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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード4『大和、出撃!』
44/137

エピソード4-8

2017年1月16日付:加筆調整

 4月16日午前10時5分、大和の一件が思わぬ人物によって目撃されていた事は、一部勢力にとってはうれしくないニュースとして拡散していくこととなった。

「なるほど――こちらが出向くまでもなかったか」

 彼女の名は磯風いそかぜ、ARゲームのガーディアンであり、あきつまるとはガーディアンとしては任務が同じだが、所属は異なっている。

「しかし、彼女の行動は越権行為――いずれ、その反動は何かの形で混乱の元になる」

 その後――彼女は別の場所へと向かった目撃証言もあるのだが、その真相は不明である。

果たして、彼女は何処へ向かったのか? それ以外のガーディアンも個別で行動している疑いがあるのだが――。

磯風は大和朱音やまと・あかねの行動に関して、越権行為と考えている。

その一方で超有名アイドルコンテンツを唯一神にする為の活動に関しても苦言を呈していた。

実際、別コンテンツを超有名アイドル勢力のかませ犬にする為、様々なサクラ行為やネット炎上、それこそ犯罪スレスレな迷惑行為を行い、それを別コンテンツのモラルのないファンが起こした物と主張する。

それが原因としたネット炎上は無数に存在し、第四の壁を超えた世界でも実例が存在していた――残念なことではあるのだが。

【超有名アイドルファンは、あるグループが解散に追い込まれた件を他のコンテンツ作品が炎上マーケティングに――と理由を付けて報復を行っている】

【しかし、そうした報復の連鎖がコンテンツ流通を止めてしまう程の騒動を引き起こすという事を理解していない】

【切磋琢磨するようなバトルであれば、問題視はされないだろうが――アイドル投資家は、明らかに自分達以外は存在価値がないと切り捨てている】

【このような一部の投資家連中だけが富裕層として蹂躙するような世界が認められるのか――それこそ、絶対にあり得ない】

【アイドル投資家は、コンテンツ流通で世界大戦クラスの大規模な――】

 つぶやきサイトには、様々な情報が存在している。役に立つような情報もあれば、役に立ちそうにないまとめ風のページも存在していた。

しかし、中には炎上マーケティングを意図して狙っているようなブービートラップも存在する。このような状況は第4の壁の先でも――。

炎上マーケティングは一部のまとめサイト管理人やアイドル投資家しか得をしない――ごく普通の消費者にとっては、一銭の得もしない事案でもある。

だからこそ、ガーディアンは超有名アイドルの動きを監視し、大和は超有名アイドルやネット神と呼ばれる存在の介入を防ぐ為にARゲームに細工を施していた。

「ネット神、第四の壁からすれば創造神とも言うべき存在と例えているのか――」

 磯風はネット上のまとめサイトを見て何かの不安を感じていたのだが、それは取り越し苦労であると思っている。

その理由として、転売屋勢力を片づけたのが大和と言う事実は既にネット上で拡散し、次に狙われるのは自分の勢力なのではないか、と戦々恐々としているからだ。



 午前10時15分、アンテナショップで無事にエントリーを済ませた長門ながとクリスは、順番待ちで待機をしている状況だった。

何処から聞きつけたのかは不明だが、大量のプレイヤーがパワードミュージックにエントリーしようとして、窓口が混雑しているのである。

実際、パワードミュージックはネット上でもエントリーは可能だ。混雑を回避する為、敢えてネットで登録したユーザーも存在する。

一部のメンバーはネットで事前登録をしていたからこそ、スタートダッシュに成功したとも言えるかもしれない。

しかし、ゲームをプレイする為にはARガジェットも必要となっていた為――どちらにしてもアンテナショップへ行く必要性があるのだ。

『過去にもVRゲーム等で町おこしを考えようと言う動きはあり、一定の評価を得た地域もあったが、周辺住民から理解される事はなかった』

 動画の中で、ビスマルクはこう言及していた。

ARゲームではなくても町おこしにさまざまなコンテンツを使うと言う動きは――。

中には聖地巡礼とも言われているが、草加市の事例は聖地巡礼とは全く違う。自分達が中心となってARゲームを広めようと言う事なのだ。

何故、草加市はARゲームに注目したのかは――ビスマルクを初めとして研究したメンバーがいるのだが、残念ながら真相は公表されていない。

『だからこそ、今回の事例は成功させるべきなのだと思う』

 ビスマルクの動画を見ていたのは長門である。この動画を発見するきっかけになったのは、ネット上のつぶやきサイト。

つぶやきのリンク先が釣りサイト、ウイルスを仕込んでいるサイトと言う物もあるのだが――ARゲーム関係で、こうしたつぶやきを行うと営業妨害としてアカウントを凍結される。

凍結されるのはつぶやきサイトのアカウントであり、ARゲームではない。それでも、小銭稼ぎのために詐欺サイトへの誘導等を行うユーザーは後を絶たない。

「ハイエナ勢力やタダ乗り便乗勢力、アフィ系まとめに代表される勢力は――結局、自分達のことしか考えず後に起こるであろう大参事も考えない。炎上すれば、自分が目立てる――自分が正義だと思いあがる」

 ビスマルクの動画に関しては反論を持つ部分もあるのだが、大まかには賛同できる箇所があった。

そして、自分達の都合で発言の意味を捻じ曲げ、ねつ造し、超有名アイドルを神コンテンツにしようという流れ――それを実現させようと言う勢力を彼女は認めない。



 4月17日、動画サイトでは何の変哲もない様な動画が10万再生を突破していた。

その動画とは昨日のパワードミュージックのプレイ動画であるのだが――それだけならば10万再生を突破する様な理由は見つからない。

「パワードミュージック――最近になって注目されているARゲームか」

 帽子を深く被り、似合わないような私服をきて動画を検索していたのは日向ひゅうがイオナである。

現在、彼女はARゲームのアカウントを凍結されている状態であり、プレイ可能なゲームがARリズムゲーム1種類とAR麻雀だけという状態。

これだけではARゲームとしては物足りない為、何かプレイ出来そうな作品を手当たり次第探していた。

しかし、既存ジャンルでは即座に何かを怪しまれるのは目に見えている。

他のプレイヤーが自分を恐れて別のゲームに乗りかえられてしまっては、兼任プレイの意味もないだろう。

「このプレイヤーネーム――まさか!?」

 帽子をデコピンでつば部分をはじき、少し浅い被りに変えた後――プレイヤーネームを2度見して驚いた。

そのネームは間違いなく、あの長門で間違いない。一体、いつの間にプレイを始めたのか?



 同日午前11時、それ以外にもネット上を騒がせるような事件が起こっていた。

それは、ある映画作品の聖地巡礼でマナーの悪い観光客が注目されたのだが――その犯人と報じられているファンと名乗る男性の正体は――。

【あの観光客として紹介されている人物は、どう考えてもアイドル投資家の一人。ブラックリストにも――】

【それを言っても無駄だろう。超有名アイドルの行う事は絶対正義というジンクスを破らない限りは――】

【そうした情報を拡散せる事自体も、芸能事務所側の営業妨害として警察に通報される。つまり――】

【超有名アイドルは、この世界におけるデウス・エクス・マキナと言う事か】

【この世界が超有名アイドルの宣伝材料に使われる為の世界だと言う事なのか? 第4の壁のアイドルが解散会見を行ったストレス解消や報復として――】

 さまざまなつぶやきがネット上で流れるのだが、該当するニュースのソースは何処にも存在しない。

それに加えて、かなり不可解なニュースであると感じている人物が存在し、その人物によると――。

「第4の壁で報じられているニュースを、あたかも自分達の世界で起こったニュースとして加工し、それを利用して超有名アイドルによるディストピアを確立させる――」

 このニュースを見て、ある不信感を抱いたのは飛龍丸ひりゅうまるだった。自分が似たような事を経験した事もあり、今回も同じ勢力の仕業なのでは――とも考える。

しかし、超有名アイドルによるディストピアは過去に何度か再現しようとした勢力がいるはずであり――それに対してのARゲーム運営の対策本部もザルではない。

本当に芸能事務所Aによる単独犯行なのか――気になる箇所も複数ある為、飛龍丸はメイド服から何時ものARアーマーに瞬時で装着する。

その後、近場にあったARゲーム用センターモニターからARゲームにエントリーする。そのタイトルは何と――。

《パワードミュージックへのエントリーを完了しました》

 何と、飛龍丸もパワードミュージックへ参戦していたのである。

アカウント自体は4月の上旬には取っていたのだが、襲撃事件の影響でプレイを躊躇している部分もあった。



 ほぼ同刻、一連のつぶやきに関するタイムラインを別所でチェックしていたのは、既にフル装備の大和朱音やまと・あかねである。

彼女がいたのは、草加駅近くのアンテナショップ、それも近隣にはファストファッションの店舗等もある通りに立っている店舗だ。

この店舗ではARFPSもプレイ可能であり、いわゆるARサバゲの聖地としても有名だ。

この店舗から、1キロ近辺にはARパルクールとパワードミュージックのアンテナショップもある。

「ネット神――貴様たちを探すのには少し苦労したが、転売グループや芸能事務所Bの脱税疑惑を探すよりは楽だったな」

 大和の目の前にいるのは、黒服の男性である。彼はネット神と呼ばれた事に対して『人違い』と否定をしている。

「人違いで、こちらを欺けるほど甘くはない。芸能事務所Aが、いかにも神にも匹敵するような力を持っているとネット上で情報操作しているのは、既に感知している」

「芸能事務所A等知らない! 芸能事務所BともCとも無関係だ!」

 大和の言葉に反応するかのようにテンプレ否定を続ける。しかし、そう言った状況になる事は大和も把握済みだ。

そして、転売屋勢力を一掃した時と同様に大型主砲を向けるのだが――周囲にギャラリーが集まってきたため、これを使うのは自分が逆に悪だと言う事をアピールしかねない。

「どうしても否定するのであれば、それもいいだろう。しかし、お前がARゲームの法律に反しているのであれば――話は別だ」

「なん……だと……!?」

 大和の発言を聞き、男性が急に武者ぶるいをしたかのように動揺を始める。

一体、彼はどのような法律に反したのだろうか?

「――度が過ぎた干渉はコンテンツの価値を大幅に落とす。貴様の行った印象操作は――特定コンテンツ業界に対し、10兆円規模の損害が出るクラスに相当する。つまり、そう言う事だ」

 大和は問答無用に大型主砲を含め、機関砲、副砲などを含めた全弾発射でネット神を沈黙させた。

沈黙と言っても存在を消滅させてしまってはARゲームのガイドラインに反する事となり、逆に大和が犯罪者となる。

「その力――アカシックレコードの奥底、第4の壁の技術を再現したと言うのか?」

 ネット神の方は全弾直撃のはずなのに、いまだ健在であり、気絶もしていない。

どうやら、直前でフィールドを展開して無効化したようだ。使用したのは大和と同様にARガジェットの技術だろう。

「第4の壁、その技術を使えば――貴様の方が逆に捕まる。その技術は――」

 ネット神は何かを大和に言おうとしていたのだが、それよりも速くバルカンファランクスで瞬時に気絶させた。

「それ以上を言わせる訳にはいかない。ARゲームは特定1社が独占していいような技術ではない。権利侵害を言うのであれば、お門違いだ」

 大和の方は若干焦っているように見えたが、それでも向こうがネットに拡散するよりは――と考えていた。

「あの技術は、異世界で言う魔法にも匹敵する技術と言われている以上――誰かが独占できるような物ではないのだ」

 この時の大和の目つきを確認する事は――出来なかった。逆に感情を出さないようにしている可能性も否定できない。



 午前12時、ネット神となのる詐欺師が逮捕されたというニュースは芸能界に衝撃を走らせるほどの規模だった。

どれ位衝撃なのかと言うと、ある民放局が通販番組で『高性能掃除機』を紹介している以外が、全て同じニュースを報道しているレベル。

ネット上ではネット神の逮捕に対し、『当然の報い』や『関係した芸能事務所が家宅捜索を何時受けるのか?』辺りがタイムラインを独占していると言えば――分かりやすいだろうか?

「ネット神――これも序章と言う事か。それ以上に強大な敵が――」

 自宅でテレビを見ながら、私服姿でやきそばを食べていたのは比叡ひえいアスカだった。

しかし、彼女はネット神と言われても大きく驚く事はない。それよりも強大な敵が控えているのを、彼女は知っていたからである。

「ネット神と言うのも自称と言う可能性が高いが――こればかりは詳細を確かめないと」

 比叡は何かを疑っていた。ネット神の正体、それ以外にもアカシックレコードとの関連性に関して。


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