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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード6『ネット炎上とリアル炎上と――』
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エピソード6-4

2017年1月22日付:加筆調整


 午前11時10分、比叡ひえいアスカはソーラーフォースのブラックボックス判明を後回しにした。

今は、こちらよりも重要な事がある――と判断したためである。

タブレット端末で株式市場に関係するサイトを開いていたブラウザを閉じ、別のブラウザをたち上げ直す。

その重要な事とは――ARゲームではない別のゲームに関係する一件だった。

「リズムゲームの状況は、どうなっているのか――」

 比叡が調べていたのは風のうわさで聞いたリズムゲームの近況である。

ARリズムゲームではなく、それ以外の機種――一般的な機種の事だ。少し前には比叡の参戦で状況が一変したとも言われていたのだが――。

「これは、一体どういう事だ――?」

 オリジナル楽曲をメインとした機種では、さほど楽曲ラインナップが変わっている訳ではない。

問題はライセンス曲を扱っている機種だ。何と、超有名アイドルの楽曲が一気に増えていた。

リズムゲームの場合、楽曲の追加は機種ごとなのでアップデートされれば全国の同機種で同じ楽曲がプレイできるようになる。

例外として一部の国で収録見送りの曲は、その国の筺体ではプレイ出来ない。こうした事例は例外中の例外だ。

草加市でも例外中の例外として超有名アイドルの楽曲を収録しないという選択肢もあったのだろうが――。

この状況になったのは、比叡がARゲームを初めて少し経過した辺り。おそらくは、事前に仕組まれていた可能性も否定できないが、詳細は不明である。

「こちらが不在の間に、やってくれる!」

 比叡は思わずテーブルを思いっきり叩きそうな勢いで激怒していたが――物に八つ当たりをしても、意味はないだろう。

それを百も承知の上で――今回の一件をある陰謀が関係していると考えた。

それはアイドル投資家と似たような勢力によるコンテンツ流通の完全支配――自分達の都合だけでコンテンツの流通を行おうと言うのである。

「ここは戻るべきなのか、それとも――」

 比叡は本来のフィールドへ戻るべきか、パワードミュージックに残留するかを悩む。

今の状況下でプレイしたとしてもオールラウンダーとして動ける程のスキルを持っている訳でも、資金的な部分で両方プレイ出来る訳でもない。

その為、現状ではパワードミュージックを優先する事にする。止む得ない判断だが、資金的な状況が改善する手段がない限りは――。

資金が回復したとしても、複数の機種を並行プレイするのは至難の業とも言えるだろう。

特にリズムゲーム特有のイベントを追うのであれば――。

「比叡アスカ――」

 比叡が遭遇した人物、それは提督服姿のガーディアンだった。帽子を深く被っていた為に視線は確認出来ず――。

「ガーディアンが何の用なの?」

「こちらとしては特に用がある訳ではない。偶然はち合わせただけだ」

「偶然? その割には、アンテナショップをピンポイントで発見して来店したようにも――」

「アンテナショップの身回りはガーディアンでも定期的に行われる。ピンポイント来店という意図はない――ショップに違法性があれば、ピンポイントで強制捜査はあり得るが」

 比叡はガーディアンがピンポイントで比叡に接触しようとしたのでは――と考えた。

しかし、ガーディアンはピンポイント来店を否定、アンテナショップの視察は不定期に行われるので、そこと重なったという言い訳で切り返される。

「一連のトータルバランス崩壊は――」

「その事件、何処で聞いた?」

 比叡がある事を聞こうとした際、ガーディアンは慌てているような表情を見せた。

しかし、帽子を脱ぐ事はなかったので素顔は分からなかったが――。

「どちらにしても、急ぐ必要性があるのか――」

 ガーディアンの人物は、早歩きでアンテナショップを後にする。一体、彼らは何を隠しているのか。

真相が仮に分かったとしても、その詳細はネット上でも確認出来ない為、犯人に直接聞かなければ分からない可能性が高い。

「ARゲームはゲームであり、個人の主義主張等の押しつけやプロパガンダに悪用されるべきではない――と」

 ガーディアンが姿を消した頃、比叡は現状のARゲームで起こっている事件に対し、ふと考える部分があった。

芸能事務所のプロパガンダにARゲームが悪用され、炎上マーケティングが展開されているのは放置するわけにはいかないだろう。

これは、アカシックレコードにも書かれているのだが――これが全体の意見と言う訳ではない。

アカシックレコードに関しては、あくまでもフィクションの集合体と考えるべきである、そんな意見が大半と言ってもいいだろうか。



 午前11時15分、アンテナショップを見回していたのは明石零あかし・ぜろである。

別のARゲームも体験したのだが、こちらの方はスコアがいまいちだったので、やはりパワードミュージックが合うのではないか、と考えていた。

「エントリーであれば、こちらのデータが必要になりますが――」

 男性スタッフの指示でデータを入力していく明石だが、彼女が特に喋る事はなかった。

必要な部分は答える一方で、不必要なトークなどは控えるような流れである。

これに関してはスタッフも特に突っ込む様子はなかったと言うが――。

「スーツの方はどうしますか?」

 男性スタッフがスーツに関して尋ねると、明石はタブレット端末をスタッフに見せて自前で用意している事を示すのだが――。

「そのスーツではパワードミュージックは非対応ですので、新規で購入する必要性がありますね」

「止むを得ないか――では、システムの仕様に関してはそちらにお任せしましょう」

 明石の方もスーツが非対応と聞き、ここはさすがに応対しなくては――と言う事で身振り手振りも駆使してスタッフに説明する。

「なるほど。ARメットをうまく対応できる物ですか」

「全体を覆うタイプでもかまわないが、この方が全方位をフォローしやすい」

「しかし、パワードミュージックではカメラ内蔵型ドローンは飛ばせません。一種のチートとまではいきませんが、持ち込み禁止ガジェットなので」

「ARガジェットも変更する必要性があるのか? ガジェットに関してはワンオフを必須とするのはジャンルが限られると聞いている」

「確かに、ワンオフ型ARガジェットを必須とするARゲームは少ないですね」

「では、こういう形状の物は用意できないのか?」

 愛用のARガジェットはカメラ内蔵型のドローンと言う変わり種のARガジェット。これによって全方位をフォローできるという物である。

しかし、それでもチャフグレネードの影響を受ける、ドローンの起動時を狙われ易い等の欠点もあり、万人向けではないだろう。

そこでスタッフから勧められたのは、有線タイプのブレードガジェットだが、それよりも明石が興味を持ったのは別のガジェットである。

その形状とは、リズムゲームのコントローラをベースにしているのは必須だが――チェーンソーブレードという珍しいタイプの武器だった。

「チェーンソーブレードですか――。それはARガジェットの中でも複雑な物、あまり初心者に薦められる物じゃありません」

 スタッフの方は、明石が該当ガジェットを選んだ事に対して困惑している。

試作型ガジェットであればショップには置かないので、それを踏まえると――。



 その様子を何か怪しんでいた人物がいた。既に数ゲームプレイしただけだが、上位のランカーに迫るスコアを叩きだしている人物――。

それは、何と島風朱音しまかぜ・あかねだったのである。

彼女はインナースーツ姿で次のフィールドへと向かう途中で明石の光景を目撃していた。

「あれは――」

 島風もスルーしようと思ったのだが、あまりにも身振り手振りがオーバーリアクションだったので、気になってしまったらしい。

さすがに受付でギャラリーが出来るような光景も――と思われるが、気になっていたのは島風一人だけのようだ。

「まさか、彼女が明石?」

 髪型と見覚えがあるようなガジェット、それにスク水を思わせるインナースーツ――彼女が持ち込みでもめているとすれば、あのドローンガジェットだろう。

「あのドローンガジェットを持ちこまれたら、リズムゲームが作業ゲーになっちゃうじゃない」

 島風の方は、明石が持ち込もうとしていたドローンガジェットを知っていた。ネットの噂ではなく、実物を見覚えがあるのだ。

その能力はリズムゲームで使われたら、それこそ理論値を量産される危険性も否定できない。

使い方を間違えれば演奏ミスを連続する可能性も高いので、諸刃の剣とも言えなくはないが――。

「それでも、ARガジェットのタイプによっては使用不能の作品もあるはず」

 AR格ゲーでARFPSで使う様なスナイパーライフル系が禁止、ARレースゲームではターボユニット付きのブースターが禁止と言うように、そのジャンルではチートであるガジェットを禁止しているケースがある。

ARパルクールでは特に禁止されているガジェットはないのだが、大量破壊系武装は禁止されているはずだ。

しかし、パワードミュージックはARパルクールではなく、リズムゲームのカテゴリーである。

それを踏まえれば、ドローンやビット系列の遠隔操作系は禁止されているだろう――そう考えたのだ。


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