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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード9『交差する日常と非日常』
92/137

エピソード9-6

2017年2月2日付:加筆調整


 午後2時35分、松原団地駅近くのARゲーム専門アンテナショップ――その店内でローマと木曾きそアスナはとんでもない物を目撃する事になった。

「あの時の再現――いや、逆再現だと!?」

 木曾は驚きを隠せない。むしろ、手が震えているのをローマに見られないように隠しているようにも思えた。

「比叡アスカ――お前がARゲームで目撃した物は、何だというのか――」

 ローマは比叡ひえいアスカが何を思って、あのプレイに持ち込んだのか――それが分からない。

「今回のプレイに持ち込む理由が――何だと言うのか?」

 木曾が驚いた理由は、比叡の行おうとしている事にあるのかもしれない。

【どう考えても、比叡が不調に見える】

【違う。向こうは不調でも何でもない。仮に不調だとすれば、ARガジェットの方だ】

【相手が不正ガジェットを使ったとしたら? 反則のアプリを使ったとしたら?】

 2人が目の前で目撃したのは、複数人の相手を比叡が無双するという展開ではなかった。

見た目こそはレースの中盤までで無双していたのは間違いない。

実際、目立ったミスもなかったのは熟練のプレイヤーが見れば一目瞭然である。

しかし、後半は譜面に集中出来ていなかったのように失速し――無名のプレイヤーが1位を取った。

パワードミュージックの場合、レースで1位を取ったとしても勝利にはならない。それはローマと木曾も分かっている。

それに加えて、パワードミュージックをプレイするプレイヤーには知っていて当然という基礎知識でもあった。

実際、その証拠として1位を取ったプレイヤーと2位を取ったプレイヤーはスコアと順位は高い物だが、コンボ数は低い。



 コンボ数を刻んだと言えば3位のプレイヤーもだが、それでも比叡には及ばない。

それほど、彼女の正確な演奏が――他のプレイヤーにとっては脅威だったのである。

ビスマルクやアイオワのプレイスタイルはパワー型であり、コンボ数は後回しにするタイプだ。

リズムゲームではスコア狙いのプレイよりも、フルコンボ等の正確さを求められる事が多い。

プレイスタイルは攻略本と言う物が他のジャンルと違って存在せず、大体が動画サイトのスーパープレイ集やウィキ等で情報を調べるのが――リズムゲームである。

つまり、リズムゲームは攻略本を片手にプレイするようなジャンルではないのだ。

『1位のプレイヤーのプレイに関して、審議を行います』

 他のメンバーもゴールし、フルコンボを決めた比叡も最後にゴールしたのだが――その直後に審議の放送が流れた。

審議内容は1位のプレイヤーに対するプレイである。その内容は審議VTRとしてゲームフィールド内に設置されたモニターにも表示される。

「比叡が1位を狙わなかった理由――そう言う事か」

 フィールドに強制突入し、犯人の確保を考えていたガーディアンのメンバーも、今のタイミングで突入するのはまずいと判断し、突入を見送っていた。

ガーディアンは全員がステルス迷彩をしており、周囲のARバイザーをしたプレイヤーには見えない。

ただし、この様子はARバイザーをしていないプレイヤーからゲーム中のプレイヤーに伝えられる事は分かっていた。

それを踏まえてこその、比叡の行動なのかもしれない。分かっているのは、ガーディアン以外にも木曾やローマも該当するのかもしれない。

意図的に1位を取らせて審議に持ち込み、最終的には――。

『1位のプレイヤーのスコアにツールの使用形跡があり、失格とします――』

 その後には2位のプレイヤーにも審議判定となり、こちらも1位のプレイヤーと同じツールが検出された事で失格となった。

しかし、問題はこの後だった。何と、比叡が別のプレイヤーに狙撃された――。しかも、使用されたのはARガジェットである。

「我々のアイドルグループがARゲーム宣伝用のドキュメントムービーを作ろうとしていたのに――」

 1位を取ったプレイヤーの正体は、何と芸能事務所の所属男性アイドルだった。

何と、このレース自体がアイドルグループの宣伝に利用されていたのである。ある意味でもプロパガンダへの利用に当たるだろう。

この状況に激怒したのは比叡である。しかし、それ以上に怒りを抑えられなかったのはスタンバイ中のガーディアンとも言えるが――。



 午後2時30分、中継されていたフィールドに姿を見せた人物――それは日向ひゅうがイオナだった。

しかも、彼女が装備していたARガジェットはアームユニットとブースターユニットと言うガジェットである。

「ARゲームは芸能事務所が勝手に好き放題してもいいコンテンツではない――」

 日向の目は――その他のプレイヤー、比叡の怒りを代弁しているかのような目をしていた。

次の瞬間には、ブースターユニットとアームユニットが変形し、日向のARアーマーとして装着される。

その姿は全身装甲と言える物だった。ある意味でも日向の本気とも言えるだろうか。

「お望みとあれば、ARゲームで徹底的に潰してあげるよ!」

 その後、アイドルメンバーは日向が強制的に起動したARゲームシステムに強制参加となり――最終的には敗北する。

このシステムは本来であればチートプレイヤーの制裁プログラムと言う位置づけになっているのだが、何故に日向が存在を知っていたのかは分からない。

制裁システムの存在は、ガーディアンに所属しているメンバーでも一握りしか分からない物であり、禁則事項とも言われていた。

そのシステムを、何故に日向が知っていたのか。偶発的な発動にしては、システムの動作方法も知っていたのが気になる。

このシステムに関して言えば、アイオワの使用するアガートラームとは根本的に異なるのだが――。

「これで一勢力は消えた。残るは3つか、4つか――」

 日向は比叡の方角を少し見るのだが、次の瞬間には比叡の姿はない。

別のゲームフィールドへ移動した訳でもないようだが――。

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