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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード1『比叡、エントリー』
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エピソード1-9

2017年1月3日付:加筆調整

 4月11日午前10時20分、この日も晴天であり――ARゲームをプレイする為に草加市へ訪れる観光客等が多くあふれている。

草加市に関しては平日でも祝祭日でも似たような状況となっており、それだけARゲームの注目度の高さもうかがえるだろう。

 コンビニ前のARゲーム専用サテライト筺体、谷塚駅や周囲のコンビニ等に置かれているのと同型であり一種のゲームエントリー受付とも言える。

サテライト筺体の前でARゲームのエントリーを行っていたのは、長門ながとクリスと木曾きそアスナだった。

彼女たちの装備は、既にプレイする為の用意を済ませているようだが――。

「このサテライトではパワードミュージックはプレイ不可――そちらの望むARゲームで受けて立つよ」

「では、ガジェットのチェックを――?」

「成程。このエリアで選択できるARゲームは満席が多いのか」

「満席の中には30分待ちもある。さほど混雑しない機種で良いか?」

 木曾がパワードミュージック以外で挑戦を受けると言ったが、長門のガジェットチェックで木曾の使用しているガジェットに適合するジャンルが少ない。

対人戦の場合、お互いに同じゲームのデータがある事が大前提となる。片方が所持していなくても、新規エントリーすれば問題はないのだが。

それに加えて両者がシステムデータを持っているゲームで共通している作品が少ないのもネックだったようだ。

そういった事情も踏まえ、混雑しない機種を選ぶというやりとりもあったのである。この状態になる前には、一つのやり取りがあった。



 あの時、長門の隣に姿を見せた女性、左目に黒色の眼帯、黒マントも装備と怪しい外見――それが木曾だったのである。

「私の名は、木曾アスナ――パワードミュージックの上位ランカーだ」

「上位ランカーと言ったか?」

 長門は木曾の言った『上位ランカー』と言う単語に過剰反応した。

それこそが木曾の思うつぼと言う訳ではないのだが、狙いの一つにも見える。

「ああ、確かに上位ランカーと言った。それも、パワードミュージックの」

 木曾が何もないような所から出現させたのは、形状が若干特殊なARバイザーである。

その形状はツインアイが特徴の物であり、その姿は異質と言っても過言ではないだろうか。

「ARゲームはデスゲームの類ではない。それを踏まえた上で、勝負をして欲しいと言ったら、どうする?」

 長門は、木曾の提案を飲む事にした。提案の裏に何かがあるのは分かり切っており、明らかな罠とも取れる。

しかし、木曾の表情を見る限りでは意図は何かあったとしても罠を仕掛けているような気配は見受けられない。



 午前10時25分、あれから時間が経過しているのだがサテライト筺体の受付を行ったのに、なかなか順番が回ってこない。

「ARゲームは新作が稼働開始した際に一番混雑するのは、ネット上でも言われている常識だ。それを知らなかった訳ではないだろう」

 長門の一言を聞き、木曾の方も若干思い出したかのように相槌を打つ。

「それでも、パワードミュージックは稼働開始した初日こそ混雑したが――今は劇的に緩和されているはずだが」

 木曾の方も謎の混雑はパワードミュージックのせいではないと言うのだが、タブレット端末で待ち時間を確認した所――。

「一部エリアでトラブル?」

 これと同じニュースは長門も確認していたが、驚いたのは木曾の方である。

トラブルの種類は回線やシステム不具合ではなく、物理トラブルだ。誰かがサテライト筺体でもたたき壊したのだろうか?

コースの破壊でも物理トラブルと認識されるが、そこまでに発展するとケーブルテレビ局等が臨時ニュースとしてテロップを打つだろう。

「内容は調査中と出ているが」

 長門がニュースの詳細を確認しようとしたが、調査中と出ていて内容は不明扱いになっていた。

現場へ行く事も視野に入るような展開だが――2人は悩んでいる。



 同刻、トラブルの起きたエリアは谷塚駅から数百メートル先の広場とも言える場所だった。

広場と言うには、周囲には学校があったりするのだが――周辺住民からは許可を得て設置されている為、その部分の問題は解消されたとばかり思われていた――のだが、事件は起こったのである。

ギャラリーと言うか野次馬も若干数ではあるが集まり始め、その中にはネットを炎上させようと言う人間が混ざっている可能性もあった。

「筺体が破壊された訳ではないようです。この筺体を破壊できるとしたら、それこそ大砲を持って来いと言うレベルですので」

 調査を担当していた男性スタッフは、周囲の現状を見て驚き声をあげる。

サテライト筺体は破壊されておらず、エラーが出た原因は不明だ。

エラーの種類が物理トラブルである以上、何処かに破損の形跡が残っているはずだが――。

「とりあえず、応急処置を行って――?」

 スタッフが応急処置を行う為、サテライト筺体の近くに設置されている太陽光発電機を確認した所、その原因が判明した。

何と、太陽光パネルが一部で盗難されていたのである。どう考えても総重量100キロオーバーと言う物を、白昼堂々と盗んだ事には周囲も驚きを隠せない。

パネル自体は数十枚のパネルを1枚に組み立てるタイプであるが、1枚でも欠けると充電出来る電気量が代わってしまう為、強制停止してしまう。

このシステムが分からないで行われた犯行とは到底考えにくく、明らかにARゲームの妨害を考えた勢力の犯行だろう。

太陽光パネルを転売しようと考えるにしても、パネルがARゲーム専用の特注品なので家庭用には転用できない。

そうなると、考えられるのは一つしかないだろう。それが、ARゲームの運営妨害である。

「パネルの交換は?」

「先ほど手配をしましたので、10分位で応急処置は可能です」

「犯人の目星は?」

「それも監視カメラの情報待ちです。今は、どうする事も出来ないでしょう。それに、犯人が未成年だった場合――」

 男性スタッフ達にも動揺が感じ取れる状況だが、今は1秒でも早くARゲームを復旧する事が最優先である。

太陽光発電はARゲーム以外でも、非常用電源などで利用可能なシステムになっており――これが草加市の経済にも貢献していた。

この他にもさまざまな発電方法で電力を賄っているが、その中には火力と原子力はない。

「何故、草加市ではあれだけのARゲームを運営し、電力を無駄に消費していると言われないのか――」

 野次馬の中には、何処かの週刊誌記者と思われる男性も混ざっていた。

彼は草加市の電力消費量が東京23区の全てを足した数よりも多い可能性を考えているが、それを編集長に話したとしても信じてはもらえない。

むしろ、有名アイドルを解散に追い込めるスキャンダル記事を持って来いと言うのは確定している。

それほどに週刊誌では超有名アイドルを絶対的力を持ったコンテンツにしようという動きがあるのだが――ネット上では、それこそ過去の事例の繰り返しと言う事で冷めきっていた。

「地下に原子力発電所でもあるのか、それとも――」

 記者の方は、しばらく様子を見た後に足早に去っていく。

下手にとどまれば、ガーディアンに通報されてしまう可能性もあったからだ。

 その後、彼らの手際良さもあって15分程で応急処置が完了し、太陽光発電機も正常に稼働した。



 午前10時40分、木曾と長門は指定されたエリアまで移動ユニットで向かう。

移動ユニットはアンテナショップで貸し出しをしている物で、その形状は実体シールドにも似ていた。

確かにシールドと形状は似ているのだが、実際にはサーファーの様にボードを動かす形式だった。その昔、SF映画で見たような技術がARゲームで現実化したとも言える。

「他にもガジェットがあるが、免許等の手続きが不要なのは、これ位だ――仮に使えたとしても、レンタル料は半端ないが」

 木曾は若干慌てているような口調だが、顔は冷静である。

「ニュースでは太陽光パネルが盗まれたとか――」

「その通りだ。ARゲームは太陽光と特殊なエネルギーを交互に使用している」

「特殊エネルギー? まさか――」

「言っておくが、原子力技術は完全に失われている――それも30年以上前に」

「歴史の教科書にあったロシアの――」

「それよりも後に起こったとされる特殊エネルギー技術の革新――それが、原子力消滅と関係があるらしい」

「それと超有名アイドルに関係が?」

「エネルギー事業に芸能事務所が首を突っ込む訳はないだろう。だが、マスコミは特殊エネルギーの技術を魔法と言っているが――それこそ、コンテンツ炎上狙いの発言だ」

 話をしていく内にエネルギーに関係する話になった。しかし、木曾は特殊エネルギーが魔術や陰陽道等の応用技術とは考えていない。

仮に魔法的な技術だとしたら、それこそさまざまな会社等が独占しようと名乗りを上げるのは避けられないだろう。 

「では、特殊エネルギーとは――?」

 木曾が魔法とは違う物と言う以上、長門も若干の興味はあるのだが――。

「それこそ、アカシックレコードに書かれた特記事項――簡単に言えば企業秘密となる」

 木曾の一言は、あまりにもご都合主義的過ぎる物だった。しかし、長門も反論が出来る程に情報を知っている訳ではない。

今は指定エリアまで急ぐ方が先なので、木曾の話は後回しにする事にした。

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