表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード3『比叡、出撃へ』
32/137

エピソード3-6

2017年1月13日:加筆調整


 4月15日午前10時43分、比叡ひえいアスカが向かう予定のコースにスタンバイしていたプレイヤーがいた。

カラーリングが金色というARアーマーは、本当に金で出来ていると思わせるような質感を持っている。

デザイン自体は1990年代アニメ等で使い古されているような物だが、完成度は汎用と比べると非常に細かいし、仕事も行き届いていた。

装飾が派手なだけでアーマーとしての機能は汎用に劣る物も一部存在するが、こちらには特に確認されていない。

それとは別にスタンバイをしていた人物は、黄金のアーマーとは対照的に銀色のアーマーを装備している。

デザインは2000年代のゲーム作品辺りを周到しているのだろうか?

プレイヤーのランクとしてはプレイ回数が50回に満たない程度ではあるものの、実力に関してはそこそこあるようだ。

「お互いにARゲームの経験者と聞くが――彼らが一連の事件に関係しているのか?」

 改造軍服タイプのインナースーツを着たまま、コーヒーを片手にファストフード店の窓から様子を見ていたのはビスマルクである。

【以前にも芸能事務所Bや芸能事務所Cが結託して特定コンテンツを潰そうと、フジョシ勢力を利用していた事件もあったが――】

【芸能人がARゲームをプレイする事は出来ないというガイドラインがあったような気もした】

【芸能事務所とマスコミが手を組み、芸能事務所Aのアイドルグループ以外を排除しようとする――某長時間生放送の番組が炎上した件も、芸能事務所Aのシナリオと言う話がある】

【だとすれば、芸能事務所Aがクールジャパンの本命で、超有名アイドルでありとあらゆる紛争をこの世からなくすとでもいうのか?】

【それこそ、Web小説でランキングを独占するようなチート無双や俺TUEEEE――悪役令嬢のテンプレじゃないのか?】

【別の小説サイトでは、フジョシ向けの二次創作夢小説が独占していると聞く。チート無双等は全く見ないな】

【こうした動きを感知し、芸能事務所Aは自分達に敵対するコンテンツを炎上させていき、自分達の領土を拡大させていき――この世界だけでなく、第四の壁の世界への進出も辞さない】

【まさに、正しい意味での害悪だろう。芸能事務所Aのチートとも言えるような無双展開は他のコンテンツ作品の進出を明らかに妨害している】

 ネット上のタイムラインをタブレット端末で閲覧しているが、これもアカシックレコードのコピペと言える物であり、自分達の言葉で話をしていない。

今回の彼女の目的、それは――芸能事務所Aの無双展開を手助けするアイドル投資家と言われる勢力を完全駆逐する事である。

しかし、それも芸能事務所Bや芸能事務所Cが望む展開だと考えると、他人に操られているようで乗り気がしない。

「自分の目的は――人から言われて指示されたものじゃない。他人が気にしていている一方で、動かなかったのはあるかもしれないが」

 しかし、ビスマルクは他人から操られて行動している事だけは否定する。

他人が行動を起こそうとしても、彼らは本格的に起こせなかった――と言う部分までは否定しきれない。

Web小説の作品でも、他人が既に開拓しているようなジャンルではなく新たなジャンルに挑戦しようと言う人物は多いのだが――実際は、そのジャンルも他人が開拓していたというパターンは多いだろう。

二次創作小説で流行りものに便乗し、大量にランキングを独占するような開き直ったパターンもあるが――。



 午前10時45分、アンテナショップで電子マネーのチャージを行い、何とかプレイには間に合った比叡ひえいアスカは――アーマーを装備したままでスタートラインまで走っていた。

ARアーマーを装着しても警察などに呼び止められる事がなかった事に対し、比叡は違和感を持ったのだが――それがARゲームで町おこしをしようと言う草加市の対応と言う事で、一応は納得する。

実際は草加市でもARゲームを悪用して犯罪に利用しようと言うのであれば――警察も容赦はしないのだが。

ARゲームに関係した取り締まりはARガーディアンが行っているのが正しいのかもしれない。桶は桶屋の理論である。

「比叡アスカ――そう言えば、別のリズムゲームでネームを見た事がある」

「彼女の実力は相当なものだ。段位認定等は受けていない事もあって、無冠の帝王と呼ばれているな」

「上位クラスの段位に縁がないのか?」

「それは無冠の帝王の誤用だ。彼女の場合は、本当に段位認定は受けていない。下手をすれば十段相当とまで言われている」

「十段? それこそありえないだろう。確かに彼女のプレイした譜面のスコアは初見フルコンボ――低レベル譜面に集中しているが、そこまでの実力とは思えない」

「リズムゲームは単純にゲーム中の段位やクラス、ランクという物差しだけで測れない物を持っている人物もいる――と言う事だ」

 ギャラリーからは比叡に関する話が出ているのだが、それを彼女は全く聞いていない。

ヘッドフォンの爆音で聞こえないというわけでなく、ARバイザーのノイズキャンセラーによる物である。

リズムゲームでは楽曲が聞こえにくい事でスコアが伸びないという話は、よくある話で――それはARリズムゲームでも事情は変わらない。

緊急車両のサイレン等の非常用、ある一定の環境音はノイズキャンセラーでもキャンセルしきれないと言うよりも、そこまでキャンセルすると危険だと言う話もある。

この辺りはARゲーム依存症やトランスのし過ぎによる体調不良等に発展するが、そこまでネット上で言及するような動きは見られない。

芸能事務所側も、これに言及すれば地雷を踏む事になると考えているのか――その辺りの詳細は不明だ。

しかし、近年はARゲームにも違法なギャンブル要素を加えて裏で展開されているという話もあり、ギャンブル依存症と言う点から、警察が警戒をしている噂もあった。



 午前10時47分、3人がスタートラインの所定配置に付く。

レースゲームと違って、ポールポジションを取ったとしても有利とは限らない。

だからと言って、自分に有利な楽曲で楽にクリアできる事もないだろう。リズムゲームには、楽をしてクリアすると言う攻略法が確立されていないのだ。

逆に慢心をする事で思わぬミスを発生させてしまうプレイヤーは非常に多い。それもリズムゲームの宿命だろう。

RPGのように攻略本片手でクリアできる程にARゲームは簡単なゲームではない。攻略法はウィキで記載されているジャンルもあれば、開拓されていないジャンルも存在する。

「楽曲的には――こんな感じか」

 ビスマルクはARガジェットで近場で観戦できるはずのレースを、ファストフード店で見ているのは理由があった。

彼女の目的は下手に周囲へ悟られてはいけないという点が存在する為――自分が姿を見せたことで、ネット炎上や風評被害と紐付けられるのを恐れた為である。

しかし、アイオワの時には姿を見せてしまったが――あの時はマッチング的な都合もあって、不可抗力とも言えなくもない。

稀に想定外の芸能事務所関係者、他ジャンルの襲撃者等もいるのだが、こればかりは予防線のはりようもなかった。

「レベル4、レベル6、レベル5――どういう順序で演奏するかで、展開も変わる可能性が高いのか」

 誰が選曲したのかは不明だが、譜面レベルは4、5、6と順番通りとまでとはいかない物の、うまい具合にバラけていた。

下手に高難易度譜面ばかりしか選ばないようであれば――リズムゲームでも高難易度譜面が原因でインフレと言う物が進み、それが原因で様々な事件が起こった事もある。

ただし、ネット上で事件と位置付けて、超有名アイドルコンテンツを目立たせる為のかませ犬に仕立てるという説もあり、この辺りは色々と不明な部分が多い。

こうした事例等はアカシックレコードで調べる事も可能だが、それらを全て鵜呑みにしてしまえば、自分自身の言葉で意見が言えなくなるだろう。

下手にネットだけを信じないでいると、現実世界の出来事に関して関心が持てなくなる――という弊害だろうか。

現実と架空世界――その壁を打ち破ろうと言うARゲームも開発されているのだが、それがパワードミュージックなのかと言われると――疑問が残るだろうか。

「ARゲームは、異空間で行われるような異能力バトルとも違う。あくまでも、ARゲームはゲームあってデスゲームではない――」

 何度も使われているようなフレーズではあるが、ARゲームは命を賭けるような闇のゲームやデスゲームではない。

それを百も承知の上でビスマルクもARゲームをプレイしているのだ。現実と架空世界の境界線――それがARゲームの特殊環境と言えるのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ