エピソード10
・2017年1月2日付
誤植修正:多々kれる用に⇒叩かれるように、感じなjかった⇒感じなかった
・2017年2月3日付
加筆調整
5月1日の一件とは別に、様々な勢力が動いていたようだが――その行動がネット上に拡散される事はなかったと言う。
一体、何があったのかは誰にも分からないが、一部マスコミはスクープ用に写真を確保しようと動いていたらしい。
【芸能事務所の圧力でもないのに】
【あの写真が手に入らないとは】
【一体、何がどうなっている?】
実際に写真を入手できたのかは定かではないが――つぶやきサイトでは行動の失敗を示す書き込みが存在している。
これが偽物かどうかは不明だが、写真も添付されているのに加えて――合成や加工が難しい写真を使って実況している人物もいたようだ。
それを踏まえると、情報が単純にガセやまとめサイトの釣りとは考えにくかった。
5月2日、午前8時の報道バラエティーで早速だがスクープが報道される。
そのスクープとは週刊誌サイドを出し抜くような物――と思われていたが、実際には違っていたと言う。
『最初のニュースは、新たなジャンルを開拓するようなニュースです』
男性キャスターの切り出しの後、映像で出てきたのは何とARゲームだった。
ARゲームと言っても様々なジャンルがあるのだが、映像に出てきたのはAR対戦格闘だったのは――見栄え的な問題だろうか?
その他にも様々なジャンルが出てきたが、ARパルクールやリズムゲームは出てこない。
映像の使用許可が出なかっただけという理由ではないと思うが――どんなやりとりがあったのだろうか?
『ARゲームで新たなジャンルを開拓する為に、ARゲームのプレイヤーを芸能人化――』
キャスターが何かを言おうとしていたのだが、その後は言わせないと言わんばかりにチャンネルを切り替えた。
切り替えた先では美肌グッズの宣伝をする通販番組が放送されている。
「まるで、ゲーム実況者や動画投稿者の芸能人化と同じような流れ――それをあの大手芸能事務所がやると言う事は――」
リモコンを片手にテレビのチャンネルを切り替えたのは、少し眠そうな目をしていたビスマルクである。
彼女は自宅で暇そうにテレビを見ていた。その目的は、情報収集がネットに偏っても大変な事になるのでテレビを見ていたとも言えるが。
「ここにきて、ARゲームがテレビで特集される割合が唐突に増えている。一体、何が起きているのか」
コーヒーを飲みつつ、ビスマルクは再びテレビのチャンネルを変更し、株式関係の番組に変えていたのである。
ビスマルクは株を買っている訳ではないのだが、今回のARゲームが唐突に特集される一件は――何かがおかしい。
『VRゲーム、ソーシャルゲームに変わるジャンルとしても注目をされ始めたのが――』
その予想は的中した。午前の市場が始まる前なので、株価は昨日の数値だが、その平均株価は――。
「25000円? ARゲームバブルでは一時期3万円もあったけど――」
バブルの時期には3万円という平均株価で、ある意味でも考えられない額だった。
それが2年前位に下落し、19000円辺りまで落ちる。しばらくして、2万円に回復する時期もあったが――。
午前9時、アンテナショップにも一連のニュースが真実であるのか確かめる為にマスコミが押しかけると言う店舗もあったが、落ち着いている場所が多い。
「開店前だと言うのに――空気を読まない連中だ」
身長163、ぱっつんの黒髪セミショートの女性がマスコミを皮肉っている。
彼女の名は磯風――服装はあきつ丸等が着ていた物と同じガーディアンの提督服だ。
磯風は周囲のマスコミに対し、営業妨害をしているという事で退去命令を出そうとしていたのだが、それを遮るかのように何者かが姿を現す。
「実況者や動画投稿者を芸能人化した事で、BL勢力の拡大を許した芸能事務所を許すな!」
「芸能事務所は賠償金を支払え!」
「あのプロデューサーは吐き気を催す邪悪――芸能界から追放――」
磯風をさえぎるように姿を見せたのは、あからさまにマッチポンプを誘発しようとしている一般人だ。
彼らはアイドル投資家や反超有名アイドル勢力等に迷惑メールとして捨てられるようなメッセージを真に受け、何も知らずにコンテンツを炎上させようと言う気配さえ見せる。
まるで、超有名アイドルの芸能事務所に操られたと言ってもいいようなモブと断言出来るだろう。
しかし、その抗議の声を瞬時にして遮ったのは――予想外とも言える人物だった。
「まさか、コンビニに立ち寄ろうとしたら――こういう場面に遭遇するなんて」
金髪デカリボン、明らかにセーラー服テイストなアーマーを装備した二丁拳銃使い――島風朱音だった。
下の名前が朱音なのは、ある種の偶然だったのだが――それを逆に利用し、今では超有名アイドルハンターと言う異名も持っている。
もちろん、もう一人の朱音は大和朱音の事であるが、これを知ったのはごく最近らしい。
大和と遭遇する事も何度かあっても、彼女が大和に名前を尋ねる事はなかったのである。
「私は――超有名アイドルに対して、改めて宣戦布告するわ!」
彼女の放った二丁拳銃の銃弾が次々とアイドル投資家が雇ったと思われていたモブに命中――。
本来であればARゲームのビームや弾丸などが人間に命中するはずがない。まして、ARアーマーも装着していない生身の人間に。
そこで、やっぱりというか想定外の事が起こった。何と、弾丸が命中した人間は消滅してしまったのだ。
「やはり――あの人間はARアバター技術を応用した物か」
磯風の方も目の前の人間が消滅した事に関して、何も違和感を感じなかった。
悲鳴を上げたのは、ARゲームの事情を知らないマスコミやレポーター位である。
その後、ARアバターを操っていた人物を特定しようとガーディアンが出動する事になったが、特定するには至っていない。
これは、ほんの始まりでしか過ぎなかった。一部勢力が、ARゲームの存在そのものを邪魔だと思い始めたのである。
しかも、超有名アイドルが売れなくなったり、マスコミに叩かれるようになったのはARゲームの仕業だと八つ当たり的な事を言い出す事務所まで現れた。
やはり――コンテンツがある限り、炎上マーケティングが繰り返されてしまうのか?
こうしたデモ活動の動画を拡散して、何かに利用しようとしていた勢力もいたのだが――予想外の対策で一網打尽にされた。
「まさか、別勢力が用意したトラップで一網打尽にされるとは――何と足の引っ張り合いをしているのか」
そのやりとりをタイムラインで確認していたのは、大和である。
やりとりを要約すると、デモ活動の映像がテレビ番組の映像を勝手にアップロードしていると通報され、動画を拡散しようとした勢力が著作権法違反で逮捕されるという光景だ。
当然だが、デモ活動はテレビで使われた訳ではない。芸能事務所側がARゲームプレイヤーを陥れる為に用意した罠で間違いない。
しかし、デモ活動の動画を拡散仕様としたのはある男性超有名アイドルファンクラブの会員であり、芸能事務所としてはサクラに利用していた人間を予想外の形で切り捨てた事になる。
「これによって、障害を排除できたのは大きい。向こうのランカー王が開催されるかどうかは、運営次第という事か」
この様子を別のエリアで見ていたのは、飛龍丸だった。
彼女も、大和とほぼ同じ意見である。芸能事務所側を追いつめれば、今回の事件を生み出した人物を発見しやすくなるからである。
この程度で追いつめられると――思っていない人物もいるようだが。