ユニークスキル・ラプソディ
最近ユニークスキル物ばかり読んでついカッとなってやった。反省はしていない。
「あんた、いいかげんあきらめなさいよ!」
「お前こそ!これでもくらえ!」
「くっ、この程度でどうにかなると思ってるの!?」
この世界の人間は皆、16歳になるとスキルが発現する。
その者にだけのスキルが、その者にたったひとつだけ。
「なんでお前と同じスキルなんだよ!」
「それはこっちのセリフよ!大人しく放棄しなさい!」
「俺にノースキルになれってのかよ!」
記録に残る人類史において、スキル重複は前代未聞だった。
同じ日に同じ村で生まれた幼馴染同士。
違うのは名前と性別だけ。
「あたしに『ただのメアリ』のまま一生を過ごせっていうの!?」
「それを言うなら俺は『ただのジョン』だぞ!?この世に何人いると思ってるんだ!」
「知らないわよ!」
この世界の場合、スキルの名前で個人を区別する。
とはいえ、16歳までスキルが発現しないのだから、15歳までの名前が必要になる。
その名前は大変少ない。『〜の子のメアリ/ジョン』で済ませるのが通例だからだ。
「『黒竜双剣のメアリ』ってカッコいいじゃない!いいから譲りなさいよ!」
「なら余計に『黒竜双剣のジョン』は渡せない!黒の剣士だぞ!」
黒竜のウロコから作られた2本の剣を自在に操り、魔を滅する。
『黒竜双剣』は、うまく活用すれば勇者や国王にもなれるスキルである。
「この技を見なさい!『黒竜双剣』にふさわしいキレと流れを!」
「なにを!?このパワーと正確無比な剣さばきこそ『黒竜双剣』の名に恥じない!」
とにかく前例がないことだったため、その黒竜の剣で戦うことにした。
ただし、このふたりの動機は主に脳筋&中二病である。この世界に中学校はないが。
「『黒竜双剣の夫』でもいいじゃない!一生楽させてあげるわよ!」
「それなら『黒竜双剣の妻』でもいいだろ!誰にもお前を傷つけさせない!」
そして、ただのバカップルであった。
「おーい、ふたりともー」
「なに!?」「なんだ!?」
ふたりの友人が声をかける。
「詳細な鑑定結果が出たよー。メアリが『黒竜炎熱双剣』、ジョンが『黒竜氷結双剣』だってー」
どうやら、剣と魔法の合わせ技スキルだったらしい。
早速、魔法も併せて発動してみる。いずれも、竜の1匹や2匹を簡単に屠れるほどの威力だった。
「よし!ジョン、結婚するわよ!」
「おう!」
そしてふたりは末永く幸せに暮らしましたとさ。
ちなみに、ふたりの活躍は吟遊詩人たちによって長らく語られた。
『黒竜双剣夫妻』と、まとめて呼ばれて。