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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード6『ネット炎上とリアル炎上と――』
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エピソード6-10

2017年1月23日付:加筆調整

 午前12時30分、アンテナショップでは様々な動画が配信され、注目を集めている所である。

今日に限っては、AR格ゲーやARTPS、ARリズムゲーム等でもスーパープレイが目立ち、ある意味でも収穫の多い展開なのかもしれない。

その中でも、パワードミュージックのプレイもスーパーには及ばないが、好プレイと評価する者が多い。

「誰もが最初からスーパープレイヤーと言う訳ではない。その過程を忘れ、最初から最強だと思いこむような勢力が現れたのが、全ての原因と言う可能性も――」

 大和朱音やまと・あかねは最初から超人が現れたりするような現象を認めてはいなかった。

それこそ、WEB小説の異世界転生、異世界転移などにあるようなチート等を横行させる可能性があったからである。

大和がARゲームのガイドラインを色々と調整し、悪質なチートプレイヤー等を容易に発見できるようにしたのは、この為なのかもしれない。

 パワードミュージックで注目されていた動画は色々とあり、数日前に行われた物でも譜面研究やスーパープレイの参考で視聴される場合が多い。

しかし、スーパープレイ動画は一般受けと言うよりはマニア向けであり、一般が視聴しているのは作業用BGM集や音ゲーMADの様な物がメインらしいが――。

譜面研究はプレイヤー向けの動画である一方で、どう考えても――と思うのは人それぞれだろう。

その中でも安定した再生数を記録しているのは初心者講座である。

一見して需要がないように見えるのだが、パワードミュージックではシステムが難解と言う事もあり――ある程度のユーザーを獲得できる動画でもあった。

公式でも初心者向けの動画を配信しているのだが、そちらでは分かりにくい人向けと言うべきだろう。

ARゲームでは、特に推理物等のARゲーム開発を規制している関係もあり、生中継や実況中継の配信、プレイ動画の投稿に制限はかけられていないのが特徴だ。

アカシックレコード内では一部ジャンルで規制されているともあったが、その事例であるRPGやADVなどと言った謎解き要素のあるARゲームがない事もあり、特に問題にはなっていない。

「何処を攻撃対象にするつもりなのか――あの連中は」

 大和は動画サイトの動画で再生数が急激に伸びているような動画を探すが、特にヒントとなるような物は存在しなかった。

やはり、動画サイトと炎上勢力は関係ないのだろうか?



 午前12時35分、アンテナショップより若干離れたフードコートにいた明石零あかし・ぜろ、彼女はタブレット端末で動画を見ていた。

動画の音声は耳に装着しているARバイザーのヘッドフォンに流れており、特に騒音で迷惑になっている訳ではない。

それに加えて、耳に負担をかけないようにボリュームも若干下げている。その状態で視聴していた動画、それは先ほどの自分がプレイしていたパワードミュージックだった。

明石自身は無口で動画を見ているのだが、テーブルにはコーヒーとメンチカツ入りのカレーパン、チョコホイップサンド、やきそばパンがトレーに置かれている。

 1曲目の時は、全く出来ていない動きだったのは間違いない。それこそ、悪い一例とツッコミが入りそうな程の。

それでも、危険なアクロバットには走らなかったので何とか――と言える。下手に危険なプレイに走っていれば、勲章を入手出来ずに演奏失敗もあり得ただろう。

序盤はチェーンソーブレードを目の前に出現した白い壁に向かって振りかざしているだけであり、リズムには全く乗っていない。チュートリアルで何度も失敗した事を学習していなかった。

一方の相手プレイヤーは、チートを使っていたプレイヤーは適当に動いただけでパーフェクト判定だったのも――不正プレイと認識された理由だろうか。

島風朱音しまかぜ・あかねは、上手くブースターユニットやARガジェットの二丁拳銃を使いこなしている印象だった。

パーフェクト判定の連続と言う訳ではないが、壁に弾丸が命中した際のエフェクトはパーフェクトの連続、途中でグッド判定になったりはしたが、今後が途切れる事はなかったのである。

あれだけの動きをしたと言うのに、汗一つないように見えるのは――インナースーツにそう言った機能があるのかもしれない。

「やはり、まだ経験不足と言う事なのか――?」

 2曲目は自分でもそこそこの成果だったかもしれない。それでも、ボーダーラインぎりぎりであり――勝ったと言えるものではなかった。

その傾向は3曲目も変わらない。結局、自分はギャラリーの期待に添えられるような反応を得る事は出来なかったのだ。

それこそ、まだプレイ経験が浅いと言えるのかもしれない。無敗で勝ち続ける事は――ARゲームでは不可能の領域なのか、とも考えている。

ゴールした際、スーツでも脱いで裸を見せて視線を――と言うのは不可能であり、そんなリアクションでもしたらネットが炎上するだろう。

不正プレイも炎上の原因だが、プレイヤーのモラル低下等も炎上の原因となる。ARゲームに必要なのは、ルールが存在するからこそ輝くプレイ――とネット上では言われていた。

カードゲームアニメでも『ルールを守って、楽しくバトル』的な注意分が出る作品もあるので、ルールを守った上で魅せプレイを出来るプレイヤーは尊敬される。



 午前12時40分、草加駅のホーム、そこでは予想外の人物が遭遇戦を展開しようとしていたのである。

片方はスーパーヒーローを思わせるアーマー、それに特殊型バックパック――その姿こそ、ネット上でも有名なリズムゲームヒロイン・アマツだった。

「リズムゲームヒロイン・アマツ――噂には聞いているが、お前の実力もこちらには到底及ばない」

 もう片方は、メイド服にARアーマーが装着されたようなデザイン――それに頭部全体を覆う様なARメットを装備している。

一見するとアマツとも似ているのだが、実際にはアマツとは全く違う外見なのかもしれない。

その正体は飛龍丸ひりゅうまるだったのだが――アマツは飛龍丸の事に気付いていなかった。

「こちらとそっくりのアーマーと言う事は――こちらを真似ている?」

 アマツが驚いたのは、自分と似たようなアーマーを装備している飛龍丸のカスタマイズと言える。

しかし、飛龍丸のガジェットはアンテナショップのリストにもないような非売品系列の可能性も高く――下手に動けないでいた。

あるいはロケテストプレイヤーに貸し出される試作型、あるいは市場に出回らないような特殊なチートではないガジェットとも考えられる。

「ARゲームはVRゲームの世界とは違う。興味本位でプレイすれば――」

「そんな事は、貴女に言われなくても分かってる! 覚悟は――事前登録の段階で決めていた!」

 2人はそれぞれの武器を展開し、別の駅ホームへと飛び移る。その速さは忍者を思わせるような速度だ。

ARバイザーをしていない一般市民でも、この忍者を思わせる速度の2人には驚くしかなかった程に――常識を逸脱していたのである。

まるで、忍者物の特撮の撮影をしているのでは――と考える位に。

駅の線路上に電車は止まっていなかったので、間違っても電車に轢かれると言う事はない。そんな事になれば大参事は避けられないからだ。

しかし、ARゲームでは危険なプレイを禁止している。その証拠として――。

《警告》

 2人のARバイザーにはインフォメーションメッセージが流れていた。

この警告はサッカーなどで言うイエローカードに該当するもので、ゲージが一定を超えるとレッドカード扱いとしてARガジェットが強制停止する。

強制停止すればARバイザーの機能は安全装置以外が動かなくなるのは確実だ。

そして、ARウェポンやガジェット機能がロックされ、ARゲームへの参戦も一定期間不可能になるだろう。

これは日向ひゅうがイオナが受けている凍結とは異なり、解除するのにかなりの手間がかかる。

更には休止期間も長いので、下手をすれば――ゲームへの参加も長期間不可能になるのは避けられない。



 午前12時45分、1番線から電車が通過する感触を2人は感じた。

そして、電車に気を取られていたアマツだったが、飛龍丸の方が逆に深入りをしすぎたらしく――。

「ARゲーマーがやってはいけない事――それは、上級者になれば分かる事だろう」

 アマツの使用していたARガジェットはアンカーアームの様な物で、それが会話途中で投げつけていたブーメランを受け止めていたのだ。

何故、アマツがアンカーアームを起動したのか――それは、飛龍丸のわずかな反応ミスが大参事を生み出そうとしていた事にある。

それを止める為にも、彼女はARガジェットの能力に賭けたのである。

「迂闊――こちらに、慢心があったのか」

 アマツのアンカーアームが飛龍丸のブーメランを受け止めた理由、それは電車に命中する恐れがあったからだ。

ブーメランの挙動を飛龍丸が読み間違えた事が、今回のミスを生み出したと言ってもいい。

一歩間違えれば、ブーメランは電車を真っ二つにしていた所である。本来であればCG映像のARウェポンでは電車が真っ二つになる事もないのだが――。

しばらくして、飛龍丸に警告アラームが鳴り響き、彼女のARガジェットが強制停止し、アーマーの能力は失われた。

それによってメイド服姿の女性が姿を見せる事になったのだが――髪型は黒のセミロング、前髪はおかっぱと言う訳ではないが、その髪型はメカクレと言っていい。

メイド服は所々が破れているが、その隙間から肌が見える事はなく、ARゲーム用の黒いインナースーツが見える程度。

彼女の目つきは恥ずかしい姿を見られた事による物ではなく、アマツに対する対抗心と言う物が向けられている気配だった。

「お前は――ガーディアンの飛龍丸、なのか」

 アマツは正体を見せた女性の姿を見て、目の前の人物が飛龍丸であると理解した。

彼女がガーディアンを生み出したのは、都市伝説クラスの話としても有名であり――。

「まさか、あの飛龍丸と言うのか?」

「そんな馬鹿な!?」

「信じられん――」

 逆に草加駅で一部始終を見ていた電車内の乗客、駅のホームにいるギャラリーの方が驚いていた。

いっそ、メイド服も切り裂いて欲しかったと思うギャラリーもいるのだが、そこまですればアマツの方もレッドカードになるだろう。

「アマツ――お前の様な事情を知らないような勢力が、我々のフィールドを荒らすのはコンテンツ業界としても許される事ではない!」

 飛龍丸は傷が付いている訳ではないのだが、右手で左目を当てて負け台詞と共に駅のエレベーター方面へと姿を消す。

この場合、スモーク等を展開して姿を消すような物だが――この辺りは乗客などに配慮したのだろう。

「こっちだって、超有名アイドルの無法行為を許す訳には――」

 アマツこと天津風あまつかぜいのりも、飛龍丸の意見には同意している。

聖地巡礼等のルールを知らずに『そのスポットが話題になっている』だけで訪れるようなミーハーやネット炎上勢力がやっている事――。

それを天津風は認めようとしていなかった。それを超有名アイドル投資家等の炎上狙いの行動とすれば、どれだけ気が楽になるというのか。

「それに、コンテンツ流通問題を考えているのはあなただけじゃない――」

 天津風は、飛龍丸の気持ちを少し察したのである。

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