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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード9『交差する日常と非日常』
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エピソード9

2017年1月31日付:加筆調整


 4月29日、ローマの電撃デビューの衝撃はこの日になってようやく認識される事となった。

ネット上ではイースポーツ化に消極的な姿勢を見せていた事もあり、パワードミュージックへの参戦は矛盾しているという意見が多い。

確かにローマはARゲームのイースポーツ化に関しては、あまり良い反応をしていないのは事実だろう。

しかし、それもARゲームを思っての事であり――コンテンツ流通の今後を考えての行動なのである。

長門ながとクリスやビスマルクもARゲームをプレイしているからこそ、ARゲームのイースポーツ化は慎重な意見を持っていた。

その一方で、最初の導入以前からARゲームのイースポーツ化を反対しているような、にわかファンやエアプレイで二次創作BL小説を書くような勢力――。

彼らはネットを炎上させるだけで、ARゲーム勢にとっては邪魔な存在になりつつある。

「これは――?」

 ローマの顔を見て、ふと何かを感じていたのは大和朱音やまと・あかねだった。

見覚えがあると言う訳ではないようだが、何処かの動画で見覚えが――と思ったが、他人の空似と言う可能性もある為に様子見する事にする。

「とにかく、まとめサイトを設立すれば儲けられるという様な一例を完全排除するには――」

 大和は一連の敵に関して改めて考える。

まとめサイトの乱立は需要的な部分ではなく、お金儲けが出来ると言う部分と信者を味方につけてライバルコンテンツを炎上させる事も可能だろう。

つまり、『まとめサイトを設立すれば楽に設けられる』と考えるようなネット住民の意識を変える事、それが一連のネット炎上を止める事にもつながると考えたのだ。

実際に実行しようとすると、一人ではまとめサイトの完全駆逐は難しい。

それに、大和が排除しようと言うのはネット炎上を目的とした絶対悪のサイトであり、普通の大手ニュースサイトの様な所まで潰すと言うのは――。

「いっそのこと、まとめサイト設立禁止を法律化すれば――」

 大和は極論ではあるのだが、法律でまとめサイトの設立禁止とすればネット炎上は起きないと考えた。

しかし、光と闇は表裏一体であり――光だけが存在したとしても、おそらくは地球滅亡のカウントダウンは止められないだろう。

「やはり、アカシックレコードの様な必要悪が――」

 アカシックレコード、それが必要悪なのかは不明だが、書かれている事に関しては一種の警告等に利用されている。

そして、シナリオ通りに進んでいるというのは皮肉かもしれないが、悪しきネット炎上を行う勢力やアイドル投資家等の摘発に貢献した事も事実だ。

大和は本当にまとめサイト勢力を完全駆逐すべきなのか――その判断は迫られている。



 その日のある光景、島風朱音しまかぜ・あかねは谷塚駅近くのコンビニの前を通った。

そこでは、コンビニでは見ないようなARゲーム用の端末が設置される所だったのである。

トラックやフォークリフト等で運び出した訳ではなく、アンテナショップが近かったのでアンテナショップに置かれていた端末の移動かもしれない。

「あれって、ARゲームの――」

 ラフな私服の島風は、見覚えのあるような端末を見て驚いていた。

このような形の端末はチケットの予約等でもコンビニに設置される事はあるのだが、ARゲーム専用のタイプは草加市ならではかもしれない。

設置の方は1時間もたたないうちに終了し、コンビニの方も通常営業に戻っている。

「あちらも気になるけど、今は――」

 島風は端末の方も気になるのだが、向こうは既に数人が行列を作っている。コンビニで行列と言うのも珍しい。

行列と言っても、並んでいるのは店の外である。時期が時期だったら、寒さで他の店舗へ移動するような客もいるかもしれないが、そんな事はないようだ。

行列を作っている客の中には、待ち時間の間にアプリゲームをプレイしたり、つぶやきサイトのまとめを見ていたり――様々である。

 店内に入った島風は、周囲を見回してドリンクコーナーの方へと向かう。買い物かごを片手に――こうして見ると、普通のお客と変わりはない。

ARゲームプレイヤーと言っても人間である。アンドロイドやサイボーグでもなければ、亜人やモンスターと言う訳でもないだろう。

単純にARゲームをプレイしているという理由だけで差別するような時代ではないのだが――さすがにファンタジー世界でもないので、ファンタジー特有のカースト制度もない。

「いらっしゃいませ」

 島風に気付いたバイト店員の男性が声をかけた。特に何か別のオタク等を見るような眼ではないので、さほど珍しいと思われていないようだ。

ARゲームを町おこしに使った草加市としては、ゲーム市場を盛り上げる以外にも風評被害を受けているゲーマー等の信頼回復を狙っているのかもしれない。

島風は特に珍しい商品も見当たらなかったので、スポーツドリンクと春雨サラダを挟んだサンドイッチ、それにレジでノンフライポテトを購入した。

「それと――これも」

 島風が指を差したのはドーナツが置かれた棚にあるチョコレートのかかっているオールドスタイル――。

その後、島風はARガジェットに記録されている電子マネーで支払いを行い、そのまま店を後にする。

端末に並んでいた行列は相変わらず途切れる事はなく、それも数十人規模に増えていた。

端末ではARゲームのエントリーを行っているようだが、それ以外にもガジェットの予約、電子マネーのチャージ等も行っている。

それを踏まえれば――この人数が並ぶのも納得と言えるだろう。実際、島風の方も電子マネーのチャージを別のアンテナショップで完了したばかりだからだ。



 4月30日、様々な強豪プレイヤーがARゲームへ進出している事に対してアーケードゲームの過疎化と煽るネットのまとめサイトがあった。

しかし、こうした記事はアフィリエイト利益目当てや超有名アイドルファンの増加を狙っていた物であり、ランカー勢等からはスルーされる事になった。

そうでなくても一部のクレーマーやマナーを守らないような勢力だけを名指しして、炎上マーケティングを狙ったような方法が時代遅れである――と証明された瞬間でもある。

後に、こうした炎上マーケティング等を狙ったまとめサイト等を禁止する市の条例が作られる流れとなるのだが――それは少し先の話となる。

それでも、炎上マーケティングその物を絶対悪であり、超有名アイドルにとってのチートという表現を使っての言葉狩りまでは発展しなかったのは、色々と謎が多い。

この辺りにツッコミを入れようと思えば――可能なのかもしれないが、それらを扱うネット記事でさえも規制されるのでは、という懸念も存在する。

何が正義で、何が悪なのか――本当に議論する事は戦争と例えられるような悪なのか、それともネット炎上や炎上マーケティングの身を悪とするのか――それらはネットを扱う者たちにとっても課題なのかもしれない。

「ARゲームを別の信者等を悪用して炎上させ、超有名アイドルが都合よく乗っ取れるようにする――それが芸能事務所のやる事なのか」

 今回の件を含め、激怒しているARゲーマーは多い。しかし、下手に挑発行為や煽り発言を行えば、それこそ芸能事務所側の思う壺だ。

まとめサイトやアフィリエイト系炎上サイト、週刊誌の半数は芸能事務所Aがマッチポンプを行う為に掌握していると考えて間違いない。

「無数の悪意が、やがては大規模な破壊行為へとつながる可能性も――考え過ぎだとしても、警戒する必要性があるかもしれない」

 一部プレイヤーの発言を聞き、物理的な炎上行為を起こそうとすれば――それこそ芸能事務所の思う壺だと言う事を、アイオワは感じていた。

芸能事務所側は、もしかするとアガートラーム対策のチートガジェットを流通させてくる可能性もあるだろう。

だからこそ、資金力を賢者の石と例えられる超有名アイドル商法で無限に手に入れる芸能事務所を――ARゲームプレイヤーやランカーは許さなかった。



 5月1日、ARゲーム人気は他のジャンルにとっても痛手となっていると思われたが――固定ファン層の盛り上げによる格ゲーやマージャン、対戦物は根強い人気を誇っている。

しかし、一部のジャンルではファン層の入れ替えが予想外の展開を生み出した物も存在していた。

それは――リズムゲームである。単純にパワードミュージックに代表されるARゲームに人が流れただけでなく、有名プレイヤーもARゲームの方に流れたのが最大の原因だろう。

そして、立てなおそうと言う動きが出てくるのも当然の流れなのだが――間違った方向に立てなおそうと言う勢力が現れる事になった。

それが逮捕されていないアイドル投資家の残党である。やはりというか、予想通りと言うか――歴史は繰り返されてしまうのか?



 午前10時、やはりというかまとめサイトが動き出した。その内容は、超有名アイドルの芸能事務所が大型コラボを展開すると言う物。

しかし、大手ニュースサイトが報道するのであれば信ぴょう性等を含めても大きいのだが、アフィリエイターの運営するまとめサイトという点が事件を思わせる。

「どちらにしても――警戒の必要性はないか」

 この記事を興味半分でチェックしていたのは天津風あまつかぜいのりである。

彼女としてはアイドル投資家の勢力に関して警戒をしていたのだが――その当ては外れたようだ。

ARメットは外した状態でタブレット端末を片手にネットサーフィンをしている。その状況を振り向きざまにチェックしようと言うギャラリーはいなかったという。

天津風のいる場所、それは松原団地の集会場である。ここでは、ARゲームの同人誌等を販売するイベントがあり、天津風もゲストとして呼ばれていたのだ。

ARゲームのプレイヤーは主に18歳以上である為、平日でも同人誌即売会等は行われている。

何故、平日にイベントを開催するのかは――ARゲームが抱える事情もあるのかもしれないが、海外の観光客は日本の祝日などに合わせてくるとは限らない。

そうした観光客等に向けた平日イベントを開催し、リピーターを増やそうと言う趣旨もあるのかもしれないだろう。



 午前10時30分、草加駅近くのコンビニ前、そこにはいかにも――と言う外見の人物がレーザー刃の刀を振り回している。

その人物の外見は明らかな水着姿というか――警察が駆けつけて逮捕されそうな気配もするのだが、そんな様子は一切ない。

彼女は単純に剣舞を披露していた訳ではない。プレイしていたのは、リズムゲームだったのである。

リズムゲームと言っても、パワードミュージックの様に街をフィールドにして走るタイプではなく、こちらはコロシアム形式のクローズフィールドを使用した物だ。

現在ロケテスト中と言う事で、注目度は非常に高かったようだ。しかし、楽曲に関しては特定の5曲しか回されていないように思える。

「ARゲームでも、VR系や過去の筺体タイプに迫るようなリズムゲームが出ている以上――」

 プレイしていたのはARゲーム系に近いタイプだったが、実際は無線形式の刀型コントローラを振り回して演奏するタイプ。

チャンバラアクションとリズムゲームを足したような物である。稼働するかどうかは不明だが、こうしてロケテストを行って情報収集を行う。

「ここまでの技術を筺体型でプレイ出来るとしても、魅力ある楽曲がなければ――」

 本当に水着姿でプレイしていたのは、ローマである。水着と言ってもスクール水着の様なタイプではなく、セパレートの様だ。

何故に水着姿でロケテストに参加していたのかは――罰ゲームと言う訳ではない。

いわゆる、客寄せパンダ的な意味合いがあるのかもしれないだろう。実際、ゲームをするのに水着を切る必要はなく、普通の服装でも問題はないかもしれないが。

余談だが、水着に関してはメーカー指示ではなくローマが独自に行った物である。

水着姿で街を歩く事は草加市内では禁止されていないが――きわどいタイプならば警察に声をかけられる位だ。

「楽曲が超有名アイドルばかりなのは――」

 ロケテストでは30曲ほどがプレイ可能になっていたのだが、そのほとんどが超有名アイドルの楽曲であり――特定グループの宣伝に利用されたような気配さえ感じる。

リズムゲームも、超有名アイドルのタダ乗り宣伝に利用されてしまうのだろうか?

「リズムゲームで一番重要なのは楽曲の質。超有名アイドルの様な稼げればよかろうな楽曲が収録されるのには、違和感を感じる」

 ローマは何としても、芸能事務所の暴走を止めようと考えていた。それこそ、海外からブーイングが来る前に。

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