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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード12『次のステージへ、ゴングを鳴らせ!』

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エピソード12-19

2017年2月24日付:加筆調整、サブタイトル修正

 大和朱音やまと・あかねはコース変更に関して独断で行った訳ではない。

これは運営から独自特権を与えられていたからこそ、可能だったものと言えるだろう。

そうでなければ――サプライズ新曲を決勝で使用する等の事は不可能だったかもしれない。

リズムゲームの中には、決勝で新曲を披露した作品もあるのだが――。

「ネット炎上勢や炎上マーケティングの始祖は、週刊誌のパパラッチやワイドショーの過剰なバッシングによる物と言われている――」

 大和は特設の放送設備のある部屋で各種モニターを見つめていた。

「ペンは剣よりも強し――本来とは違う誤訳が広まり、その結果として今回のような事例が生まれてしまったのだとしたら――」

 彼女は、ふと考えを改めようとしていた。保護主義的なガイドラインを組む事がARゲームの為になると思った、あの時とは違う。

それに関して比叡ひえいアスカに言われた事もあるのだが、それ以上に――。

「我々はARゲームを芸能事務所側が誤って広めてしまった認識を間違いであると説明し、改めて正しいARゲームの戦略を練り直す必要性があるのかもしれない」

 大和は比叡の言葉を聞き、自分だけが背負っているように思えた物――。

それはいつのまにか他の人物にも影響を及ぼしているのかもしれない、と考えるようにもなった。

アカシックレコードのARゲームに関する項目も、この世界では認識が正しいとは思えない部分もあるかもしれない。

だからこそ、改めて大和はARゲームの認識を変えなくてはいけない――この世界に合ったARゲームへと、仕切り直しをする必要性があると判断していた。

「本当に変えるべきなのは、このような現状を生み出す事になった芸能事務所や芸能界その物――コンテンツ流通を超有名アイドルだけあれば問題ないと進言した政治家か」

 しかし、そこまでの権力を大和は持ち合わせてはいない。確信犯と言えるような行為を行っている勢力を裁く事は出来ないのだ。

一方でARゲームで、そこまでの力を持っていないと思われがちだが、ネット上では【核兵器にも匹敵する能力を持っているのに】と言う意見もある。

それこそが、比叡が懸念していたアカシックレコードの軍事利用だと言う事をネット住民は全く認識していない。

「力で訴える事が全て正しいとは思えない。ARゲームは武力ではないのだ。それを――認識させる為にも」

 改めて大和は思う。ARゲームが本来あるべき姿を――ここで訴えるべきだ、と。

その為にも、今回のレースは何としても成功させる必要性があったのだ。妨害勢力は既にせん滅したと報告を受けている。

後は、今のレースを成功させる事。リアルとゲームは違う事を認識させる為にも――。



 楽曲の方はAパートが始まった。稀に流れる謎の言語はボイスソフト等で作りだした物ではなく、適当な歌詞を羅列した物らしい。

それを無理やり歌おうとする人物は数多いが、それはこの曲とは別の曲での事例であり――この楽曲ではないようだ。

実際は、その楽曲を元ネタと言うかリスペクトした楽曲と言う可能性もあるのだが、それは作曲した人物に聞かないと分からないだろう。

コンフリクトと言う曲タイトルも、おそらくは――。

「元が分からないと厳しい物もあるが――そう言う事にしておくか」

 楽曲の傾向が掴めず、中盤からオブジェクトのタイミングをミスしていたのはアイオワである。

彼女自身は焦りでオブジェクトをこぼしている訳ではないので、ヴェールヌイやリベッチオに比べるとチャンスはあると言うべきか。

アイオワもホバー移動等ではなく自分の足で走っている。ビスマルクのホバーとは段違いなのだが――足には自信があった。

彼女にアスリート並のスタミナを持っているとしても、ARゲームでは無茶な部分があるのかもしれない。

「唐突なストップ箇所やBPM変化はないにしても――ここまで物量戦になるなんて」

 楽曲によっては、オブジェクトが唐突に止まる、BPM変化で急に遅くなったり早くなったりもする。

リズムゲームと言うシステムを使用している関係もあり、オブジェクトが一定の法則で現れる訳ではない。

シューティングゲーム等であれば、唐突に出現する敵をある程度スルーするという戦略もあるかもしれないが――これはリズムゲームである。

オブジェクトを無視するという選択肢は、ルールを把握していない初心者か捨てゲーをする事と同じ意味だ。

それでも全部のオブジェクトを1個も見逃す事無く接続する事――フルコンボを狙うのは至難の業である。

それも、決勝で初めて聞くような楽曲と言う事もあり、難易度は桁違いだ。



 楽曲のBパートでは、レーザー砲でも撃つかのようなオブジェクトの連続出現地帯が待っていた。

それを難なく進んでいくのは、ビスマルクである。彼女は指示されたルートとは別に、若干の別コースを進んでいた。

なお、このビスマルクの行動は反則ではない。ただし、指定されたコースを大幅にオーバーすればコースアウトの扱いにはなるだろう。

「通常のコースを進むだけでは、ゴールは難しい――それはパルクールでは言及されている事」

 ビスマルクは、リズムゲームプラスパルクールがパルクールのルールも存在している事を利用し、ARバイザーで指示されたコースとは別のコースを進んでいた。

そして、そのコースを進むのにホバー移動では逆に時間がかかると判断し――自らの足でコースを走っている。

ホバー移動は舗装された道路等では有利だが、ここはアスファルト舗装はされていてもコースとしては整備不良と言ってもいい。

そうしたコースをホバー移動すれば道路が更に損傷し、一般市民が迷惑をしてしまうと考えたのである。

「ここの舗装も万全であればホバーを使うが、これでは無理と言うべきか」

 近道を使ったのが裏目に出たようなコース環境だったが、楽曲の長さを考えれば――最短コースを選ぶのは当然と言うべきだろう。

パルクールでは『自身を守り、他人を助ける』という前提のもとで行われる。それを踏まえ、ビスマルクは自分なりのコースで走っていた。

「ARゲームではルールを守れば何をしてもいい的な風潮もある。しかし、本当の意味で守るべき物とは何なのか――」

 ビスマルクは別の意味でも試されている物があると考えていた。

ルールを守れば、危険なパフォーマンスが認められるのか、レース中に超有名アイドルの宣伝が認められるのか、プレイ結果に対してクレームを付けてネット炎上が許されるのか――。



 楽曲のCパート、クライマックスでは再び謎の言語が聞こえる。しかし、その単語に対し――。

「そう言う事か。意図的にメッセージを伏せていたのは、そういう例えにしていたのか」

 ビスマルクが他のプレイヤーと同じフィールドに復帰する。

何処から姿が――と思われたが、彼女が姿を見せたのは別の道路からだった。

「この楽曲に秘められたメッセージ、それを受け継ぐのは――」

 アイオワもラストスパートの直線コースを走る。リベッチオとヴェールヌイは若干のスタミナ切れな気配もした。

ARゲームのバッテリー切れは太陽光バッテリーを使用している関係で、さほど困るような物ではないだろう。

懸念すべきはプレイヤー自身の体力が持つかどうか――こちらの方である。

リズムゲームでも最終的にスタミナが必要な機種もあるので、ジャンルによってはスタミナがある程度あった方が有利になるのは、この為だろう。

「ARゲームの未来を守る為の――」

「コンテンツ流通を変えるだけの可能性を――」

「「このランカー王の称号で!!」」

 ゴール直前の10メートル弱――2人はそれぞれの想いを叫ぶ。それが届いたのは――1人しかいなかった。

『ただいま、判定を行います。なお、レースのゴール順は関係なく、スコアで判定いたします』

 判定はゴール順ではなく、スコアでの判定とアナウンスがあった。

リズムゲームではゴール順は重視されない。仮に適用されるとしたら、それはスコアが同着等の判定があった際だけ。

ネット上ではアイオワ優勢だが、判定結果が出なければ分からない。

一方でビスマルクは途中からスコア集計が出来ないようになっており、コース選択が裏目に出たと分析する人物もいる。

どちらが勝つのか――大和も祈るような気持ちだった。ランカー王の称号を得るのは、一人しかいない。


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