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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード8『変化していく環境、その行方』
85/137

エピソード8-9

2017年1月30日付:加筆調整


 午前12時40分、比叡ひえいアスカは――思わぬ所でボロを出してしまう事になった。

「この人物に――見覚えはないかしら?」

 比叡の前に現れた女性、アイオワがARガジェットに表示した画像を見せる。

人物の顔はARバイザーを装着している為に素顔は不明、その一方でバイザーのデザインには特徴的な部分があった。

それを見た比叡は――ある人物を思い出し、こう答えた。

「西雲響――まさか?」

 彼女が口にした名前、それは西雲響にしぐも・ひびきである。

しかし、アイオワは何かの核心を持ち、ニヤリと――。実は、人物の名前は西雲ではなかった。

「どうやら、クロだと言うのが――証明できたみたいね。彼女の名前は――ヴェールヌイ」

 アイオワは見せた写真の人物がヴェールヌイだと種明かしをした上で、この人物が女性だと言う事を断言する。

これによって、アイオワが思っていた疑問は確信に変わったのだ。

「パワードミュージックで、上位ランカーに名前を載せているプレイヤーが全員――?」

 比叡は逆に驚く。周囲には男性プレイヤーもいるだけに、別の驚きがあったのだろう。

「確かに西雲と言う名前はネット上――それもまとめサイトや掲示板では言及されているかもしれない」

 次にアイオワが見せたのは、パワードミュージックの月間ランキングリスト。

そこには5位にヴェールヌイと言うネームが登録されていた。その下には、ビスマルクの名前もある。

「ARゲームでは、実際にプレイヤーネームとして使用している物とネット上で名乗っている名前が違うのは日常茶飯事、あるあると言ってもいい――」

 アイオワは比叡がARゲーム初心者でも説明書やマニュアル、初心者ガイドとも言えるサイトを見れば分かる事――それを知らなかった。

彼女がガイドラインなどを隅々までチェックしたとは言い難い事である。

「これを知らないという事は、ARゲームをマニュアルなしでプレイしているか――全く別のルートからARゲームを始めたパターンのどれか」

 アイオワの言う別パターンとは、プレイ動画やつぶやきサイト上の話、まとめサイト等の事を言う。

ガイドラインは公式サイトやアンテナショップでも閲覧可能だが――比叡が公式以外の情報経由でプレイしていた事を意味している。

あくまでも未プレイの人物によるARゲームプレイヤーの二次創作等を経由している訳ではないのだが――。

「はめられた?」

 比叡の方はアイオワの誘導尋問に引っ掛かってしまう結果にはなったが、まだアイオワは真相を話していない。

つまり、まだ自分の目的が見破られた訳ではないのである。



 次にアイオワは一連のネット炎上案件について話すのだが、これは簡略説明にすぎない。

下手に自分の知っている事を話せば、余計に不利な状況になりかねなかったからだ。

「襲撃者事件を含めて、全てが仕組まれていたと?」

 比叡の方は驚きこそあるのだが、既に知っている情報が多いので驚き方としては非常に小さい。

アイオワの方も、この反応には大体知ってたと言わんばかりの表情をしている。

「全てはアカシックレコードのシナリオ通り――誰が生み出したとも知らないような予言書に、いいように動かされている」

 アイオワの切り出した発言、それはある意味でも今までの事件は神が操っているかのような発言だった。

神様と言う概念が存在するかどうかは全く別の次元の話であり、今回の話とは関係がないのだが――。

「神様なんて馬鹿馬鹿しい。アカシックレコードも、それがシナリオだとしたら――そこに書かれた役割を演じるまで」

 比叡の発言は、別の意味でもメタ発言だった。しかし、アイオワがメタ発言と突っ込む事はなかった。

それを知れば――アイオワは更に別の何かを疑いかねないから。

 他にもやり取りがあったと思うが――周囲にジャミングがあった訳ではないのに、録画されていないという障害が発生して詳細は不明である。

分かっている事があるとすれば、比叡の正体をアイオワが探ろうとしたのだが――それに失敗したという事か。

それに加え、自分に勝てたら目的を話すとも言ったが、言質が取れた訳ではないので裏切られる可能性はある。



 午後1時、アイオワのガジェット調整や混雑でプレイの順番が来なかった事もあり――お互いに昼食を食べてからのプレイとなる。

それでも、順番が回らなかった関係もあって、午後1時20分予定枠になったのだが。

【サーバーの故障か?】

【そう言う訳ではないようだ。臨時メンテナンスがあれば告知があるだろう】

【一体、何が怒っているのか】

 ネット上でも、順番が回らないという報告が相次いでいるのだが――それが不具合なのか、いわゆるハッキングなのかは分からない。

周囲の人物が慌てるような事がなかったのは、下手に動揺をすればネットが炎上すると言う事で意識を強化した結果なのだろうか。



 午後1時15分、もうすぐ順番が来ると言う事もあってアイオワはスタートライン近くの待機ルームで待っていた。

既にARアーマーは装着済で、ガジェットも機動をしている状態である。

「比叡アスカ――最近参戦したプレイヤーの中では、油断できない相手だが――」

 アイオワは本当に比叡が強いのか疑問があった。さすがにチート疑惑がある訳ではないのだが、それでもネームドランカーに入るかと言われると、何かが足りない。

パワードミュージックではアクションゲームの様な運動神経や体力よりも、リズムゲームで求められる直感やリズム感等が必要となってくる。

アイオワの方はアスリートほどではないにしても体力には自信がある。しかし、リズム感は――まだ成長途中と言ったところか。

そのほとんどはARガジェットのサポートアビリティ等に助けられているだろう。

サポートアビリティは、公式のオプションであってチートと言う認識はされていない。

便利すぎるアイテムは何でもチートと言えばネットが炎上すると考えている人間はいるのかもしれないが。



 比叡の場合はリズム感が圧倒的なのだが、それと同じ事は木曾きそアスナにも言える。

木曾もかつてはリズムゲームのトップランカーに近いともネット上で言われていた中、唐突な参戦だった。

それに関してはアイオワもネット上のニュースで知ったのだが――。

「彼女のプレイ経歴は、木曾アスナに似ている――と言うより、ほぼ同キャラに近い」

 プレイ回数は木曾に及ばないが、プレイしている譜面傾向やプレイタイプと言った一部に違いがある。

しかし、それ以外は木曾のコピーと言ってもいい位だ。それに関して、アイオワは疑問に思う部分が――。

「ARゲームは十人十色――プレイヤーが目指す部分は同じだとしても、攻略本をなぞるようなプレイは推奨されない」

 この考えは、さりげなくだがビスマルクとも同じである。ARゲームはあくまでもリアルなスポーツと似ている物だ。

決して、攻略本を片手にプレイしてクリアするような――それこそ作業ゲーと呼ばれる事を非常に嫌うゲームでもある。

「ARゲームは作業ゲーの類ではない。それを、私は証明したい」

 アイオワは思う。ゲームは自分がプレイしたいと言う意思を持ってプレイする物だ。

誰かに命令されてプレイする者でもなければ、政治や一部アイドルグループのプロパガンダで利用していいという物でもない。

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