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1. Sushi And Pickled ginger


挿絵(By みてみん)







――黙考県もっこうけん空栗町からくりちょう 午前ごぜん三時五十分 金曜日ごようび――





夜に包まれた街。誰もが静寂の深淵へと潜りこんでいった中、黒い着物の姿で包丁を持った一人の少女は其処に佇んでいた。


そこに、黒い蝶がヒラリと少女に近寄り、やがて少女の手に収まった。






「――――この辺りか。――――近い。」





少女はそのまま、眠る街の方へ姿を消していった―――





















――――と思いきや、走ってすぐ側にある公園の公衆便所へと駆け込んで行った。






「…………ぅう゛ぉぉぉ゛お゛ぁ゛ああ゛ああああ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああああああああ!!!!!!」






突然の咆哮をかました後、しばらくの沈黙が続き―――しばらくすると、トイレの水を流れる音。



扉から出た少女は、どこか安堵を浮かべたような表情をしていた。しかし、さすがに叫び過ぎて咽にダメージが出てしまったのだろうか、少女はゲホゲホと咳込み、咽元を強くたたいた。少女によれば、こうすると咳が治るのらしい。




「……ンもぉぉぉぉォォォォッ!!!!もぅホンッッッットこの辺トイレ無さすぎ!!!!もぅ……お腹ほんとにツライ…………」





そして少女は張り切って……というよりは仕切り直して……まぁ完全に仕切り直せているのかどうかは分からんが、とりま再び闇の方へと消えていくのだった。














――黙考県もっこうけん空栗町からくりちょう 午後ごご五時五十五分 金曜日ごにょうび――








「こらカンタぁッ!はよ井下いのしたさんトコに鰻重届けに行きぃや!」





「うっせェばーか死ね!!!!!!!!!!!!」





俺は用意された二つの鰻重箱を持ち、急いで家を飛び出した。



それにしても、物語の始まりからイキナリ喧嘩のような場面になってしまってたいへん申し訳ない。俺の名前は「木嵜このさき 越吾えちご」。そして先ほど口喧嘩をしてしまった相手は俺の母だ。ちなみに俺はカンタという名前ではない。何故か母は俺が物心ついた時からカンタと呼ぶのだ。長らく疑問に思っていたことではあるが……いや今もまだ疑問ではあるが、この件についてはあまり深く考えないようにしている。


さて、気を取り直して、俺についての詳しいプロフィールをザっと並べるとこんな感じだ。






挿絵(By みてみん)


おなまえ/木嵜越吾このさきえちご


年齢/15歳


髪の色/レインボー


瞳の色/ブラック


職業/高校生 兼 鰻屋の息子






そう、俺は髪の色を除けばごく普通の高校生だ。あと、実家が鰻屋であることも除けば。ちなみに髪は地毛だ。カツラなんかではないし、ましてやヘアカラーだのブリーチだの一度も使ったことはない。





……いや、もう一つあった。ごく普通の高校生にはないであろう、俺の特技。




そんな訳で、井下さんの所へ突っ走っていると、何やら電柱の傍で黒のツインテールかましてるょぅι゛ょが不良グループ五人に絡まれているではないか!このままではあのょぅι゛ょはもっと酷い意地悪をされてしまう!俺はすぐさま助け出すことに決めた。






「ン夕゛ョこのガキンちょォ~???全然言うコト聞力ネェゼ~~~????」




「ぉぃぉぃヲ嬢ちゃんYOOOOOOO!!!!!!ココは俺たちBAD-BOYSバド・ボーイス専用のスケボー場なンだYOOOOOO!!!!スケボーでしょっぴかれたくなきゃ早くドキなァ!」




「やめて!ここはワタシのおウチなの!あっちいって!」




「あのなァ~~~~~あンなお柱はおウチとは言わねェンだヨォッ!!!!!!!!」



「おいヤマギシうるせぇだまれ。」



不良グループの中でも、特に頭と性格と素行の悪い1人が、電柱のそばにあったビンを取り上げた。ビンには、一輪の花が入れられていた。




「やめて!かえしてよ!ワタシのたからものかえしてよー!」



「おいヤマギシそれはやめとけって。」



「ヘーンッ!たかがビンとお花で宝物なんざショボショボし過ぎだZEZEZEZEZEZE!!!!!!」





「おいそこのわけェの!なに子ども相手に乱暴してr(ry」





俺はSTAAAAAAPッ!と大声を上げるかのような面持ちで、男1人の頭めがけてドロップキックをかました。





「うがァッ?!な、なンやコイツァ!!!!」




「お、俺らと関係ねェ奴にいきなり暴力……ひぇえ、怖ぇえ」




「しかもアイツ何も悪いことしてねぇのに……ひでェ。。。。」





俺はヤツらを圧倒させることに成功。視覚的に「なんかわかんないけどコイツやばい。」という情報を刷り入れることが出来た訳だ。次に攻めるのは、聴覚。―――そう、ここから説得が始まる。






「……いやはや、どういう経緯があったのかは分かりませんがね、小さな子ども相手に乱暴働くのはよくありませんなァ。さすがにそれは、止めるべきかと思いますねェ。」




「…………。」




いきなり暴力を働いたかと思えば、この口調。当然、ヤツらは呆然とする。





「…………ほら見ろ。俺たちは"敵"を助けちまったじゃねぇか。」





「…………いや助けてない助けてない。」





ヤマギシの謎の発言にグループは一同揃って彼にツッコミを入れたが、26分後、ヤツらの矛先は俺の方へ向いた。




「それになンだおめェ?!?! いきなり人を殴っといて『乱暴やめろ』だァ?!?!」




「ていうかそのセリフ多分さっきの人が言うつもりだったと思うよォォォ????」




「なのにソイツ殴ってそれって……おめェ何考えてんだ????」




「へんなひとがきた……こわいよぅ……」





ヤツらのこの反応も、俺の中では想定通りだ。むしろ、想定していたのと全く変わらない。それはそれは、まるで学校の試験で問題を見た同時に「これ進●ゼミで解いたヤツだッ!!!!」と叫んでしまい、静寂を保つべき試験の時間を乱したがために席から追い出されお偉いSunさんさんから厳重注意を受けてしまう程の爽快さであった。



だが、ここではまだ終わらない。このくだりはまだプロセスにしか過ぎない。




「いやいや、別に皆さんに危害を加えるつもりではありませんよォ。ただね、女の子相手に乱暴するのはよろしくないのではないかということを……」




「いやッ……だってさっきまでこのガキいなかったのに急にオレたちの前に出てきやがったんだぞ?!そんでいきなり『わたしのおウチのまえであそばないで!』とか理不尽すぎるだろォ?!?!」




「いやいやでも、子どもの我儘にムキになるのはさすがにねェ……」




「わがままじゃないもん!ここはわたしのおウチなの!ほんとうだもん!!…………ウソじゃないもん。」




「おいおい、ワガママ言った次はグズるのかォヲン????ぉヲ泣いチャウ力????ぉおン????ぉおン????」




「……おいヤマギシさすがにもうやm(ry」






俺はDAMNNNNNNンッ!と近隣一帯を凌駕するかのような構えでグループの1人の脳天に踵落としを食らわせた。無論、その男は地に伏した。





「あぁッ!りっつンがやられた!」




「この野郎ー!りっつンはとても良いやつだったんだじょー!!」




また1人、オレのところへ殴りかかろうとしていたが、すぐさまヘッドショットをかました。彼もまた、大地と一体になった。どうやら、そこまでヤツらは従順ではない。だが、これもまた想定内なのだ。




「……どうしても、言うこと聞いてくれまへんか。」




俺はこれまでより少しだけ気迫を強めた。ほんのちょっぴりスパイスを入れるようなものだ。それだけでも、ヤツらの反応は変わってくる。





「どぉーかへンでェーwwwwwwwwどかへンでェーーwwwwwwwwせーーンせィにー言うたァロォーーwwwwwwww」




「……もうヤマギシ止められるヤツいなくなっちまったよ。……もう最悪だよこれ。」




「うぅ……うっ……」




「アーララぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???????やっぱり泣いちゃいマシタかァァァァァァ???????あぁ~~~~~らッ! ゴメンネゴメンネゴメンネゴメンネゴメンネゴメンネゴメンネゴメンネゴメンネゴメンネゴメンネゴメンネゴメンネゴメネゴメンネ」





ヤマギシが道路アスファルトという名の舞台ステージで華麗なる大回転グランフェッテかます。その脇で、ただ頭を抱えることしか術をなくしてしまった青年。泣いている女の子がひとり。帰る家を失くし、ただ世を彷徨う猫。横たわる人。……どうやら、この事態を解決できる鍵を持っているのは、俺だけのようだ。





「ンッシャァァァァァァァァァァァァァァァッッップ!!!!!!!!!!!」




猫が大きな叫び声で柵を降りた後、俺は勢いよく大地を踏み鳴らした。その音は、凄まじく、残酷で、強大な――――とりあえず、なんかこう、ヤバかった。あまりにも大きな音に、ヤマギシは奇行を止め、青年も女の子もこちらの方へ振り向いた。





「……いいでしょう。そちらがその気ならば…………こちらも、相応の手段をとらせていただきますぁ……。」




俺は鰻重箱を足元に置き、拳を握りしめ、ポキっと鳴らした。




「……ヘッ!……ついにおめェ、武力行使ときた力。どんな手を使う気夕゛ァ????」




「…………武力なんて行使する訳ないじゃないか。……俺の使うべき手は、ただ一つッ!」




「え、お前手一つしかないの????」





俺は威圧感をたっぷり込めて、ヤマギシの元へ走る。―――そして、彼から2.35mの地点で俺はその場で座り込み、そっと木の板を置いた。





「な、なンだおめェ、いきなり座って変な板出しやがって…………」





「……!? 違う…………あれはただの木の板じゃない……ッ! あれは……」








「「寿司下駄?!?!」」







―――そう、俺の特技は―――









「いまから、お前さンたちに寿司つくってやるけン。」








―――特技/"寿司を作ること"―――








【To be continued....】




=おまけ=

木嵜越吾 の もっと詳しいプロフィール☆


名前/木嵜越吾

身長/わっかんねw

体重/わっかんねw

血液型/ボンベイ型

誕生日/8月15日

テーマミュージック/The Offspring "All I Want"

好物/辛子明太子入りチョコレート

尊敬する人物/ウイリがアムアム☆SHAKEすピア

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