないと思いますけど……」
「私はもう限界だよ。これ以上問題が続けば勇者を根絶やしにしてしまいそうだよ」
閻魔様は机をバンと叩き俺の方を睨んだ。
「はあ、そんなこと言われましても……」
「大体勇者はどいつもこいつも転生の注文が細かいんだよ! チート能力を手に入れたあげく好み異性と冒険出来てこれ以上何が不満だと言うんだ! それに転生後のクレームの締める割合の8割が勇者だ! まったく魔王が可愛く見えるよ。特にタケルとか言う常習クレーマー」
「はあ……」
「そこでだ。この由々しき事態を解決するために今回の件は君に任せることにしたよ」
「えー、それってどうせまたタケルとかいう常習クレーマーですよね? 俺絶対いやっすよ。あいつ死ぬほどめんどくさいんですもん」
「泰惰くん、この区域で一番偉いのは誰かね?」
「閻魔様です……」
「偉い人の言うことは?」
「絶対です……」
「その通りだ。なに心配はいらない。君だけだと心細かろうと思ってな。凛も一緒に同行してもらう」
「えー、椿さんと一緒ですか。俺、あの人のせいで前回えらい目にあったんすから」
「君は口を開けば文句しか言わないな。少しは大人になりたまえ。それに凛は優秀な人材だ。きっと君の力になってくれる」
「いやいや、あの人は優秀そうに見えるだけで中身はポンコツなんですよ」
「口答えをするんじゃない。地獄に落とすよ」
圧倒的な権力に屈した俺は仕方なく椿さんと一緒に二度目の勇者様のクレーム処理に行く羽目になった。
「はあ、勇者みんな死なないかな」