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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード11『強豪が集いしゲームフィールド』

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エピソード11-10

2017年2月10日付:加筆調整

 6月7日、天津風あまつかぜいのりによって炎上勢力のノウハウを持っていたとされるアイドル投資家を逮捕する事に成功する。

しかし、一部の人物は管轄的な事情もあって東京都の方で警視庁に送られる事になった。

この件に関しては、ガーディアンも東京都にまで根回しが出来なかった可能性が高い。

この他にも大量のアイドル投資家や投資詐欺などに協力していたアイドルファンも逮捕され、こちらの一部はガーディアンに引き渡された。

どうやら、ガーディアンが関係する事件以外では逮捕出来る権限がないとも言えるかもしれないが――。

ファンの一人は『超有名アイドルのライブチケットを定価で譲ってくれる』という言葉に踊らされた――と証言している。

結局は一部の金儲けをしようと言う転売屋等によって超有名アイドルは利用されている現実が明らかになった。

更には政治家が税金を集める手段としても利用し、最終的には超有名アイドルの名前を出せば確実にもうかる的な投資詐欺にも利用される。

実際は、そう言う形で報道されたという事で、真相は語られる事がなかったらしい。

実は広告会社によるやらせ報道だと知ったら、ネット炎上は回避不可能だろう。

こうしたネット炎上対策をする為のガーディアン組織だったはずだが、いくつかの部分では後手に回っているらしい。

「これは異常事態と言うべきなのか――」

 アカシックレコードEへアクセスし、情報の詳細を確認していたのは長門ながとクリスだった。

彼女がいる場所は草加駅内のコンビニ前、そこに置かれたARゲーム用モニターからアカシックレコードへアクセスしている。

本来であればアカシックレコードEのデータは閲覧が困難と言う物なのだが、長門は容易にアクセス出来るようになっていた。

その理由として、ビスマルクから渡されたシークレットコードにあった。

 ただし、それを渡す条件として彼女が提示した物、それはある人物に接触しない事だった。

それを守ることを条件として、アクセス権限のシークレットコードを手に入れた。ただし、ビスマルクのメール経由だが――。

『ある実況者には首を突っ込まないことだ。彼女はARゲームを意図的に炎上させ、何かを狙おうとしている気配を感じさせる』

 実況者の名前はリベッチオ、この名前は実名と言う訳ではなく、ハンドルネームなのは分かっているが。

ビスマルク~詳細を聞こうとはしなかった。実際、リベッチオの名前を知ってから動画サイトを検索し、その詳細を知ったからである。



 6月8日、広告会社のやらせに関してのニュースが報道され始めたのだが、それでもあまり詳細な事が触れられている様子はない。

視聴者置いてけぼりな展開だが、こればかりは証拠を入手していても報道してもよいのか判断しかねるという具合か。

下手をすれば、またもやネット炎上で同じような事例の繰り返し――ネットユーザーからは炎上疲れが出始めているのも、その証拠だろう。

逆に炎上疲れでネット炎上が終わると言うのであれば、都合がい良いと考えているのはARゲーム運営だが、そこまで都合よくは進まないと考えていた。

「炎上疲れという言葉も――ひどい物だが」

 ネット上のタイムラインを見て、ため息交じりに何か物足りなさそうな表情をしていたのは比叡ひえいアスカだった。

彼女としては、あのガイドラインはここまでの状況に超有名アイドルを陥れる為に提案した物ではない。それなのに――現実は非情なのか。

ネット炎上を戦争と結び付けるような勢力も認められないが、それでもネット炎上は絶対に正義と言う訳ではない。

「今は様子を見るべきか」

 その後、比叡は様子を見る為に谷塚駅のアンテナショップへ向かう。ガジェットの調整も兼ねているのだが。

そこでモニターに群がるギャラリーを発見し、何を見ているのかと確認してみると――。

「あのプレイヤー、まさかの新人だな」

「新人と言っても2週間前にはプレイを始めていたらしいという話だが」

「あの動きで2週間はないぞ。あのクラスの動きならば、元アスリートでないと厳しいぞ」

「元アスリートと言えば、アイオワもそうだが――」

「軽装だから動きが良いというのは間違った認識だ。それは別のARゲームで証明されている」

 ギャラリーの一部の意見に対し、対立が始まっているようにも思えるが――特に炎上するような様子はない。

議論がヒートアップするのは悪い事ではないが、何事も限度があるだろう。

逆に議論へ発展せずにあっさりとひっこめても――と言う事で、ツッコミを入れるような人物はいないのかもしれないが。



 午前11時30分、比叡が別のモニターのARゲームを見ている頃、ある人物が自分の隣に座っていた。

身長は170位、服装は胸のラインが若干目立つようなビキニ系の水着、それにシューズである。

ビキニの水着は黒いインナースーツの上に着ている物なので、周囲の視線が刺さる事はないだろう。

一部の男性は残念がっているようだが――。さすがにプールではない所で水着姿と言うのも違うかもしれない。

中には女性のふんどし姿が街中に現れるようなケースもあるのだが、それは一定の理解が得られているからこそ。

全裸で歩けば、明らかに警察でなくても通報され、ガーディアンに拘束されるのは明らかだ。

それを踏まえると、水着姿と言うのも――。

「ARゲームプレイヤーの本職、それはゲームを楽しむ事、その楽しさを伝える事じゃないの?」

 かなりの正論を突きつけてくる。彼女も相当のゲーマーと言う事だろうか?

見た目からはゲーマーと言う容姿ではないのだが、発言的な部分はゲーマーのそれに似ている。

「確かにARゲームが楽しめなくなるようなチートの存在、悪質プレイヤーの摘発は重要よ。運営が最悪だと、客足は逃げていくから」

 彼女は自分の方を振り向くなく、自分で購入したと思われるフライドポテトを口にする。

「だからと言って、神運営が無尽蔵に量産されると思ったら――それも大間違いよ。運営だって失敗もするし、間違いもする」

 フライドポテトを食べながら、彼女が見ていたモニターは比叡と同じ物である。

比叡が見ていたのはリズムゲームプラスパルクールのプレイ映像だった。それも、中継映像という――。

「最初はリズムゲームにパルクール要素を足しただけで、リズムゲーム要素も迷子だった状態――それに、ネットもロケテの段階で炎上していたし」

 彼女は何を知っているのだろうか? 単純な知ったかぶりや知識の自慢したがりのような言い方でないのも気になる。

では、彼女は何故に比叡の隣に座ったのか? 彼女が比叡を知った上で接触したのか?

「後にリズムゲーム要素も強化する事で、何とかファン層をつなぎ止め――炎上を阻止する事が出来た」

 彼女の話は、まだ続く。比叡はそれに対してツッコミをする事無く、中継映像の方に集中している。

向こうの方も特に比叡がリアクションをする事は想定していないようで、話を続けようとしたのだが――。

「探したぞ――実況者」

 彼女の目の前に姿を見せたのは、白衣姿の大和朱音やまと・あかねであった。

一体、大和が実況者を探していたのかは分からないが――比叡も大和のいる方を振り向く。

大和はARガジェットを使用しているが、さすがに重装備のARウェポンやアーマーを展開する訳にはいかない。

そうした事情もあり、一部の携帯武装程度を実体化し、隠し持っているようだが。

「誰かと思ったら、運営所属の大和朱音――これは都合がいいかな?」

 彼女は手を付けていたフライドポテトを食べきった後、おしぼりで手を拭き始めた。

その後、彼女はARガジェットに手を触れ、何かを大和へと転送する。見た目としてはデータにも見えるのだが――。

「これは、開発中のARゲーム――! 一体、貴様は何者だ?」

 大和は周囲を騒がしてはまずいという事で、声のトーンを抑えていたのだが――彼女から転送されたARゲームのデータを見て、さすがに感情を抑えられずにいた。

このデータは、本来であれば現状で公開するべきではないプロトタイプとも言えるARゲームで、後に発展型をロケテスト予定だった物である。

そのゲーム内容は一部が黒塗りなのだが、所々の画面写真を見る限りではパルクールアクションを強化したレースゲームに見えた。

これほどの完成度のデータが黒塗りなのは――アカシックレコードからの拾い物以外の何物でもない。

「実況者――それ以上でも、それ以下でもないよ。アカシックレコードEにアクセスなんて、出来るはずないし」

 彼女の口から、まさかの単語が飛び出した。現状では一部勢力しか全貌を知らないというアカシックレコードEである。

この単語がさらりと出てくる以上は、彼女がただの実況者でないのは明らかだった。



 10分後、比叡は特に何も言及する事無く別の場所へと移動していた。リベッチオは当然気付いていない。

大和の方は若干ギャラリーが増えてしまった段階から、何となく分かっていたようだが。

「リベッチオ――まさか、お前が参戦するとは」

 偶然通りかかった日向ひゅうがイオナは、リベッチオの事を知っていた。

超有名アイドルや投資家ファン等を物理鎮圧している際、彼女に遭遇した事があったからである。

「日向か――お前も相変わらず、超有名アイドルの鎮圧か?」

「そちらの方は、ほぼ片付いた。今の状態ならば、こちらが介入しなくても自壊する」

「自壊とは――。そこまで弱体化しているなら、どうして警察などに任せない?」

「警察だと頼りにならないというより――もみ消される。ネット炎上の時と同じように」

「政治家の鶴の一声で、何とでも変わる世界――そんな物に面白みなどない。昔のゲームにおけるステージセレクトで最終面だけプレイするような感覚だ」

 日向とリベッチオの会話はかみ合わないように見えるのだが、実際は違う可能性が高い――そう大和は感じていた。

そして、日向はリズムゲームプラスパルクールの中継が放送されているモニターの方を振り向く。

そこにはレースに参加しているビスマルクの姿がある。その動きは、既にトップランカーと互角に近いだろうか。

「そうだな。リベッチオ、お前がARゲームに何か不満を感じるのならば――」

 次の瞬間、日向はARガジェットのタブレット部分を操作し、ある画面を表示させた。

その画面に表示されているのはランカー決定戦のイベント告知画面である。どうやら、日向はリベッチオとの決戦の場にここを選ぶようだ。

「ARゲームが、いつまでも超有名アイドルのタダ乗り宣伝のために存在する広告塔と考えているのであれば――この大会には興味ないだろう」

 日向がブラウザ画面を閉じようとした時、リベッチオの方が動き出した。どうやら、彼女はレースに参加するようである。

「そんなに参加して欲しいというのなら――その大会に参加するよ」

 リベッチオの方はやる気のようだ。しかし、レースのエントリー条件をこの場にいるメンバーでクリアしているのは、大和と日向のみである。

「しかし、この大会が行われるのは2週間後だ。それに、お前はレース参加条件をクリアしていない。まずは――」

 日向が言おうとしていた事は、リベッチオには分かっていた。それまでに参加条件をクリアする事――である。

「後は、既に参加可能な比叡、ビスマルク、アイオワ――その辺りか」

 そして、日向は姿を消す。この場に残っているのは、リベッチオと大和のみ。

彼女の方もエントリーする為にスコアが足りない部分がある為、それを稼ぐ為に別のレースへエントリーしたのである。



 2週間後、ランカー決定戦の幕が開こうとしていた。

エントリープレイヤー数は32名、そこから4ブロックに分かれ、勝ち残った上位2名が決勝で争う。

最終的に1位となったプレイヤーがトップランカーの称号を得る事になるが、ここで得られるトップランカーの称号は特別仕様となっていた。

果たして――このレースの勝者は誰なのか?

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