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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード4『大和、出撃!』
39/137

エピソード4-3

2017年1月15日付:加筆調整


 午前12時25分、遠目で様子を見ていた島風朱音しまかぜ・あかねはパワードミュージックのスペースへと足を踏み入れるが――。

「また先客――?」

 数メートル位まで到達した所で、またしても先客が現れる。

しかし、よく見ると服装がアンテナショップの制服だった為、別のスタッフが配置されたらしい。

どうやら、島風の早とちりだったようだ。それを知った島風は、ほっと一息。ようやくお目当ての商品が買える――と言う様な安堵の表情を浮かべた。

「いらっしゃいませ」

 先ほどとは雰囲気も違う様な男性スタッフが島風の前に姿を見せる。

明らかに怪しいスタッフではないのだが――身構えてしまうのは仕様と言えるかもしれない。

その後、島風は色々なやり取りをしつつも何とかガジェットは買えたらしい。

 その値段は5000円程度。彼女は値切りをした訳ではなく、自身が軽装型ガジェットを選択した事による物だ。

重装備は自分でも動きにくいと試着して感じた一方で、パワードミュージックでは不向きとスタッフに言われたからである。

「軽装、重装で安全性に違いはありません。ただし、ARガジェットの重さと言う事を踏まえれば――重装備はスピード系には不向きですね」

 重装備に関しては、どちらかで言えばFPSやTPS向けであり、スピード系ARゲームには不向き――そう言及された。

その結果として島風は軽装型を購入した。そのデザインに関してはカスタマイズ自由――と言う事もあって、白い汎用スーツを渡されたも同然である。

コスプレイヤーとしては、カスタマイズ自由なガジェットの方が自分を表現するにもうってつけだろう。ただし、カスタマイズを自分で出来ればの話だが。



 同刻、長門ながとクリスが向かっていたのは、特殊な部屋である。しかし、長門には何度も見覚えのある光景なのは間違いない。

案内された部屋はARガジェットの試着室とも言える場所であり、ここでサイズの確認やアーマーのカスタマイズも行う。

しかし、 今回はパワードミュージック専用のガジェットと言う事もあって確認項目は他のARゲームよりも多めだ。

「なるほど――ここまでのカスタマイズが要求されるのか」

 長門が装備していたのは、ホバーブースターを装備した脚部アーマー、それ以外のアーマーはSFと言うよりはファンタジーの意匠に近い。

ARメットに関しては全体を覆うタイプなのだが、ユニコーンの角を思わせるような頭部アンテナ、ファンタジーの騎士を思わせる装飾が特徴だ。

ARガジェットは、リズムゲームのキーボードを思わせるようなシールドビットを6枚と特殊すぎる傾向がある。

ARガジェットに関しては男性スタッフも、ここまでの仕様を要求するケースはないと言う事らしいが――。

インナースーツのカラーはグレー系で、普段のARFPS等で使用している物とは違うようだ。

「ここまでのガジェットを揃えても、1万円を超えないとは――」

 高性能なガジェットは、その性能によっては1万円オーバーもザラである。

それに加えて、ジャンルによってはARガジェットとは別にカスタムアイテムで費用がかかる場合も――ソシャゲで言うガチャとまではいかないが、感覚としてはそちらに近い。

「しかし、ARゲームはガジェットの善し悪しや予算等で決まるものではない。無課金は不可能だが、最低限の投資だけでどれだけ楽しめるか――」

 長門は早速プレイしようと言う様な気分でいたのだが、それは無理だとスタッフに制止される。

『現在、パワードミュージックは登録制限が行われているようです。解除されない事には――』

 登録制限の原因は、一部ユーザーのチートプレイの様な物ではない。チートプレイが問題視されているARゲームは他にもあるからだ。

長門は自分でも登録制限の理由を考えた。人数制限で制限をかける作品もあるが、パワードミュージックの登録者数が100万人を突破した訳でもないように感じたからである。

チートを使用していないがモラルの欠けたプレイで怪我人が出た、違法なギャンブル、サクラが問題視、売名行為――他のARゲームではあり得そうなものばかり。

しかし、実際に聞いてみると違う理由だった。その理由を直接聞かされると、長門は別の意味で言葉を失ったと言う。

「――イースポーツ化を前に、様々なARゲームでガイドライン変更案が出ている噂は聞いていた。しかし、こういう輩が現れるとは――」

 この話を聞いた長門は、何としてもARゲームを快適にプレイ出来る環境を整える事が自分の使命だと感じていた。



 午前12時50分、アンテナショップのセンターモニターの前に陣取っていたのはローマだった。

モニターに流れるニュースに一喜一憂する様子は、他のプレイヤーにも察知され、中にはその動画を動画サイトにアップしようと言う人物もいた位。

しかし、それを行おうとしてもアンテナショップ内では出来ない理由があった。それは――。

「またあなた方ですか――」

 ローマが腕を掴んでいた人物、それはネット上でスクープ画像をSNSで拡散し、アフィリエイト系サイトに売り込むと言う勢力――いわゆるネット警察や悪目立ち勢力とも言える連中だった。

彼女の方は口調からは落ち着いているように見えるが、腕を掴む力は相当なものである。

本来ならば、ここまでの事をすればネット炎上は避けられない――と言うよりも、炎上するのが当然な流れだろう。

当然、それをローマも知っている上で――この行動に出た。

「貴様、そんな事をすればネットが炎上するぞ」

 既に決まり文句である。この男性は、発言をした段階で負けフラグを立ててしまったと言えなくもない。

別の男性はこの様子を動画にして拡散しようとしたが、やはりジャミングでスマホが使用できない状態だ。

ジャミングと言うよりは、特定エリア以外ではスマホが使えないという可能性も高いが――彼は確認すらしなかったのである。

「ここはARゲームのフィールド――貴方達では勝ち目はないわ」

 ローマの腕を掴む握力が上がっているような錯覚を男性の方が感じ、男性の方は悲鳴を上げる。

しかし、その悲鳴を聞いて駆けつけるような様子もなければ――周囲のギャラリーが加勢する事もない。一体、どういう事か?

「言い忘れていたけど、ARフィールドを展開した以上は、ARガジェット以外の通信機器はジャミングで使用不能よ――」

 ローマから告げられた事実、それは彼らにとっては寝耳に水であった。

それに気付かず、アンテナショップで動画を撮影しようとしたからである。自滅をしたのは、男性の方だったのだ。

最終的には駆けつけたガーディアンに引き渡され、ネット炎上を狙った人物の野望は阻止されたが――。



 午後3時、大和朱音やまと・あかねは思い当たる場所を手当たり次第調査していた。

その目的はアカシックレコードである。しかし、決定打となるような情報は発見できない状況でもあった。

1人で調べるには限界がある――そう感じるのは間違いないだろう。

アカシックレコードとは、それだけ大規模な存在であり、創作作品では神にも匹敵すると言及される存在でもあるからだ。

「アカシックレコードが神に匹敵するのは、何度も言及されて来たが――それを見つけるにも、ここまで苦労するのか」

 大和はアカシックレコードを単独で発見しようと考えていた。それも運営側などに相談する事無く。

そうしなければいけないのには、理由が存在する。それは――アカシックレコードの悪用による事件だった。

過去に起こったネット炎上に関係した事件はアカシックレコードを誤った使い方――それが原因と言う結論が大多数である。

この報道が下手に電波へ――となれば、地球全土が火の海になりかねない。一部の過激派であれば、そう発言するかもしれないだろう。


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