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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード8『変化していく環境、その行方』
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エピソード8-6

2017年1月30日付:加筆調整

 今回の状況に関して様子見を決め込んでいたのは、意外な事に明石零あかし・ぜろだった。

一連の騒動はARゲームの遠征をしている際に気付いたのだが――移動中の段階だった事もあり、そちらへ行く事が出来なかったのである。

「これはどう考えても――」

 明石はARバイザーではなく、全く別のスマートフォンでブラウザを開いて中継を見ていた。

ARバイザーだとログイン履歴等を含めて、記録が残ってしまう為である。

スマホやタブレットであれば、プレミアム会員等でない限りは――。

「そして、アカシックレコードの正体を知る者も現れるだろうな。近い内に、それが何を示すかも――」

 明石はアカシックレコードが絶対悪の象徴である事を既に知っていたような――そんな口調で動画を視聴し続ける。

彼女は、何故に悪となりそうな存在をあえて放置し、それさえも使用して芸能事務所などと戦おうとしたのか?



 午前10時50分、大和朱音やまと・あかねが遠く見ていた黒服の人物を補足し、肩の主砲を突きつけていた。

「ARゲームは特定個人が利益を独占するようなコンテンツではない――。資金力のある芸能事務所だけが生き残るような時代は、終わりにするべきだ」

 ARバイザーを装着し直した大和の表情を確認する事は出来ないが、はらわたが煮えくりかえるような気持ちで黒服の人物に迫っているのは間違いない。

その一方で、黒服の人物が抵抗するような事は一切ない。それを見た長門ながとクリスは違和感を持つ。

「あのARプレイヤーも――まさか?」

 長門は何かに気付き、大和に対して黒服から離れるように呼びかけようとするのだが、突然のジャミングでバイザーへのメール送信なども出来ない状態だ。

その中で、ある人物が超高速とまでは言わないが、接近しているのをARバイザーで確認した。

それを確認出来たのはジャミングが解除された直後である。つまり、回避が間に合わない状況――。



 大和が主砲を突きつけている間も黒服の人物は動かない。動揺でもしていれば、震え等は確認出来るはずなのに――。

その人物は、まるで人形であるかのように動きを止めている。大和もARバイザーがジャミング状態の為、生体反応等を確認出来ない状況だ。

「超有名アイドルを強者、それ以外のコンテンツを弱者として排除していく時代――それこそ、超有名アイドル商法が無双していた――まるで、WEB小説で――」

 大和が何かを言いかけた矢先、突如として黒服の人物を掴むようなアームが大和の目の前を横切る。

一体何が起こったのか――それは、目の前にいた大和にも把握できていない。

「やり口が卑怯過ぎるだろ! 金に物を言わせ、アフィリエイターを買収し、自分達だけが儲かれば他の状況はお構いなし――芸能事務所の金はマネーロンダリングされているっていう話は本当だったようだな!」

 黒服の人物をアームで掴んでいたのは、何と日向ひゅうがイオナだった。先ほどのアームも、バックパックが変形した伸縮式アームの様である。

しかし、掴んだというよりは――捕縛したと言うべき様子に、遠目で見ていた長門も驚きを感じていた。

「コンテンツ流通を本気で考えれば、ユーザーの意見を100%受け入れる事は不可能でも意見を聞くだけでも――違うのか!?」

 日向のARアーマーも重装甲タイプよりは更に軽量化した上で装甲を強化した――パワーアップバージョンになっている。

別のゲームで例えるならば、改二と言うべきバリエーションだろうか。そして、日向は何かの違和感を感じていた。

「お前達のやっている事、それは一部政治家と組んでアイドルファンだけを生かそうとするマッチポンプ――その為のネット炎上――」

 日向の感じた違和感、それは黒服の人物が実体をもたない事だったのである。

「マネーロンダリング? 一体、どういう事だ――」

 大和の方も若干混乱しているが、それでも日向が黒服の人物を離す事はしない。離さないというより、離せないという可能性も高い。

そして、数秒後には黒服の人物はCGエフェクト共に消滅をする。どうやら、全ては向こう側の策略にはめられたと言うべきか?

「マネーロンダリングは忘れてくれ。しかし、芸能事務所側は無尽蔵の利益を得るためにグレーゾーンと言われる手段に手を出している」

 その後、日向は姿を消した。一体、何を伝えたかったのか――。それが分からないままに大和は別の人物がいないかARバイザーで確認する。

【アンノウン、急速接近中】

 まさかの乱入展開には驚きを隠せないが――大和が改めてARゲームのジャンルを確認した所、まさかのジャンルが表示されていた。

「ARアクション――そう言う事か」

 表示ジャンルはアクション、対戦格闘や対戦シューティングであれば乱入プレイと言うのは日常茶飯事である。

おそらく、長門と島風朱音しまかぜ・あかねのパワードミュージックに関してはレース不成立と処理されたのだろう。



 それから10分後、大和は別件で捜索をしていたビスマルク、アイオワ、飛龍丸ひりゅうまると協力し、アイドルプロデューサーと名乗る人物を発見する。

実際に何が起きたのかは不明だが、激闘の様な物は展開されず――ビスマルクとアイオワ、大和のフルバースト攻撃と飛龍丸のブーメランの連携でガジェットを無効化する事に成功した。

その後、彼が第4の壁というサイトの記事を目撃し、そこから様々なビジネスに使えるであろうノウハウを――この世界でも運用しようとした。

この事が権利侵害と判断された訳ではないが、特許権侵害として芸能事務所の家宅捜索を受け――事実上、この事務所のアイドルグループは解散と言う事になる。

【色々とありもしない事を押し付けられ、解散したような気配もする】

【その真相を、我々は知る事が出来ない】

【結局、一部のアイドルファン以外を切り捨てると言うネット上の噂が本当なのか?】

【真実は、何処にあるのか?】

【悪は芸能事務所じゃないのか。一部の事務所は政治家と組んで莫大な利益を――】

 家宅捜索を受けた芸能事務所が侵略戦争を起こそうとしていたらしいというのは、アカシックレコードに書かれている事だったのだが――。

その話がニュースで報道される事はなかった。WEB小説のプロットでも書かれているような話を事実として信じるのか――と言うのもある。

ネット上のつぶやきでも、一部の書き込みが削除される展開になっていたのだが、それもネタバレと言う事を含めて限界に来ていた。

ネット炎上を意図的にコントロールし、超有名アイドルを神化しようというビジネススタイルは、もはやマッチポンプと疑われている段階だ。

「こちらとしては――こういう事はしたくなかったが」

 明石が書き変えていたのは、アカシックレコードの情報だった。侵略戦争の項目に関して、微妙に記述を変更したのだが――。

誰の目から見ても明らかな情報を歪める事――それがネット上で炎上する事態になる事は痛いほど分かる。

しかし、そうでもしなければ、彼らは理解する事が出来ないだろう。

自分達の書き込みが、どのような未来を生み出す事になるのか。悲劇の結末を生み出す事になろうとも――明石は、それを辞める事はしない。

「ARゲームが、超有名アイドル商法に対するカウンターコンテンツである事――それを自覚できる者もいるのだろうか?」

 明石は考えていた。ARゲーム運営でさえも把握している人物がいないとも言われている――ARゲームの存在意義を。

「ウィキやまとめサイトの様な存在が絶対悪と言われるのは、こういう事も意味しているからだ」

 しかし、明石の考えが杞憂で終わる事は――この段階では知る由もなかった。 


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