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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード2『ビスマルク、始動』
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エピソード2-3

2017年1月8日付:加筆調整



 4月13日午前10時10分、アイオワは男性スタッフが見本として持参したARガジェットを品定めしていた。

その形状はリズムゲームのコントローラにも類似しているようにも思える。

DJのターンテーブルや鍵盤等が加えられたデザインは、あの作品を連想させるような――そう言った気配も感じ取っていた。

ARガジェットに共通したモニター部分は、そのまま存在するが――AR対戦格闘やARFPSで使う様なガジェットとは違いすぎる。

腕に装着するタイプとメット一体型タイプ、手持ちタイプの3種類が大きく存在するARガジェットだが、その中でもARリズムゲームでは使用する作品によってガジェットデザインが異なるのだ。

まるで、現実世界のリズムゲームでコントローラが違うのと同じ現象が、ARゲームでも起こっていると言ってもいい。

それでも種類が1機種につき1パターン存在し、それが無数に――と言う訳ではないが、唯一の救いだろう。

類似のARゲームであれば、ガジェットは共通して使用出来るARFPSAR格闘等と同じパターンになっていた。

「ARガジェットは基本的に汎用システムを使っているので、特定ガジェットだけ使用不能と言う事はありませんが――」

 男性スタッフは所持しているARガジェットでプレイする事自体は可能であると助言する。

しかし、その一方で彼は――。

「ARリズムゲーム、それもパワードミュージックを含めた特定作品ではARリズムゲーム用のコントローラを使うプレイヤーが多いのも事実です」

 どうやら、キー入力のタイミング等が汎用のARガジェットとARリズムゲーム専用で微妙に違うのだと言うらしい。

汎用ARガジェットでもプレイに関しては問題ない一方、ARリズムゲームで専用ガジェットを使うプレイヤーと言うのは後を絶たない――との事。

ARガジェットを複数持つのは特に禁止されていないが――アカウントに関しては複数所持が禁止されている。

実際、ARFPS専用とARTPS専用でガジェットを所持するビスマルクの様な前例も存在していた。

禁止されているのは、あくまでも違法ガジェットやチート行為、不正ツールの使用、複数アカウント所持等のケースに限定される。

特に複数アカウントやチート行為はイースポーツ化と共に強化されている傾向だ。

「ARガジェットは5000円程の値段がすると言う話を聞いた事がある。このガジェットはテスト品を譲ってもらった物だが――」

 アイオワが男性スタッフに見せた銃型の特殊形状ガジェット、それは過去にARゲームのロケテストで使用していた物である。

男性スタッフはアイオワのガジェットを見て驚きの声をあげるのだが、それ以外の反応は薄かった。

「このガジェットでしたら、値段は――」

 男性スタッフが電卓を持参し、そこで打ち込んだ値段を見てアイオワは驚きのあまりに声が出なかった。

【¥4500】

 その値段は税込みで4500円である。インナースーツを所持済、アカウントも既に持っている事もあっての値段らしい。

インナースーツはレンタルと言う選択肢もあるが、大抵は購入と言うケースが多いらしい。こちらの値段はサイズによって異なるが、Mサイズで1000円辺りである。

アカウントに関しては自分で登録をする場合は無料だが、アンテナショップでエントリー依頼をすると500円かかるらしい。

これらの値段は全て税込なので、特に高いと感じるかどうかはプレイヤーにゆだねられる。お試しプレイであれば、スーツレンタルを利用すれば問題はないが――。

「現金の持ち合わせがないから、支払いはこっちでお願い」

 アイオワが取りだしたのは、先ほどのARガジェットではなく、小型の端末を思わせるプレートである。

それを受け取った男性スタッフは、手慣れた動きで受付テーブルの隣にあったスマホの充電器を思わせる装置にプレートを差しこむ。

【4500ARPを消費して、ガジェットを購入します。よろしいですか?】

 小型端末に表示されたメッセージ、それは電子マネーの表示だった。どうやら、ARゲームをプレイするのは現金以外にも電子マネーがあるらしい。

メッセージの指示に従い、アイオワは『YES』のボタンをタッチしてガジェットを購入する。

「これも時代の流れって事かな」

 電子マネーで支払うゲームと言うのは一部で存在はしていたが、ここまで発展するとはアイオワの方も驚くしかなかった。

技術の進歩は、ARゲームだけでなくさまざまな作品で技術革新とも言えるような新技術やシステムを生み出している。



 午前10時20分、昨日の一件が引き金になったのかは不明だが、ネット上ではARゲームのイースポーツ化に反対する動きが出始めていた。

その理由の一つは賞金額の少なさだったが、それ以上に理由として挙げられたのは――。

【今回の炎上騒ぎに便乗し、アフィリエイト系まとめサイト等で解散したアイドルグループのCD購買運動が起こっている】

【やはり、犯人はアイドル投資家だったのか?】

【あるいは、アイドル投資家と見せかけて潰しあいを演出しようとしている可能性もある】

【おそらくは夢小説勢やフジョシ勢だろうな】

【しかし、夢小説勢は超有名アイドルの夢小説を送りつけたことで――】

【それは別の勢力が送りつけただけだろう。アイドル投資家がブランドイメージを傷つけている勢力を魔女狩りする為に】

【だとすれば、今回のARゲームに対しての行動は明らかにとばっちりじゃないのか?】

【あるいは、風評被害で超有名アイドルを神コンテンツにしようと言う動きかもしれない】

 つぶやきサイト上は、炎上に近い状態にまでなっている。その原因は何時ものと言わんばかりのまとめサイト等の煽り記事だろう。

どのような内容が書かれていたのかは記事の方が削除されていて確認をする事が出来ないのだが――。

「なるほど――そう言う事なのね」

 タイムラインやまとめサイトを調べていたのは、天津風あまつかぜいのりである。

彼女は既に別所で行動をしているのだが、その合間に情報収集をしていた。何故、彼女はネット炎上に関係するような記事ばかりを調べているのか。

「何故に人は、炎上マーケティングと言う物をしたがるのか。そして、チート認定されている超有名アイドル商法を放置するのか」

 天津風は炎上マーケティングが、いわゆるチートである事を認識していた。だからこそ、不正をしてまで利益を上げようと言う考え方には理解に苦しんでいる。

炎上マーケティングその物を政府で禁止に出来ればよいのだが、それに全く触れないという事は――。




 午前10時25分、アンテナショップから出たアイオワの前に姿を見せたのは――昨日とは違うイースポーツ反対派の人物だった。

反対派と言っても、昨日の人物と無関係な訳ではなく、同一の組織に所属しているのは間違いないだろう。

昨日の人物が報復に来ると思っただけに、アイオワの方も若干呆れているようだが。

余談ではあるが、昨日の人物はアイオワに素顔を見られたから姿を見せていない――という訳ではない。

「貴様がアイオワか――」

 サングラスで素顔を隠し、服装も背広と言うよりはマフィア等を連想するような服――明らかに敵意むき出しである。

それに加え、周囲の客は別のエリアへと避難しているという位には、彼らの行動が周囲に恐怖を与えているのかがよく分かるだろう。

しかし、埼玉県内にリアルマフィアと言われるような職業は完全に排除されている。

今は彼らの位置に存在するのが、過激思想のアイドル投資家やフジョシ勢力と言ったような存在だった。

「何か因縁を付けられるような事でもあったかしら? リアルマフィアなんて、絶滅危惧種――」

「我々はリアルマフィアではない! 超有名アイドルの芸能事務所と組んでコンテンツ流通を妨害しているような連中とは関係ない」

 彼らがリアルマフィアとは違うと言うが、アイオワは若干信用できないでいた。

リアルマフィアとは、俗にいうジャパニーズマフィアである。

他の都道府県では普通にネット上でも問題なく使われているが、埼玉県内では何故か使われていない。

ネット上でもその単語が検閲されると言う訳ではないのだが、警察もつぶやきサイトを閲覧している事もあって最低でも埼玉県内ではリアルマフィアと言うようになった。

裏事情に関しては、向こうも知っているし――当然のことだが、アイオワも知っている。

「誰が芸能事務所とリアルマフィアが絡んでいるという――二流週刊誌以下の夢小説みたいな妄言を信じると言うの?」

 向こうが芸能事務所と関係ないと言った為か、咄嗟にアイオワはある事件を否定する。

その言葉を聞いてかは知らないが、周囲にいた黒服のモブがハンドガンをアイオワに向けるが、これはARFPSで使用するハンドガンであり、実弾を撃つタイプではない。

「こちらもお前が言う様な夢小説と言う発言を信じる気はない。それこそ、ヴィジュアル系バンドや実況者等の夢小説を書いている連中の妄言だ!」

 次の瞬間、サングラスの人物も周囲のモブと同じハンドガンを構え、引き金を引いた。

しかし、その銃から銃弾が放たれる事はなかったのである。何故かと言うと――。

【フィールド外戦闘を確認しました】

 モブ連中の装着しているサングラスにはARバイザーで使われるシステムが搭載されており、そこに警告メッセージが表示された。

アイオワはARガジェットを構える行動もしていなければ、ARウェポンも持っていない。つまり、アイオワは丸腰状態だったのである。

それが影響し、丸腰のARゲームプレイヤーを攻撃しようと言う彼らの行動は、警告に相当すると判断されたようだ。

「ここは戦闘禁止フィールドだ。仮にそれを何らかの手段で解除したとしても――丸腰のARプレーヤーに攻撃を仕掛けようとすれば、警告メッセージが出る」

 完全にアイオワのペースになっていた。向こうが作戦ミスで銃を構えた段階で、勝負は決まっていたのだろう。

「こうなったら――これで勝負だ!」

 サングラスの人物が指差した先にあるのは、パワードミュージックのアンテナショップだった。

つまり、パワードミュージックで勝負をしようと言うのである。

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