2.The moon rode high in twilight
幼い少女に乱暴している不良グループたちを見た越吾の堪忍袋は、儚くも鋭く、朧げな紅色の闇で以って紡がれし血塗られた歴史の下で漠然と虚ろなる世界を彷徨う脊椎類ウシ科最強の黒馬もしくはミジンコ科の仲間だと思われる動物性プランクトンが呆気もなくメダカに食べられてしまった時の視聴者の表情に似ていた気がしなくもない。
かくして、不良グループの内数人の心臓を活動停止させたものの、残りのメンバーは未だに生命活動の存続と少女への乱暴を希望していたため、越吾は最終手段を行使することを決定した。
ちなみにこの文章を書いている筆者は何をしているかというと、某フードコートにてペッパーランチのペッパーライスを食し終え、空の食器をバックにスマートフォンを手にしている状態だ。ああ、今回はスマートフォンからの執筆だ。これまで過去にもスマートフォンを利用して自宅以外の場所でも執筆していた。(かつて富士山8合目地点の山小屋で執筆したこともあった。)今回は実に久しぶりに自宅外での執筆となる。とりあえず、私は空いた食器を店に返却しに行く。
―――食器を返却した後、近くのコンビニで缶ビールを購入。その足で駅に向かい、今は駅の中の待合室で執筆している。勿論、コンビニで買ったビールを飲みながら。ーーーそう、上記までは私はシラフで執筆していた。以降の文は、アルコールを含めた上での執筆となる。しかし、アルコールが入っていようがなかろうが、これより先、読者である皆さんを待ち受けている世界がCrazyでPlasticなSummerTimeShowと化すことに変わりはない。ね、訳分かんないと思いますがね。その辺はね、まぁ生温かい目で見守ってくださればなと。ね、思っております。はい。
さて、気を取直して例の場面に戻らせていただきやす。とりあえずワルイひとたちにキレて越吾が寿司をつくることでもってヤメさせようとした訳ですね。ハイ。ここまでが第1話のおさらいですね。ちなみに寿司をつくることが越吾の”普通とは違う”特技であるってのがドドンと明らかになって第1話が締め括られたっということもね、補足させていただきます。
それで当然、目の前で仲間たちを殴ったり蹴ったりヘッドショットかましたかと思えばいきなり寿司をつくりだそうとする謎の少年に残されたメンバーが本当にびっくりしない訳がなかった。これマジ。
「―――はィィィィィイイイィィイイィ?!?!?!寿司を”つくる”だァァァア?!?!」
「え、ていうかまだ寿司下駄しかないじゃん。ネタとかシャリとかどうすんの。」
だが、彼らがどう喚いたところで、越吾には雞共の鳴き声にしか聞こえ無いのである。
「そうキャンキャン喚かなさンなって。―――すぐに作りやすからねェ。」
すると、越吾は魚を取り出し[どこから?]、靴底から寿司切りを手に取り[どうやって?]、その姿はあまりにも奇妙かつ軽快、ゆめゆめ忘れることのない強烈なstepで以って魚を捌いたのだ[要出典]。
そしてすぐさま寿司桶から酢飯を手にとり、ちょちょいのちょい。捌いた切り身をシャリに乗せ......気がつけば夕暮れ。道端には寿司が三丁。やり遂げた表情を浮かべながら、汗まみれのまま仰向けになっている1人の少年。何が起きたのかを理解できていない男2人と少女が1人。薄汚れた老婆が金をくれと道行く人に乞いている。カラスは俺たちを見下ろし、ガナリ声をたてて嘲笑うんだ。僕は静かに、耳を塞いだ。
――――あ、いま電車に乗ってます。ていうか寿司つくりだした場面あたりから電車乗ってました。なので当分は電車乗りながらの執筆になります。
――――上記のことをアルコールに浸された脳で以って電車で執筆してから早2日。今は朝霧高原の某キャンプ場に居る。何故かキャンプをしているのだ。どういう訳か。ちなみにキャンプ場にはなかなか大きな舞台が建てられていて、日本のミュージシャンとやらDJとやらだけでなく、海外からやって来たミュージシャンたちの演奏が繰り広げられるのである。ちなみに「朝霧JAM」というイベントだ。ググれば一発目にヒットするような野外イベントである。興味のある方は、是非^^
――――という事を記し、早いことに3日が経った。事後報告にはなるが、朝霧JAMはとても楽しかった。天候には恵まれなかったが、あそこには普段生活しちゃ接することのないような人種の輩&阿婆擦れがウヨウヨしている。……不適切な表現をしてしまった。レディース&ジェントルメンだ。そうだ。紳士と淑女がわんさかいた。
まぁ、それもそうだ。だって、あそこの会場、キャンプ場なんだぜ。朝霧ジャムは2日間開催なので、もし連日で参加する場合は現地で泊まることになる。もちろんホテルなんてものはある訳がない。自分でテントを建てて、そこで泊まってどうぞというスタイルだ。当然、テントの貸し借りなんかはやっている訳がなく、基本的にキャンプ・セットは自前で用意しなければならない。無論、会場は夜になれば気温が下がってくるので、山部の急激な気温低下に耐えられる防寒具だって必要になる。その用意も......運が良ければ譲ってくれるナイスな方に巡りあえることも無くは無いだろうが、居なかったとすれば自分で買うことになるだろう。
そうなると、結構えれェ額になる訳だ。キャンプのための道具代だけでも、2ケタを超すのはもう当たり前だと思った方がいい。チケット代も、そこまで安くはない。だとすると、そのようなレジャーを快楽として嗜める層というのは、上記のような出費で以てもダメージが少ない、一定の収入を得ている者くらいだろう。(生活費ヤバイけど必死にバイト&労働をキメて金を貯めている人もいるかもしれないが。)
だとするとだ。――――足場の悪い中、何故か裸足で歩いていたヤングな若者たち、酒の勢いなのかどうかは分からんが取っ組み合いしまくって泥相撲を楽しんでいたあのニーチャンたち、ポケットサイズのボトルウィスキーをらっぱのみしていたネーチャンたち――――彼らもまた、立派な紳士・淑女と言えるのだろう。
と、色々と御託を並べるような物言いで綴ったが、やはりあのイベントは楽しかった。もし興味のある方は、是非。
――――そして朝霧ジャムのくだりが終わった今、ようやく気が向いてきたので、続きを書こうと思う。ていうか、結構な期間が空いたわ。えっとどこからだっけ……。
…………あぁ、越吾が寿司をつくり終えたところで途切れてたのね。はいはい。リョーカイリョーカイ。
「な、なンだよ…………その寿司食べろってのかよ!!!!」
「はて、でなきゃこんなところで寿司はつくらないんですがねェ。」
「でも道端に置かれた食べ物をたべるの抵抗あります。」
「エエやないすか。別に地面に落ちたモンでもねえですし。食えやすよ。ちゃ~ンと。」
越吾は恍けた返答をかましてくる。そしてどうやら、この寿司を食べない限りはずっとこのような反応をし続けるだろう。―――不良の男たちは、彼の体内もしくは頭の中に蠢く文脈を察してしまった。そう、彼らは目の前の寿司を食らうしか、選択肢が無かったのだ。
「…………じゃあ、食べます。…………イマイチちょっとイヤなんだけど。」
男たちはしょぼしょぼとアスファルトの上に居座り、寿司を手にとる。越吾曰く「醤油つけなくてもおいしいですァ」だそうだが、ヤマギシはどうしても醤油につけて食べるのがよかったそうなので、懐から取り出した醤油皿に醤油を少々入れてもらうことに。
そして二人は同時に、お寿司を口の中へイート・イン。
―――初めは期待していなかった。突然突っ掛ってきて、いきなり目の前で寿司を出され、―――むしろ、ましてや挙動も口調もおかしな少年のつくった食べ物に、ロクでもないものが混入されているのではないかと不安で一杯だったのだ。
ところが、である。
「――――この食感。」
「――――この舌触り。」
―――そう、二人は脂ぎった魚の切り身と手握りサイズの酢飯のコンビを口の中で咀嚼した時、決定的な"何か"を確信してしまった。それは本当に、決定的だった。
「――――コイツぁ間違いねェ…………」
「なッ―――なンだこのウマさァァァァァァァあああああああああァーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!! お口の中がッ!!!!お口の中がッ!!!!お口ン中めっちゃトロっトロしってくるョオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!」
「とろける!!!!とろける!!!!とろけるッッッ!!!!!!!!まるでお魚たちが僕たちを食べてくれてありがとうと言わんばかりに蕩けてきやがるッ!!!!!!!!!!!食べて貰えた事による魚たちの歓喜と感謝が舌にヒシヒシ感じてきやはるッ!!!天に昇っちまうYOOOOOOOOOOOOOOOOOY!!!!!!!!!!!!!!!!」
男たちは生きていて味わったことのない蕩けさに全ての理性を失い、そして、狂喜した。もはや、彼らの頭の中で考えていることは、「寿司うまい。」の五文字しか存在しないであろう。
……あ、句読点入れたら六文字か。いや、どうでもいいんだよ今は。
「お……おい!!もう1つ食っていいかッ!?横にあるのをもう1つ口の中で咀嚼してもいいのかッ!?!?」
「そんな回り諄い頼み方せんでどうぞお食べくださェ。」
「えッ。じゃ、じゃあ僕も!!」
二人はもう一貫、お口の中へそっと。
「UMAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「PA-------------------------ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あまりのウマさに、それまで彼らの心の奥底に秘められていた、心からの『叫』が解き放たれてしまった。
こうなってしまっては二貫だけで終わる訳にはいかない。さらにもう一貫。
「WAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ぁ゛あ゛あああああ゛あああああああああああ゛あ゛ああああああぁ゛あッッッッ!!!!!!!!!!!!!」
彼らはついに、巨大な眼光を放った。もはや、寿司の旨さに全ての神経を支配されてしまった彼らは、身体能力以上の異業を成し遂げてしまったのである。
「うッ、うッ………うまいッ……!あまりにもうますぎて、心臓が止まりそうになっちまうぜッ……。なぁそうだろ?……ってアレ?」
ヤマギシは隣に横たわる仲間を見つめる。何度も体をゆすっても、幾度も大きく声をかけても、彼の身体が再び動くことはなかった。―――この世で最大の悦楽的感覚を味わってしまった彼は、「これ以上の喜びを味わえることはもうない」と、生きることを"やめて"しまった。そう、彼は本当に天へ昇ってしまったのである。その表情は、何の苦痛をも思い浮かべておらず、とても安らかなものであった。
「なんてこったァ…………寿司がウマすぎたせいで死にやがったッ!」
ヤマギシは彼を弔い、その場で仰向けになった。
「…………こんな良い思いさせられちゃあ、もう悪さはできねェっすぜ。」
ヤマギシは穏やかに笑った。そして、彼は、認めた。自身の『敗北』を。得体の知れぬ少年の手によってつくられた寿司のその驚異的な旨味でもって、彼の汚れた人生の悉くを、否定されてしまったのである。しかし、すべてを否定された彼は、悲愴に浸ることはなく、永遠の命を手に入れてしまったかのように、心の中は晴れやかになっていた。
「もう、乱暴ごとはやめとけよ。でなきゃもう、おまえの寿司つくらねェからな。」
「―――あぁ。―――もうしねェさ。」
越吾は、彼の心の底からの言葉を受け止め、これ以上手を加えることをやめた。そして今度は乱暴をされた少女へと近寄った。
「おめェ大丈夫か?ケガしてねえか?」
「え。う、うぅん。大丈夫だよ……」
「―――そうか、ならよかった。もう時間も遅ェことだし、そろそろおめェも家に帰るんだな。」
「え、いやあの、ココ本当にわたしのおウチなんだけど……」
「それじゃ、じゃあな。」
立ち去ろうとした越吾だったが、少女はほんの少しだけ彼を引き留めた。
「おにいちゃんは……だれなの?なにものなの?」
「オレか?――――オレはな。」
越吾はバッと少女の方へ振り向く。そして若干のドヤ顔。
「―――オレの名前は木嵜越吾。―――普通の、高校生さ。まぁ鰻屋の倅だけどさ。」
少女のいたって単純な質問に、越吾は明快な解答をしたのだった。
「ウナギ……?おにいちゃん、ウナギやさんのひとなの?」
「あぁ、そうだ…………ってゥワ!?!?そーいやうな重届けるのすっかり忘れてたッ!!!!!!!」
越吾は道の上に放置していた鰻重を急いで手に持った。
「じゃ、じゃあまた今度な!!!! ……ん、今度また会うのか? …………いやもう自問自答してる場合じゃねェ!!!!早くしねェと井下さんトコから怒られちまう!!!!!!」
越吾は鮮やかに、そしてCrazyに走り出した。電柱の側に立つ少女は、じっと彼の背中を見続けていた。
「―――さびしいの、いや。―――ひとり、こわい。」
「―――わたし、おにいちゃんをおウチにする。」
少女は、いつの間にか居なくなっていた。
【To be continued....】
=おまけ=
ヤマギシ の もっと詳しいプロフィール☆
なまえ/ヤマギシ
本名/わっかんねw
身長/わっかんねw
体重/わっかんねw
血液型/A型
誕生日/8月4日
テーマミュージック/Kraftwerk "The Voice of Energy"
好物/ブロッコリー、キャベツ
性格/まじめ