表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード2『ビスマルク、始動』
21/137

エピソード2-5

2017年1月9日付:加筆調整

 4月13日午前10時38分、アイオワと相手プレイヤーの対決は、唐突な乱入者の出現で10人のフルマッチで行われる事になった。

これによって楽曲に関しては選び直しとなり、改めてレースのスタートも仕切り直しとなる。

「1対1じゃなかったのか?」

「フルマッチは逆に見物だが――これでは水を差されたと言っても過言ではない」

「一体、どうなるのか?」

「あの構図だとモブ7人を1名が連れてきた構図に見えるが」

「違うな。実際は、1名の乱入と同時に7人が同タイミングで乱入したと見るべきだ」

「つまり、相手プレイヤーは8人のモブプレイヤーと組んで1名を潰そうとしたと言うのか?」

「そんな集団暴行みたいな展開――許されるのか?」

「FPSやアクション系だと八百長を誘発するとして禁止事項だが――パワードミュージックでは特に禁止されていないらしい」

 周囲のギャラリーも唐突な乱入者には驚く。しかし、それとは別にさらりと衝撃的な発言も飛び出していたのである。

その衝撃発言とは、ビスマルクと7人のモブに接点がないという事だ。ビスマルクも周囲のモブに関しては面識が全くない。

「このレースをややこしくするな――」

 ビスマルクの方は、自分が乱入した事でモブの7人が乱入したと考えていたが――実は、最初から8人で乱入しようと計画されていたらしいのである。

実際、ビスマルクの乱入は相手プレイヤーの想定外であり、1名が乱入からはじかれた事も計画が狂っていることの証明だった。

ビスマルクは自分目当てと考えている部分もあるが、向こうは最初からアイオワ狙いである。

『こちらの想定外とも言える人物が乱入してきた』

『しかし、ビスマルクはアイオワを味方とは認識していないようだ。マーカーの色もアイオワとビスマルクでは違う色になっている』

『これは逆にチャンスと見るべきか? ビスマルクに便乗しているように装えば――』

『それをやれば、逆に怪しまれる。ここは計画通りに進めるべきだろう』

『計画? アイオワを潰す事か?』

『アイオワを潰せば、別のARゲームで報復も考えられる。八百長で向こうに1位を取らせればいい』

『それだと計画と違うように思えるが――』 

 モブ7人の方は最初に指示されていた計画とは違う計画も考えていた。

それは、アイオワに1位を取らせて八百長を仕組まれていたとネット上で書きこむ事である。

これがうまくいけばARゲームは風評被害で評判を落とし、超有名アイドルへお金を消費してくれると考えていた。

つまり、彼らは超有名アイドルを神コンテンツにしようと言う勢力のメンバーであると――。



 同刻、このレースを見学していた人物がいた。それは、サングラスに普段と違う私服でお忍びであると偽装している長門ながとクリスである。

彼女としてはARゲームのイースポーツ化には反対はしていない。それが時代の流れと言うのであれば。

しかし、1ジャンルだけで勝ち抜く事も難しくなっている為、比較的に強豪プレイヤーが少ないARゲームがないか探していたのだ。

「アレが――ビスマルクか」

 タブレット端末部分を取り外したARガジェットでプレイヤーデータを確認すると、そこにはビスマルクのデータが表示されているのだが――。

「プレイ回数は――3回!?」

 長門も思わず驚きを隠せないでいた。何と、ビスマルクはパワードミュージックを初めて3回という始めたてとも言うべき状態なのだ。

それなのに、彼女のレベルは5と言う展開には驚きを隠せない。一体、どのようなレベル稼ぎをしたのか。

「パワードミュージックのレベル表記は、RPGで言う様なレベルとは違う。クリア可能な譜面レベルの平均値と言うべきか」

 長門の隣に姿を見せたのは、メイド服にARメットで素顔を隠した天津風あまつかぜいのりだった。

彼女もレースに関しては見物する予定はなかったのだが、ビスマルクの姿を発見して見学しようと考えたのである。

「最大レベルで、どの位だ?」

「最大で15――ARFPSやARTPS、それに別のARゲームで1万を超えるようなレベルも設定されている作品からすると、インフレはしていないだろう」

「15?」

「リズムゲームであれば、段位認定と言う物や称号をレベル代わりにしている物もある。RPGと同じ認識でレベルを計算していると、周囲から冷たい目で見られる可能性が高い」

 長門はタンブラーに入ったアイスコーヒーを飲みながら観戦をしているのに対し、天津風はメットをしている関係で何も口にしていない。

ARゲームでは観戦スタイルは自由であり、飲食をしながらの観戦も可能だ。中には自前で実況をしてしまう人間もいるようだが。

「パワードミュージックがリズムゲームであって、リズムゲームではないと言われる理由を知っているか?」

 天津風の質問に対し、長門は答えられずにいる。普通に楽器を演奏するようなゲームとは違う位の認識しかないからだ。

「リアルでは道路交通法等の関係で出来ないようなパフォーマンスを、ARゲームと言うフィールドで可能にした物がパワードミュージック――という答えでも、100点ではないがな」

 天津風が長門に見せたのは、パワードミュージックの公式サイトを表示したタブレット端末だ。

他にもパワードミュージックのルールなども書かれており、ここを読めばある程度は把握できる仕組みになっている。

「取扱説明書を読まないでゲームに挑もうとすれば――大怪我をしかねないだろう」

「ARゲームでマニュアルを読まないでプレイするジャンルなんて、せいぜい脱衣麻雀やアダルト系カードゲーム、それに古代ARゲームをモチーフにした物――」

「それでも、最低限のガイドラインを読ませるジャンルがあるのは当然存在する。それさえチェックすれば問題ないと思いこみ――怪我をする人間だっている」

「フィールド外の交通事故か――」

 長門も天津風の話を聞き、大体は察する事が出来た。ARゲームフィールド外で起こるような不測の事態、交通事故――その部類である。

ARゲームはゲーセンにあるようなビデオゲーム等とは大きく違う。体感型ゲームでも怪我をするようなプレイを禁止する作品もある。

しかし、ARゲームはそれ以上に大怪我をする可能性――それも病院へお世話になるようなレベルで存在していた。

「デスゲームは禁止しているが、ARゲームで起こる不測の事態までは完全フォローできない。それが起きないようにするのが――ARガジェットの人命保護システム」

 天津風は、ふとつぶやくのだが――それを長門が聞いていたのかは定かではない。



 一方、今回のレースに乱入したプレイヤーを見て不安を感じている勢力がいた。

それはARゲームガーディアンのメンバー、彼らは超有名アイドルファンがCD購入の宣伝活動でARゲームを利用しているという情報を得ていたからである。

過去にも同じような事例は何度も報告されているのだが、その度に改善する事を告知し、調整案を出してきた。

しかし、その調整案が出された後でも同じような事が繰り返されていたのである。

結局は調整案とは名ばかりのもので、芸能事務所の怒りを買わないようにしているだけなのでは――とも。

その段階で何者かの細工がされていた可能性も否定できないのだが、当時は調整案が出された事、それによって数週間は安定した事で裏を灯篭とはしなかったのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ