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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード8『変化していく環境、その行方』
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エピソード8-5

2017年1月30日付:加筆調整

 4月28日、午前の段階からネット上は慌ただしかった。

その理由として、さまざまなデマニュースが拡散されていたからである。

アカシックレコードのコピペクラスの様な低レベルな物もあるが――ネットをお手軽に炎上するのには、これで十分と言う判断なのだろう。

「遂に――動き出したか」

 タブレット端末ではなく、ARバイザーでニュースを確かめていたのは飛龍丸ひりゅうまるだった。

少し前からアイドル投資家を初めとした勢力の動きが慌ただしくなっていたのだが――彼女は、それをテコ入れと考えている。

そのテコ入れとは、飛龍丸が一番望まなかった結末に近づく展開――だったのである。

超有名アイドルが全世界を掌握し、デウス・エクス・マキナとなる地球滅亡に等しいバッドエンド――人類は、それを望んでいない。

それを止める為、アカシックレコードの解析をしていた人物もいたのだが、思わぬ展開には驚きを隠せなかった様子。

世界滅亡をカウントダウンする時計も、超有名アイドル商法をゴリ押しする芸能事務所の行動が人類滅亡を1分前まで早めるとは――さすがに思わないだろう。

海外は全く見向きもしないようなネット炎上が、日本では政治家が辞職をするような大規模事件として取り上げられているのだ。

この状況には、海外も衝撃を受けざるを得なかった。ゲーム機が世界征服をする為の大量破壊兵器になるのか――という意味でも。

まるで、玩具で世界征服を企んでいるホビーアニメの科学者を思わせるような展開だ。



 午前10時30分、テレビ局で緊急記者会見が組まれた。

唯一、通販を放送しているテレビ局と地方局以外は同じ記者会見を放送している。

場所は都内某所と言う訳ではなく――何処かのビルのようだ。

窓からは毛長川が見えるのだが、詳細な場所が何処なのかは分からずじまい。

テレビ局の記者や雑誌の記者なども集まっており、それだけ注目度は高いのだが――それでも100人規模ではなく、人数が別の取材などで割かれた格好だ。

その取材が何の取材なのかは分からない。ばれてしまってはスクープではない、と言う事なのだろう。

『我々は、現状のアイドル業界を変える為に――2.5次元とも言えるARゲームへ進出します』

 覆面と言うよりは鉄仮面をしているスーツ姿の人物、彼がプロデューサーなのだろうか?

体格に関しては本当に男性なのか疑わしい箇所もあるのだが――詳細は不明だ。

彼の声に関してもボイスの加工だけでなく、男性なのか女性なのかも分からない状態である。そんな人物を本当に超有名アイドルのプロデューサーと信じられるのか?

これもARゲームの技術なのか? 記者達は戸惑うのだが――。

「2.5次元と言うと、舞台等を想定しているような単語ですが――?」

 ある男性記者が質問をする。確かに2.5次元と言う意味でARゲームを選んだのには意味があるのか――という事かもしれない。

『確かに。ゲーム等の場合は2次元と言う単語を使用しますね。しかし、2次元に超有名アイドルが進出するのはネット上でも炎上を誘い、それが戦争の火種となり――デスゲームに発展する』

 覆面の人物のバイザー部分が光る。その目はデュアルアイであり、左目のみが光ったように思えた。

『ARゲームが人命を奪う様な――デスゲームを禁止しているのは――ご存知でしょう。だからこそ、ARゲームでなければ――海外の紛争を止める事は出来ない――』

 ボイスの加工が不完全なのか、途中でノイズがひどくなる。チャフの類も起動していない、電波妨害が起きた形跡もないのに。

「紛争ですか。まさか――」

 別の記者が質問をしようとした所で、スーツの人物は強制的に中継回線を切った。

どうやら、ここからはオフレコと言うらしい。そして、それとは別に黒いスーツの集団が姿を見せる。

「そこまでだ! 偽物のプロデューサーめ!」

 黒いスーツの集団は覆面の人物に対し、サブマシンガンを構える。それと同時に記者の方は逃げまどい、中継エリアはパニックとなった。

記者が外に出た所で、スーツの集団はサブマシンガンを撃とうとしたのだが――それが火を噴く事はなかった。

「馬鹿な――こちらは本物を持ってきているのだぞ? 何故、撃てない」

 本物と言う発言をしたスーツの人物は、自分が迂闊な発言をした事に気付いていなかった。

本物と言った段階で、本物の銃を所持していると一部の記者が勘違いし、遂には警察を呼んでしまったのである。



 午前10時40分、記者会見は予想外の形で再開された。警察の事情聴取が行われる事はなく黒服の集団を一斉検挙、警察はそのまま退場する。

『どのような形であれ、物理手段や犯罪行為でネット炎上を仕掛けようとする勢力を――』

 しかし、次の瞬間には爆発音で覆面の人物の声が遮断された。

これに関してはカメラの方も爆発音の方向を向いており、そこには煙も見える。ただし、火災が起きた訳ではない。

その後、会見は再中断。それが再開される事はなかったと言う。何故かと言うと、取材陣が爆発のあった現場へと向かってしまったからだ。

「始まったか――」

 誰もいない事を確かめて、鉄仮面型のARメットを脱いだ――と思われたが、それはホログラムだった。

鉄仮面デザインのメットがCG演出で消滅したのと同時に姿を見せたのは、SFヒーローを思わせるようなARメットである。

「ここまでのカードを切らせた以上は、超有名アイドルファン等が荒らしていったフィールドの後始末をしてもらう――」

 先ほどの会見に姿を見せていた黒服の正体――それは西雲響にしぐも・ひびきだったのだ。

何故、彼がここまでの事を実行する事になったのかは、超有名アイドルファンがARゲームにしてきた事を踏まえれば――。

ある意味でも、西雲が行っている事は絶対悪に該当するだろう。アカシックレコードの記述に従って――と言う可能性は否定できない。

しかし、西雲はテンプレで今回の作戦を考えた訳ではない。あくまでも自分の意思で決めた事。



 午前10時45分、谷塚駅と竹ノ塚駅の付近にある電車の線路付近、そこにはアイドル衣装を思わせるようなARアーマーを装備したプレイヤーの姿が団体で確認出来た。

その人数は40人以上の50人未満――この人数を相手に単独で挑んでいたのは、島風朱音しまかぜ・あかね大和朱音やまと・あかね長門ながとクリスの3人である。

本来は長門と島風がパワードミュージックでレースを展開していたのだが、そこへ妨害を仕掛けてきたのが超有名アイドルグループを思わせるようなARアーマーを装備した集団だった。

彼女達が使用する一発で超高層ビルさえも消滅させそうなガジェットからは、もはや逃げ回るしか方法がない。

しかし、向こうが建造物に攻撃を仕掛けるような気配がなかった。どうやら、向こうも反則行為は知っているようである。

「建造物の破壊行為――ARガジェットでは不可能だが、不正ガジェットでは可能な場合もある――と言う事か」

 無差別破壊行為もARゲームでは禁止されており、場所によっては莫大な罰金も発生する。

それをやってしまうと、彼女達は芸能活動が出来なくなるばかりではなく――自分達の芸能活動が黒歴史となりかねない。

長門の方も、今まで別のARゲームで反則行為をやっているプレイヤーを見た事はあるのだが――。



 逃げ回る2人の前に姿を見せたのが、別の目的があって現地入りをしていた大和だったのである。

しかも、大和はパワードミュージック仕様の強化型ガジェットを装備しており、これによってますます戦艦大和に近づいた気配さえ感じた。

その一方で、パワードミュージック仕様のARガジェットはサイリウムを思わせるようなラインとボリュームつまみ、鍵盤のデザインを持つバスターライフルである。

「向こうが地球破壊クラスのチート武装を持っている以上は、こちらの下限をする必要性もない」

 ARバイザーでその他の武器リスト、そこにはアガートラームやエクスカリバー、グングニルと言った有名所の武器もリストアップされている。

その中には明らかにARゲームでは没になった武装――巨大ロボットを思わせるユニットもあるのだが、さすがに大和が選択するような事はない。

「超有名アイドル――お前達が踏み入れた世界、それはチートプレイヤーが踏み込むべきではない世界でもある!」

 バスターライフルの引き金を引いたと同時に放たれたのは、虹色のビームである。

しかも、そのビームは拡散タイプであり――何かの曲のリズムに合わせるかのように次々とチートプレイヤーに命中していく。

気が付けば――襲撃してきた45人近くは大和が姿を見せて30秒も立たないうちに壊滅した。

「チートプレイヤーがたどるのは、負けフラグとかませ犬の称号――これが、ARゲームと言う名の新日常系――この世界の掟だ!」

 大和は強く断言する。金に物を言わせるような廃課金プレイヤーや超有名アイドルファンに代表されるアイドル投資家等――。

そうした勢力が無双する事で、ARゲームは瞬時にして運営終了に追い込まれる。それを、過去に様々な場面で大和は目撃していた。

「あれが――チートキラーと言われるアガートラームの力――?」 

 島風は目の前で起きた光景を未だに把握できずにいた。あのパワーは他のARゲームでは滅多に見る事は出来ないだろう。

ある意味でも運営側の怒り――あるいは運営側の星サイトでも言うべきか。

超有名アイドルの芸能事務所が敵にした物、それはネット炎上が発生する事で風評被害が発生する事を恐れる者たちの――声とも言えるだろうか。

「金の力で因果律を変えようなどと――」

 長門の方も状況は理解しつつも、まだ戸惑いが隠せない。

「ARゲームがイースポーツと言われる以上は、不正があってはいけないのだ!」

 大和は今まで以上に運営方針を強化しなくては――と思っていた中、今回の超有名アイドルの宣伝活動をキャッチしたのである。まさか、自分が仕掛けたトラップに芸能事務所が引っ掛かるとは。

「準備不足が露呈したな。超有名アイドルが金の力で実写映画を作って炎上するのと同じ事をARゲームで起こせば――クールジャパンどころではなくなるだろう」

 そして、大和は遠くで見ていた黒服の人物を発見し、瞬間移動とも言える速度で――。


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