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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード12『次のステージへ、ゴングを鳴らせ!』

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エピソード12

2017年2月11日付:加筆調整


 あの様々なネット炎上事件が解決し、それから2週間後――。

谷塚駅近くのアンテナショップでは上位ランカーが次々と集まっているのが分かる。

時間としては午前10時30分、場所によってはプレイヤーが全員既に揃っている場所もあるだろう。

フィールドや場所的な関係もあって、別々に予選が開催される事となった。

1エリアにつき8名のプレイヤーが集まるのだが――この辺りは、ARゲームに理解を示している自治体等が少ないのも痛いのかもしれない。

「ここのフィールドは有名プレイヤーがいないのか」

「順位シャッフルでは、勝負にならない――白けてしまうという関係で1位~8位までの様に区切るようだ」

「よくあるパターンの組み合わせだな」

「しかし、これなら特定プレイヤーに不利と言う事はないと思う」

「ここの会場は25位~32位のプレイヤーが来ているようだが、特にスコアで目立つ選手はいない」

「本当に目立たない選手だけなのか? 回プレイヤーは上位プレイヤーに対するかませ犬ポジション――とは限らないだろう」

「では、どんなプレイヤーがいると思う?」

「特に突出する選手は――」

 周囲のギャラリーは、この会場にいるプレイヤーは引き立て役――と考えている可能性が高い。

しかし、そう言った評価をひっくり返すようなパフォーマンスを見せれば、必ず誰かが見てくれるだろう。

ギャラリーの中には残念ながら上位に入る事の出来なかったプレイヤーの姿もある。

ブックメーカーが上位入りを予想していたプレイヤーも、今回は対象外になる事も――実際にあったのだ。

【波乱のマッチングでもあるのか?】

【ブックメーカーが上位に入るであろう人物は、まさかのランク外に沈んだという】

【慢心があったのだろう。そうでなければ――】

【プレイヤーの心構えがなっていなければ、ARゲームでは負ける。ネット上でも、そんな事が言われていただろう?】

【どちらにしても、不正やチートをするようなプレイヤーが紛れてこない事を祈るばかりだ】

 ネット上のつぶやきでは、今回の大会でもチートや不正を行っているプレイヤーがいる可能性を示唆する書き込みがあった。

一体、この書き込みを残した人物は何を伝えようとしているのか?



 レースの開始は午前11時、下位4人が先にレースを行い、その後に上位4人がレースを行う。

この会場で言うと下位4人は32位から29位に該当し、上位4人は28位から25位に当たる。

その後、各レースの上位2位の合計4人が決勝レースを行い、上位2名が次のラウンドに進む。

敗者復活はないが順位決定戦レースは行われる。決勝前に敗者2名同士で行われ、そこでの勝者は今後のポイント戦に影響するだろう。

決勝レースに進出した4名の内、決勝での敗者は順位決定戦レースには参加できない。

その代わりに、万が一のリザーバー要員での参加が認められている。

「リザーバーねぇ――。チートプレイヤーが紛れていた場合の保険という可能性だって否定できない」

 レースの準備を行っていた会場を見て、ガーディアンの一人が不満をこぼす。

実際、ガーディアンの中でもチート勢力が滅んだわけではないと言う事で、更なるチート勢力の駆逐等を提言していた。

それらに対して中止を指示したのは、何とARゲーム運営本部である。この態度の変化は、ガイドライン変更と無関係とは言えない。

「今回の大会がチート勢力のランキング荒らしで中止にでもなれば――」

 つぶやきサイトに流されれば炎上しかねないような事をガーディアンは愚痴としてこぼす。

この人物が右手に持っていたタブレット端末には、あるネットのまとめサイト記事が表示されていた。

【超有名アイドルが海外進出に失敗? その原因は一部投資家による見せかけ投資の可能性】

 この記事の内容が事実かどうかは、ガーディアンにとってはどうでもよくなっていた。

彼のこぼした愚痴は、ARゲームのコンテンツ流通に関して反対している自治体も存在するという裏返しなのかもしれない。



 草加駅では、1位~8位と言うネームドプレイヤーぞろいの顔ぶれとなっており、会場は超満員とまではいかないが、市民マラソンクラスの観客がいた。

その理由は簡単であり、木曾きそアスナ、日向ひゅうがイオナ、天津風あまつかぜいのり、アイオワと言ったメンバーが揃っていたからである。

やはりというか、上位プレイヤーに有名所が集まると――こういう状況が起きる事が証明された。

ライブ会場を複数に分割し、1箇所に超有名アイドルが、別の場所では――と言うケースと同じだろうか。

「まさか、このメンバーの中に残るとは――我ながら貧乏くじを引いたか」

 周囲のメンバーを見てため息をついていたのは、長門ながとクリスである。

彼女としては仮に順位シャッフルでこの顔ぶれと対戦しなかったとしても、決勝トーナメントで当たるのは確実だ。

逆に言えば、ここで何とか倒す事に成功すれば――決勝が有利になるのは言うまでもない。

厳しいゲームになるかもしれないが、勝ち残らなければ意味はないだろう。

「運営的な事情もあって、私は参加できない。ここは、お前に若干の期待をしてもいいのかな」

 若干からかっているような口調で長門の前に姿を見せたのは、白衣姿の大和朱音やまと・あかねである。

「さすがに運営権限で参加したら、卑怯と非難されるのを恐れたか?」

「そう言う訳ではない。レースの前座でパフォーマンスならば認めてくれるという話だが、それではレース本編が盛り上がらないだろう」

「トップランカーに位置しているのは木曾だ。お前が出たとしても――」

「しかし、カリスマ的な人気と言うのはどのゲームにもある物だ。スコア的な部分では弱くても、パフォーマンスが有名なプレイヤーはいくらでもいる」

「ネームドプレイヤーの人気では――」

「それを言い出せば、別のARゲームのプレイヤーをこちらに呼び込めば観光客も期待できる、と言う理論に達するだろう」

「それでは駄目なのか? 自分も別のARゲーム出身だが」

「オールラウンダーが悪いとは言わない。しかし、ARゲームで複数ジャンルを制覇するのは――至難の業だ」

 長門から前座でのパフォーマンスでも出場するように言われるが、大和の方はそれも拒否した。

実際、パフォーマンス的な部分で言えばビスマルクやアイオワ、飛龍丸ひりゅうまると言ったメンバーが該当する。

世の中、そう簡単にはいかないという裏事情もあるのだ。

「それに、今回のゲームは次へのステップへ進む為の試金石だ。自分が参加して、逆にリアルチート乙――は一番盛り上がらない」

 大和がゲスト参戦でさえも否定した理由、それはあまりにも自分の名前が広まり過ぎた事にも言えるのかもしれない。

それこそ、超有名アイドルグループと同じだろう。自分だけが目立って他のプレイヤーが――と言う状況では、本末転倒と考えているのだろう。



 竹ノ塚駅に近い場所にあるARゲームフィールド、そこでは9位~16位のプレイヤーが集まっている。

こちらは有名プレイヤーが不在と思われたが、コスプレイヤーである島風朱音しまかぜ・あかね、上位ランカーのビスマルクがいる事で観客が集まっていると言えるだろうか。

「そこそこのメンバーが揃うと思ったが、長門がギリギリ8位に入った事で変化したか」

 インナースーツを装着し、ARメットを装着していたビスマルクはメンバーの顔触れを見て驚く。

これならば自分と島風が決勝トーナメント進出は確定だろう――そう考えていた。

しかし、ARゲームには絶対と言う物はない。過去にはチートの使用が途中で判明し、失格処分となった選手もいる。

それによってリザーバーのプレイヤーに注目されていた事例も――その為、決勝トーナメントを確定させる為にも、自分のレースを見せる事が重要だった。



 駅とは若干離れたエリア、見沼代親水公園付近――そこでは予想外の混雑具合も確認出来た。

ここでは17位~24位のプレイヤーが集まっている。ここへ来るためには、私鉄ではなく公共のバスや新交通と言った物が必要だろう。

西新井大師から新交通を利用すれば、ここへ来る事も容易だが――それでも若干大変だろう。

近くにはパチンコ店やショップと言った物もあり、ARゲームだけの混雑とは思えないが。

「別のリズムゲームに集中した結果が、こういう展開を――」

 周囲を見て、未注目と言うか明らかにモブっぽい選手ばかりが集まっている事に対し、比叡ひえいアスカは若干の後悔をしていた。

マナーの悪いプレイヤーに当たれば、レース中のラフプレーやチート使用と言う可能性も高い。

それを踏まえての懸念でもあった。比叡の懸念は、観客の顔ぶれ的な部分を踏まえれば――と思ったら、ARガーディアンの姿も確認できたので、五分五分と言う具合か。

「この時期にイベントが重なるのは、ヨクある事よ」

 ARスーツではなく提督服で比叡の前に姿を見せたのは、何とローマである。

彼女もレースには参戦する予定だが、ガジェットの準備的な事情もあってインナースーツには着替えていない。

インナースーツの着替えスペースがないという訳ではなく、インナースーツのデザイン的な部分もあるかもしれないだろう。



 再び、32位までの8名が揃う会場に戻る。そこに姿を見せたのは、黄色いインナースーツを着たリベッチオだったのである。

ヘッドフォンをして何かの楽曲を聞いているような気配だが、ARメットは被っていない。

「なるほど――自分以外のプレイヤーでは、注目メンバーが――?」

 リベッチオがセンターモニターの順位表を見るのだが、有名プレイヤーの名前は見当たらない――と思っていた。

しかし、約1名だけ別のゲームで見覚えのある名前を発見したのである。丁度、自分の上に名前が描かれていた。

「ヴェールヌイ――だと?」

 リベッチオは32位とギリギリで進出した中、31位と言う位置にいたのはヴェールヌイである。

おそらく、今までネット上で炎上案件等に関係していた西雲響にしぐも・ひびき――そちらのヴェールヌイであるのは間違いない。

「一筋縄にはいかないと思っていたが、こういう順位調整手段も販促にはならないのか」

 順位調整でトーナメント工作を行うのは、ARゲームではだれもが知っている手段だ。

それが反則と言う判定にならないのは、何を判断材料にして順位調整とみるのか判断しづらい部分もある。


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