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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード2『ビスマルク、始動』
26/137

エピソード2-10

2017年1月11日付:加筆調整

 4月13日午前10時51分、トルネードは慎重すぎたのがスコアの低い原因ではなかった。

それは、彼が使用しているガジェットがショットガンだったという事にある。ショットガンは射程が低いが、有効範囲が広いという点を持つ。

有効範囲が広いというのはアクション系等では敵に囲まれた際に有効な一方で、リズムゲームでは本来の演奏順とは違うノーツに当ててしまう可能性があり、誤爆や暴発の危険性も持っている。

リズムゲームによっては全押しという技も存在するのだが、ARリズムゲームでは有効ではないという事の証明かもしれない。

ホーミング兵器と言う初心者救済に近いようなガジェットもあるのだが、パワードミュージックでは数が少なく、それを扱うプレイヤーも少ない状態だ。

その理由の一つとして、ハイスコアの問題がある。ホーミング兵器の場合は入手スコアに補正がかかり、スコアが低くなる傾向があるからだ。

【リズムゲームと言うのはノーツを順番通りに押す物なのか?】

【順番通りに押すと言うよりは――流れてくるノーツを受け止める的な感じだろう】

【それをリズム通りに押すのか】

【そうなるだろうな】

【難易度が上昇すれば、それだけノーツの数も増えてくる。だからこそ――リズムゲームは格闘ゲーム等よりも難しいと感じる事がある】

【百の鉄砲数撃てば当たる――と言う様な戦法は不可能だからな】

【どのジャンルでも、戦略もないようなガチャプレイが通じるのは初心者同士の対戦に限られる――とはよく言った物だ】

 つぶやきサイト上では、トルネードがショットガンを使っている事に対して失策だったというつぶやきも見られる。

しかし、有効的に使用出来るプレイヤーもいる為か、トルネードが使いこなせていないという可能性の方が高い。

パワードミュージックのシステムでリズムゲームを思わせる要素は、使用するコントローラーでゲームフィールドに出現するノーツを叩く――その部分だけと言うのはネット上でも有名だ。

実際、彼らの使用するARガジェットは形状こそ武器に見えるのだが、攻撃手段はノーツを消滅させる事だけである。

使用するガジェットによっては叩く、接触、ノーツを通過――と言った行動でも認識されているようだが、リズムを外せばミス扱いとなってスコアにはカウントされない。

ゲームフィールドの外ではノーツが発生しないのだが、他のARゲームをプレイしているプレイヤーのフィールドに入りこむという可能性も懸念されていた。

しかし、そうした事が起きないようにサーバー強化を行う等の対策を行っているようだが、そうした裏方部分が大きく報道される事はない。

「ショットガンなら暴発や誤爆の可能性も高い――慎重になっているのは、その為か」

 確実に白いノーツを撃破していくアイオワにとっては、トルネードの戦略は関係ないと言ってもよかった――。

スコア的にはトルネードよりリードしているような状況である為、そこに注目する必要性もなかった為である。



 むしろ――高難易度譜面等の炎上を誘う様な部分のみをピックアップし、超有名アイドルコンテンツを押し上げようと言う広告会社や芸能事務所の戦略に利用される。

とある芸能人が逮捕され、それだけがニュースで取り上げられると、その話題が続くという話もあり――番組差し替え等で逆に超有名アイドルコンテンツが無料で貸し出され、神対応と言われるように――。

【結局、超有名アイドルを神話にしようと言う勢力によるネット炎上に利用されるのか――アカシックレコードに書かれている通りに】

 この書き込みに対し、同調しようと言うユーザーは多かったが、下手に芸能事務所から言論弾圧を受ける事を避けるため、敢えてスルーされているようにも見える。

結局、超有名アイドルの芸能事務所Aがデウス・エクス・マキナになろうとしている事を訴えても――それはねつ造であると炎上する。

逆に何も言わないでスルーを続けようとすると、このコンテンツ流通がグレーゾーンなのではないか、と他の勢力が訴えると言う展開になっていた。

「結局は、繰り返そうと言うのか――テンプレと言われようと、超有名アイドルの神コンテンツ化計画を」

 一連のネットニュースをインターネット上の記事で確認し、ARガジェットで情報整理をしていた人物――それは意外な事に天津風あまつかぜいのりだった。

彼女は超有名アイドルの神コンテンツ化をアカシックレコード経由で知った。

超有名アイドルが神コンテンツと疑わず、彼らがやっている違法行為さえも有名無罪として許される世界――それを天津風は認めたくなかったのである。

それを認めてしまえば、ネット炎上がリアル空間でも展開される事になり、それこそデスゲームの引き金にもなりかねない。

天津風は――それが発生する事を最終戦争ラグナロクと考えた。ネット上でも似たような考えの人物は、0人と言う訳ではなく――ごく少数で考えを共通化しているようだ。


 

 午前10時52分、楽曲の終盤でBPMが急に上昇したかのように、出現するノーツの速度が上昇する。

この難関に対してアイオワは正面に立ち向かう。高速で現れるノーツをピンポイントでナックルで叩く姿は、AR対戦格闘で一撃必殺を決める姿と変わらなかった。

「見えていない――というわけでもなさそうだが」

 ビスマルクにも高速ノーツは見えており、自分の周囲に現れるノーツを特殊形状のレールガンで打ち抜いて行く。

ただし、このレールガンは引き金を引くような形式ではなく、ターゲットロックから発射までのシークエンス全てがリズムゲームのそれである。

「まるで、この感触は――アガートラーム?」

 アイオワは、ある違和感を感じていた。的確にノートを叩く事が出来る事に対し、AR対戦格闘でも体感した現象と似ていたのである。

ARガジェットと100%シンクロと言う現象は、ネット上でもあり得ないと否定されているのだが――。

彼女のプレイは、まるで周囲がハードモードでプレイしているのに対し、自分だけがイージーモードになっているような感覚さえ覚える。

そして、アイオワはその現象を違法ガジェットやツールを使うプレイヤーに対しての制裁――アガートラームの使用している時の感覚に似ていた。

「アガートラーム――アカシックレコードにも記載のあった、あのガジェットか?」

 ビスマルクもアガートラームは若干かじった程度で知っていたが、詳細はくわしく知らない。

ただし、それは他のWeb小説でも記載されていた解説等の範囲での話であり――現実化したアガートラームとは別物と言う可能性は高いのだが。



 午前11時、3曲が終了しての結果がメインモニターに表示されたのだが――1位となったのはビスマルクだった。

アイオワは全曲をフルコンボでクリアしたのだが、スコアとしてはビスマルクに及ばなかったのである。

トルネードに関しては3曲目の段階で演奏失敗となり、リタイアとなった。これがアガートラームの影響なのかは分かっていない。

「トルネード、あなたの正体は――」

 ビスマルクは何かを察するかの表情でトルネードをにらみつけるのだが、次の瞬間にはアイオワがアガートラームで有無を言わさずにクリティカルヒットを決めていた。

アガートラームでARガジェットにクリティカルする理由、それは一つしかない。トルネードが使用していたガジェットがチートであることの証明だ。

アイオワの一撃を受けたARメットに亀裂が入り、CG映像が消滅したと同時に見せたその正体は――イースポーツ反対派の男性プレイヤーだったのである。

アイオワは顔を見た事がなかった人物だが、ビスマルクの方は逆に覚えがあった。

何故、彼がトルネードと言うアイドルグループの名前を連想させるような名称を使ったのか――疑問が残る部分も存在する。

「ビスマルク――! お前は、いずれ後悔するだろう。日本のコンテンツは超有名アイドル以外はかませ犬の役割でしか存在しない事を――」

 その後、反対派プレイヤーはガーディアンに拘束される事になった。



 4月14日、今回の一件を受けてイースポーツ反対派は活動規模を縮小させていった。

アイオワを甘く見ていたという認識もあるかもしれないが、彼女の運動能力は普通のゲーマーと言う認識ではなかったのである。

賞金制度反対派もアイオワを見くびった事に対し、責任を取らされるような形で解散となった。

実際、それ以外にもまとめサイトや悪目立ち勢力が炎上させたというのもあるが――それを下手に言及する事はなかったと言う。

今回の炎上勢力やまとめサイトの動きに対し、ARゲーム運営側も魔女狩りとも言えるような強行手段を使わざるを得なくなっていた。

この行動は、後にさまざまな勢力を生み出すような結果となり、ある意味でも炎上マーケティングと例えられてもおかしくないのは間違いないだろう。



 午前12時30分、この炎上と言う動きを機械仕掛けの神とも言えるような行動で拡散を止めた人物がいた。

彼女はファストフード店でコーラを片手にタブレット端末型のARガジェットを使いこなしている。

その動きは、異世界転生してチート能力を得たような位――そう例えてもおかしくはないだろう。

「君達は知り過ぎたと言うべきか――超有名アイドルに例えられるような偽りの神を、唯一コンテンツ神にするような傾向は――」

 身長180センチの巨乳、肩くらいの黒髪ロングヘアに眼鏡をしているが――ARバイザー乃可能性が高く、伊達眼鏡だろうか。

下に着ているのがスクール水着型のインナースーツと言う事もあり、それを隠すような上着を着ている。

さすがにスカートは穿けないので、下はズボンだが――。この外見でも、周囲が指摘するような事はなく――そのまま食事を取っていた。

彼女の名は明石零あかし・ぜろ、使用したATガジェットはアイオワと同様にアガートラームのようにも見える。

「ネット炎上勢力は――この世界では破壊行為と同然。ネット炎上は犯罪であると認識させなくてはいけないの――コンテンツ流通を正常化させる為にも」

 明石は別に何かを考えているようでもあったが、視線の先にあるのはパワードミュージックのポスターだった。

「これからだ。コンテンツ流通は切磋琢磨するタイプが理想であり、唯一神やデウス・エクス・マキナによるご都合主義は――」

 他に何か言いたそうな表情だったが、ポテトをつまみながらポスターの方に視線を向けたまま、情報整理を続けていた。

一体、彼女は何を知っていて行動をしているのだろうか?


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