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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード12『次のステージへ、ゴングを鳴らせ!』

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エピソード12-4

2017年2月13日付:加筆調整、サブタイトル変更


 午前11時、下位4名のプレイヤーがスタートし――遂にランカーを決めるバトルが始まったのである。

「順位的には――上位4人が勝ち残る可能性がゼロと言うべきか」

 各会場の映像を確認しているのは、大和朱音やまと・あかねである。

彼女は、既に別の場所へと移動を開始しており――信号待ちの合間にタブレット端末でレースの様子を見ていた。

このエリアでは一種の歩きスマホに関しては厳しく取り締まっており、通報された際には端末の没収をされてしまう事もある。

これは歩きスマホや運転しながらのスマホが社会問題化し、流行語にまでなってしまった過去を振り返れば――。

その為、信号待ちや足を止める際に画面をチェックしている状況である。

「規制ばかりをする事が正しい事ではない――それは比叡からも言及されていたが、ソーシャルゲーム等がふとしたことでデスゲームと呼ばれる事は避けるべきなのだ」

 大和はソーシャルゲーム等が人の命さえも奪う様なデスゲームになる事を――風評被害だとしても、避けるべきだと考えた。

WEB小説ではVRMMO等がデスゲーム化するケースは多いが、身近にあるようなカードゲーム等が闇のゲームとして扱われる事もある。

それは一部のゲームに限った事ではなく、ホビー漫画やホビーアニメでは度々題材となっていた。

俗に『玩具おもちゃで世界征服』と言われるようなケースが該当するだろう。

キッズ向け等の理由で、そこまで描写される事はないが――下手をすれば、身近な玩具でも命を奪う様な道具になりかねないのは事実。

大和が避けるべきと考えていたのは、ARゲームが戦争などに悪用され、それこそ国家間で行われるデスゲームが展開される事である。

海外の大統領などがARゲームを悪用し、それこそ大量破壊兵器へと作り変える事があれば――。

「ゲームに夢中になる事――それ自体は誰にでもあるだろう。しかし、周りの声を聞かずに集中した結果――闇に落ちる事だけは、あってはならない」

 ゲームの闇、それは無数に存在する悪しき部分であり、避けては通れない物でもあった。

スポーツにも怪我や事故と言った物が100%ないとは言えないように、ゲームでもネットが炎上するような事態が起きないとは断言できないのである。

人間には誰にでも失敗を起こす事がある――それは比叡からも言及された。

何事も試す前から禁止にして安全策を取る事、それが本当に正しいのか――それは、まだ分からないと言える。

「命を奪いあう様なデスゲームを現実化させる事は――絶対にさせない」

 改めて大和は決意を固めた。過去に何度も起きた戦乱を再現させるような状況――悲劇しか生み出さないようなゲームは繰り返してはいけない、と。

《人の命は奪って良い物ではない。それは――悲劇を繰り返す事になる》

 アカシックレコードの一文、アカシックレコードの技術を戦争に転用してはいけない事を――この一文が証明していた。

アカシックレコードを生み出した人物が誰なのか、それはもはやどうでもよくなっていた。

実際、アカシックレコードにアクセスした事のある明石零あかし・ぜろも、生み出した人物が誰なのか調べるのを途中で断念している。

「アカシックレコードE、それが何なのかは分からない。しかし、アカシックレコードの全貌を知る事は――ネタバレその物を呼ぶか」

 アカシックレコード自体がネタバレの正体と言う可能性――大和は様々な情報を得てきた中で、これほどのシュールな展開になるとは思わなかっただろう。

アカシックレコードと言うシナリオ――まるで、そこに書かれている事が預言であるかのような記述も散見されている。

しかし、アカシックレコードEを探る事は――このタイミングで行うような事ではない。後回しにしても、問題はないかもしれなかった。

「今は、レースの方が重要か」

 大和は信号を渡った先にある新交通の駅に到着し、そこである人物と遭遇した。

その人物は、大和にとっては衝撃的な人物なのだろう。



 同刻、32位のリベッチオ、31位のヴェールヌイ、30位、29位のレースが始まった。

コースは直線距離オンリーであり、大きな障害物は存在しない。

チェックポイントでUターンをする事になる事以外は直線と言ってもいいだろうか。

途中には国道などもあると言う状況だが――プレイヤーが通るまでの間は、通行止めとなっている。

この交通規制は高校駅伝やマラソンのそれと似ていた。

それ程の交通規制をしてまでプレイするゲームなのか――という疑問も一般市民や事情を知らない人間は持つだろう。

テレビ局の取材ヘリも飛んでいない中で、マスコミが騒ぎたてる様子もないというのは――取材規制を運営側が敷いている為と言われている。

しかし、実際はARゲームに視聴率を取れるような物はないとテレビ局が慢心した為というのが――ネット上での考えらしい。

実際に視聴率を取れるような番組だと言う考えを持っているスタッフがいなかった為、こうした状況になっているのだろう。

「まさか、こちらとしては『あの』弾幕シューティングゲームのアレンジ曲を、ここに収録したというのが不思議だが――この際どうでもいい」

 レースを開始して間もなく、何かのパターンを掴んでいたヴェールヌイがリードする。

しかも、出現するノーツの場所さえも分かっているような行動で、的確にソード型ARガジェットを振り下ろしていく。

そのスピードは、超高速の斬撃――には程遠い物だった。早く振り過ぎてもタイミングが合わない事でスコアに結び付かない。

それを踏まえれば、スピードを出してレースとしてのトップを撮る事は諦めているという戦略かもしれないが。

ヴェールヌイは走りながら移動している。残りの3名はホバー移動に対して。

その為、他の3名はヴェールヌイよりはスピードと言う点では後れを取らないが――ノーツの見逃しで取り逃す可能性はあった。

レースで1位を撮ってもレースとしてのスコアは勝てるだろうが、このゲームはリズムゲームである。

リズムゲームの最大のポイントは正確な演奏。それによるスコアが出せない事には、レースで1位でも逆転される可能性は高い。



 楽曲のメインパートに突入した辺りで、30位のプレイヤーと29位のプレイヤーはお互いに失策をしたと確信する。

それは何故かと言うと、ノーツの見逃しをした際に自分のゲージが急激に下がった事だった。

「予選仕様のゲージに何かあると思ったが――そう言う事か」

 リベッチオは1個のノーツを見逃した際、自分のゲージが急激に減った事に違和感を持つ。

実際、1ミスでゲージが大幅に減ると言うのはリズムゲームにも存在し、それらは基本的に段位認定等の特定モードに限られる――はずだった。

俗にハードゲージと呼ばれるものであり、機種によっては辛判定などとも呼ばれている。

「そう言う事ならば、話は別か」

 タ、タ、タ、タ――特徴的なリズムの部分で何かを感じたリベッチオは、ホバー移動のブーツを変形――ヴェールヌイと同じく歩行モードに変更する。

次の同じリズムのパートでは、何とか背中のウイングをブーメランに変形させ、それを上手く投げる事で演奏する事には成功。

今までの様な力技がリズムゲームプラスパルクールになってからは、通じなくなっている傾向があった。

それだけではなく、複雑化していたARガジェットの運用も攻撃・防御・技術の3すくみタイプに変更され、別の意味でも分かりやすくなっている。

この変更に関しては賛否両論あったのだが、過去のシステムも全面廃止する事無く、オプションとして適用出来る仕組みに変更した。

運営側としては複雑なシステムで敬遠していたプレイヤーを開拓しようと言う努力もあり、システム変更から2週間で多くのプレイヤーが新規エントリーしたのだと言う。

「やっぱり――細部で調整しているという事か」

 リベッチオはパワードミュージック時代のプレイも動画に残しているのだが、そちらと比べるとリズムゲームプラスパルクールでのプレイは違っていた。

ゴリ押しが通じたパワードミュージック時代よりも、今の方が動きにキレが存在している。

素人がいきなりプロのダンサーに近づくような劇的変化ではないが、見る人が見れば変化しているのは間違いない。



 その後、レースの結果はリベッチオが1位通過、2位通過はヴェールヌイとなった。

残る2名は道中でゲージを全て失った事でゲーム終了――リタイヤとなっている。

「上位4名の底も見えたと見るべきか。全力を出さなければ、ARゲームでは怪我をする事もあると言うのに」

 ヴェールヌイはメットを脱ぎ、上位プレイヤーのレースを観戦――レースの様子を見て、自分の思った事をそのままリタイヤしたプレイヤーに向けて言っていた。

おそらく、彼らは既に別の会場へ向かっている為、彼女の声は聞こえていないと思うのだが。

「それにしても、リベッチオと言ったか――あのプレイヤーは何者だ?」

 自分よりも高いスコアでクリアしたリベッチオ、ヴェールヌイは彼女に興味を持った。

そして、ARバイザーでデータを調べた所――動画サイトで有名な実況者である事が判明する。

「ARゲーマーやプロゲーマーと言う訳ではないのに、あの動きは――」

 何か疑問があるような眼でリベッチオのデータを見ていたのだが、特に目立ったような記述は見つからない。

チートプレイヤーではないと言うのは、プレイリザルトを見れば分かる。しかし、それ以外のスコアと言うのが――。

「プレイ回数は予選参加の規定回数ギリギリか。研究対策でやっているとは思えないが――」

 リベッチオのプレイ回数を見て、他の一部プレイヤーが実行していた研究対策のプレイ回数減らしと言う訳ではないと悟る。

実際にプレイ回数を予選の参加条件に加えたのは、こうした対策班やチートプレイヤーを締め出す為と言われていた。

公式発表でも不正プレイヤーのスコアが無効判定にされており、一連の設定に効果があった事を強調するようなお知らせも書かれている。

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