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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード12『次のステージへ、ゴングを鳴らせ!』

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エピソード12-6

2017年2月14日付:加筆調整、サブタイトル修正

 午前12時45分、新交通からバスを経由して谷塚駅のアンテナショップへ到着、姿を見せたのは大和朱音やまと・あかねである。

彼女は運営の為に本選への参加権限はないが、大会の一時中断権限は持っていた。

これが意味しているのは――チートアプリの調査が該当するのだが、現状ではそこまでの行動をとるような事件は起きていない。

さすがにチート疑いで権限を乱用しても、大会の運営妨害と判定されかねない部分もあった。

「既にこのエリアの決勝は終わったのか?」

 大和はスタッフルームへと足を運び、事情説明を聞く。

すると、スタッフからは予想外の単語が飛び出す事に――。

「実は、予選の方で違法アプリを検出したという情報があって、それを再調査したのですが――」

 男性スタッフは検出された違法アプリのデータを大和に見せる。

すると、大和の表情は変化した。おそらく、ビンゴと言えるかもしれない――。

「これと同じアプリが使用された形跡がないか調査を――それと、この事に関しては本部には内密に」

 大和は該当するアプリを使っているプレイヤーが他にいないか調査を依頼するのだが、その際に本部に伝えないで欲しいとも言及した。

何故に本部へ伝えないで欲しいと言ったのか、それはスタッフにも分からなかったが――相当重要な事なのだろう、と判断する。

この様子を一部のプレイヤーが目撃するが、それをネット上につぶやいて拡散しようという人物はいない。

仮にいたとして、その情報が歪められて大会中止に追い込まれでもしたら――それこそ、一部勢力の思う壺だろう。



 アンテナショップを出ていく大和だったが、別の場所へと向かう途中にARメットを被っていないヴェールヌイと遭遇した。

黒髪のツインテールにメガネ、白衣でARインナースーツを隠している辺り――特徴を見ればバレバレなのは言うまでもない。

「大和――あなたはコンテンツ流通をどのように動かすつもりだったの」

 ヴェールヌイの一言、それはあきつまるに言われた事の焼き直しに近い物だった。

コンテンツビジネスを何とかしようと言うのは考えているが、それは自分1人だけでは力不足と言わざるを得ない。

逆に言えば、一人でコンテンツビジネスを全て動かそうと言うのであれば――それこそ超有名アイドルのプロデューサーとやっている事は同じである。

それだけは何としても避けなくてはならない――そう大和は思っていた。

「超有名アイドルや悪目立ちするネットユーザー等のタダ乗り勢力、そうした勢力に宣伝場所として悪用されない物――それを考案したつもりだった」

「しかし、どのようにガイドラインを作ったとしても、わずかな穴を発見する形で裏技を使われた結果――」

「それは分かっている。あの勢力が、ここまでARゲームを解析するとは予想外だった。それ程の宣伝効果がARゲームにはあった、と言う事」

「つぶやきサイト、ブログ、動画サイト、キュレーションサイト――さまざまなSNSが100%悪用されないという保証が出来なくなっている以上、ARゲームも世に出回れば、そうなるとは考えてなかったのか」

「ダイナマイトの理論は何度も言及されている。結局は使用する人物のモラルにゆだねられる事も――」

「そこまで分かっているならば、ガイドライン改訂の際に年齢制限を何故に付けなかった?」

「年齢制限の付いたゲームの場合、下手にアダルト描写等があると思わせてしまう。それは避けたかった――課金的な意味で制限をかけたとしても」

「別の制限を入れれば、それを突破しようとして不正を行う連中が出てくる。だからこそ、制限をかけすぎる事はルール作りとは全く違うと言う事だ」

 2人の対話は続くのだが――お互いに引くような事はない。それに加え、本来であれば大和は別の場所へ向かうはずなのだが――。

この会話に関して、密かにSNSへアップしようと言う人物は周囲にいなかった。逆に自分が炎上すれば、自爆と言う事で大損をする。

アフィリエイト利益を得られるとしても、危険な橋を渡るのはリスクが大きいと考えたのかもしれない。

それだけ、ARゲームの話題に関しては逆炎上すると考えている人物が多くなった――それは逆に良い事だろうか?

「これだけは言っておく。不正ARアプリの一件、リズムゲームプラスパルクール以外でも報告例がある。つまり――」

 言いたい事を言って去って行ったヴェールヌイは、あきつ丸のデジャブを感じさせた。

結局は言いたい事を伝えたいだけ――自分はクレーム処理担当ではないと言うのに。

しかし、クレームを言うだけならば本部へ連絡すれば済む話と言うのも事実なのは確かである。

それを大和へ直接言うのには理由が――そう考える事にした。

「コンテンツ業界を掌握するのは――マッチポンプ等を考えて利益を得ようとする芸能事務所、その利益を利用しようとする政治家のやることだ」

 大和は自分がコンテンツ業界を牛耳るような実力はない――と考えていた。

一方で、ARゲームの未来を考える専門家等は大和の力が必要とも――。



 同刻、17位~24位の上位戦に関してはレース自体が中止の危機になっている。

しかし、比叡ひえいアスカの進言もあって中止は暫定的にだが、回避される事になった。

「チートと言う他力本願に頼るようでは――レースに参加する資格などない。どうしても参加しようと言うのであれば、自力で勝って見せろ――」

「仮に自分と戦って勝てれば、自分は決勝トーナメントを辞退する」

 まさかの発言に会場がざわつく。これが単純な脅しの類やブラフではないのは、今までの彼女の成績を考えれば明らかである。

しかし、残念ながら再エントリーをしようと言う人物は現れず、数人は自分がチートを使った事を運営へ告白し、そのまま事情説明となった。

1人はこの場から逃走したようだが、あっさりとガーディアンに発見されて逃走失敗。

結局、不正手段を使ったプレイヤーは逃げられないと言う事なのだろう。

『他の選手が出場辞退した為、このレースは比叡選手の不戦勝と――』

「さすがに不戦勝はまずいでしょ」

 不戦勝と言うスタッフの発言を遮ったのは、何と比叡本人である。そして、スタッフにあるデータを転送する。

それはリズムゲームプラスパルクールで採用されたゴーストと言うシステムだ。

レースゲーム等で使用される自分のタイムと同じダミープレイヤーをコース上で走らせると言う物だが――。

彼女が呼び出したダミープレイヤーは、周囲の予想とは180度違う物だったのである。

『これは――ウォースパイトです! ネット上で噂になっていた謎のプレイヤーであるウォースパイトです』

 スタッフの方も思わず驚きを隠せなかった。

そのデータとは、何とネット上で様々な噂が存在していた人物、ウォースパイトだったのである。

何故、そのデータを比叡が持っていたのかは言及する事はなかったが――。

「これって、まさか――?」

 別会場のファストフード店で昼食を取っていたビスマルクは、タブレット端末に映し出されたアバターを見て驚きを隠せなかった。

「ウォースパイトが――比叡だったと言うのか」

 ヴェールヌイと別れた後に電車に乗って草加駅へ向かっていた大和も、この映像を見て驚きを隠せない。

ただし、ウォースパイトと比叡が同一存在と知っているのはごく少数のメンバーであり、この事実は運営本部も知らないのだ。

本来であれば同じARゲームにサブアカウントの類は一部ジャンル以外では禁止されており、発覚すればアカウント凍結になる可能性も高い。

それを踏まえても、彼女の行っている事は非常に危険である。

そして、彼女にチートを断罪する事は出来ないというネット住民もいるかもしれない。

それ程に、サブアカウントはチートよりも卑怯と思われている。クイズゲームでのサブアカウントは黙認とは言わないが、色々な話がネット上でも拡散されている。

「このデータはあくまでもコピーのデータに過ぎない。これがARゲームのサブアカウントではないのは、既に本部が証明済みよ」

 比叡の言う事を確認する為、スタッフはARゲームのデータを照会し、同じアカウントに該当するかの調査をする。

約1分後には比叡のアカウントで習得された物とは異なると証明された。

「一体、比叡は何をやろうとしているのか――」

 ファストフード店で中継を見ていたビスマルクは、比叡が何を行おうとしているのか――若干気になってはいた。

これがデモンストレーションで終わるのか、それとも別の意味を持つのか? 全てはレースの結果で決まるかもしれない。

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