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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード9『交差する日常と非日常』
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エピソード9-4

2017年2月1日付:加筆調整

 午後1時15分、足立区と草加市の間にあるアンテナショップ――そこは定休日と言う訳ではない。

人の姿もある程度は確認出来るだろう。しかし、それらの人物がある人物の行動にはスルーをしているようにも――感じられた。

あるいはARバイザーを装着していない人物には何も見えないという事なのか?

「まさか、あの人物は――!?」

 遠目からでも、その目を見たアイオワは彼女の正体に驚くしかなかったのである。

その人物とは比叡ひえいアスカだった。何故、彼女がウォースパイトにそっくりなARアーマーを使用していたのか?

しかし、彼女はARアーマーを装着したような形跡はない。これは何を意味しているのか?

「テスト段階としては――まずまずと言うべきなのか。あるいは、アンテナショップが放置していたのか」

 比叡はアカシックレコード経由で手に入れたシステムをARガジェットにインストールし、そこからウォースパイトを操っていた。

イメージとしてはリモコン操作で動くロボットと同じような原理だが、こちらはARゲームの技術を使用したアバターの様な物であり、ARアーマーとは違って実体はないと言ってもいい。

厳密に言えば、実体はあって触る事も出来るが――試作段階と言う事もあり、不完全な部分が多いと言うべきか。

AR技術を使ったアバターと言う意味では、二次元アイドル等をそのままARで映像化してライブを行うという展開も行われていた。

それ程の技術なのだが、こうした形でARゲームに転用されるとは予想していなかっただろう。

「まさか、3年前のあの事件が影響して――?」

 比叡はARガジェットのタブレット画面でブラウザを確認する。しかし、その記事を見ようとした矢先――向こうがアイオワの存在に気付いた。

アイオワの距離的には人影に気づいた程度の認識であり、その人物がアイオワだとは分かっていないようにも思える。

その後、比叡はARバイザーで周囲のプレイヤー反応を確認し、何も反応がなかった事を確認し、別の場所へと向かった。

おそらくは方向からして谷塚駅のアンテナショップだろうか?

「とりあえず、向こうは自分だと気づいていないようにも見えたけど――」

 アイオワは呼吸を整え、別のエリアへと向かう準備をする。彼女の追跡を行う事も可能だが――。



 午後1時20分、比叡の目的地と思われるアンテナショップにいたのは、意外な事に天津風あまつかぜいのりである。

何故、彼女がいたのかと言うと――フードコートでお昼を食べる為でもあったのだが。

「新鋭プレイヤーは増えつつあるかもしれないけど――」

 メットを外し、ココアを飲む光景は普通の女の子である。周囲も、あの天津風とは誰とも思わないだろう。

テーブルの上には既にカレーラーメンを食べたと思われるような空のどんぶりが置かれている。

他には餃子と一般的な半チャーハンも――と思ったが、先にラーメンだけを完食したのかもしれない。

「芸能事務所も、あの事件を忘れたかのような」

 芸能事務所の不祥事は多くあれど、莫大な金があっただけに独善的な活動の末に暴走――遂には、テレビ局の買収やイベントにおける出来レースを仕掛ける。

その番組の視聴率は100%――と誰もが思ったのだが、放送10分前のニュースでCD大賞の大賞を金で買ったとするスクープを暴かれ、そこから芸能事務所は文字通り炎上した。

炎上と言ってもネット上における炎上であり、リアルで芸能事務所が火事になった訳ではない。リアルの火事にでもなったら、テロ行為を疑われても不思議ではない。

「繰り返すのか――あの展開を」

 天津風は思う。超有名アイドルを抱える3次元の芸能事務所は――歴史さえも金で買えるような時代を求めていたのかもしれない。

それはWEB小説のフィクションと思われたが、超有名アイドル事変がノンフィクションへと変えてしまったのだ。

「日常と非日常が交差する世界――か」

 改めて天津風はため息を吐く。芸能事務所が一定の利益を得ないと運営できないのは分かっているが、物には限度と言う物がある。

あの芸能事務所が展開しているのは、権利の独占で無限の利益を得ようと言う――暴走とも断言出来る行動だ。

古今東西の放送されているバラエティー番組の権利を特定の芸能事務所が独占する世界――。



 午後2時、松原団地でコースやARゲームのチェックをしていたのはローマだった。

ARゲームフィールド上では飲食物の持ち込みは禁止の為、フィールド外でチョコ焼きというたこ焼きに似たようなスイーツを口にしている。

青のりはチョコチップ、ソースはチョコソース、入っているのはたこではなくて溶けたミニチョコレートだ。

焼きたてがおいしいという事だが、チョコで口の中がやけどするような――そんな熱さなのである。

さすがに、それを出す訳にはいかないのである程度は冷ました状態の物を出している。実際のたこ焼きではあり得ない光景だが。

他にも珍しい食べ物が売られており、お好み焼きに見えるのはパンケーキ、チョコパフェと思ったらメインにちくわがトッピングされていたり――どのようなセンスか疑うラインナップだ。

しかし、客は珍しいスイーツに集まる傾向があるらしく――順番待ちが激しいのである。

「ARゲームは、道路の整備計画や周辺地域の美化計画等にも貢献し――いつしかARゲームは町おこしを超えたとまで言われた時期もあった」

 ローマは周囲のきれいな環境を見て、ARゲームのプレイ料金が思わぬ所で役に立っている事実を知る。

自然災害が起こった際、募金活動よりもARゲームを――と言う様な活動も行われ、その際には1億以上の義援金が集まったと言う。

ゲームをプレイして義援金と言う発想は別のゲームでも行われた実績があり、それを更に分かりやすくしたのがARゲームでの義援金活動だった。

これはすでに過去の話にはなっているが今でも伝説化しており――超有名アイドルが金の力で無双するよりも、よっぽど印象がいいという反応もある。

「周辺環境をきれいに出来るのであれば、ARゲームを薦めれば――と言う訳にはいかないのだろうか」

 ローマの言う事も一理あるが、ARゲームで道路が占拠される事で混雑をしてしまう道路も存在する。

都心でARゲームが展開されているのが歩行者天国や一部エリアに限定されるのも、こうした事情があるからだ。



 一連の義援金活動を思いついたのは、1人のARゲームプレイヤーだったと言う。

木曾きそアスナでもなく、ビスマルクやアイオワでもない。その人物とは、意外な事に長門ながとクリスだったのである。

彼女のARゲームを盛り上げようと言う動き、それはとんでもない爆弾発言とも言われ、ネット上が炎上した事もあった。

しかし、長門は美化活動や道路の整備計画等のARゲームと無関係に見えるような事も提案し、最終的には運営をも動かしたのである。

今でも――この活動に関しては反対していた勢力が存在し、それらが超有名アイドルファンと手を組んでARゲームを炎上させている噂もあると言う。

本当に一連のアイドル投資家は壊滅したのか――疑問が残る中、何かの歯車が動き出す音が聞こえていた。

「いよいよ――あの勢力が来るか」

 ARバイザーでアンノウンと思わしき存在をキャッチしたのは、飛龍丸ひりゅうまるだった。

彼女は何をする為にアンテナショップへ向かっていたのか――?

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