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リズムゲームプラスパルクール  作者: 桜崎あかり
エピソード1『比叡、エントリー』
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エピソード1-5

 4月10日午前11時35分、比叡ひえいアスカが在庫に残っていたガジェットを買うべきか考えている頃、もう一方の修理を注文していた人物の方は――。

「このケースですと、修理にも少し時間がかかりますね」

「どのくらいですか?」

「1時間もあれば――新品に入れ変えると言うのも、現状の品切れ状況では難しいので」

「それまでは代用品を使う事は?」

「エントリー開始したばかりのゲームなので、代用品の手配も――」

 修理に関しては1時間ほどで出来るようだが、新品への入れ替えは不可との事らしい。

しかし、代用品に関して聞かれると、何か裏の方で動きがあったという事でスタッフが抜けてしまった。

おそらくは在庫確認という可能性もあるが、周囲の混雑具合を考えると別のプレイヤーの応対へ回されている可能性も否定できない。

「仮に手配できなくても、始まったばかりの作品である以上は――データの不具合なども考慮して、プレイ中断を覚悟するべきか」

 彼女の方は代用品が手に出来なかった場合のプランも既に考えているようで、ガジェットの修理中は様子を見る事も覚悟している。

実際、その考えはあっさりと崩壊するような返答が――。

「代用品に関してですが、新品ではなく美品と言う事であれば――こちらがあります」

 スタッフが持ってきた物、それはお試しプレイで合わないと判断したプレイヤーが返却したレンタルガジェットだったのである。

形状は破損した物と一緒、カラーリングが白ではなくブルーと言う事を差し引いたとしても、その状態は未使用にも近い。

最終的に、彼女は代用品を手にしてアンテナショップを後にした。一体、彼女が何を手にしたのか、比叡は気にもしなかったのだが。



 午前11時37分、別の客が数人ほど姿を見せた。

いかにもアイドル投資家というオーラを出しているような背広の人物だったが――。

「ARゲームのアンテナショップは、アイドル投資家の入店はお断り――」

 身長169位の黒いショートヘアの女性が投資家の人物に声をかけるが、彼らは帰ろうとはしない。

その目的は別の物だったが、ここは目の前の人物を何とかしないと不味いと判断し、投資家の一人はハンドガン型のARガジェットを女性に向けた。

「こちらとしては穏便に事を運びたい。あくまでも客の一人に対し、営業妨害でもしようと言うのか?」

 確かに男性の言う事は正しい。彼らが超有名アイドルの投資家だという証拠は存在しないし、彼女の間違いなのかもしれない。

しかし、彼女が譲歩するような気配は見せない。逆にハンドガン型のARガジェットを見た事で何かを感じ取っていた。

「そのガジェット――もしかして、あの時に妨害した――」

 彼女は男性が持っているARガジェットを見て、何かを思い出していた。どうやら、見覚えがあるガジェットだったらしい。

次の瞬間、彼女は手持ちバッグからウィッグを取り出す。しかも、その色を見た投資家の一人は――。

「貴様は――アイオワか!」

 その女性の正体、それは金髪ロングヘアーのウィッグを付けた段階で把握されていた。

彼女の持つコードネームは――アイオワだったのである。

「アンテナショップにおけるARデュエル等は不可――それでも相手になると言うのであれば、外で受けるけど」

 アイオワは他にも何か言いたそうだったが、それを抑えて言葉を選んだ。下手に騒動を起こせば、出入り禁止もあり得たからである。

出入り禁止もあるが、ライセンス凍結などの処分になれば長期離脱は避けられない。

アンテナショップの1箇所で出入り禁止位ならば、別の店舗を利用すればいいだけの話――凍結の場合は、そういう訳にもいかないのだ。

基本的にARゲームのサブアカウントを持つ事は出来ない。1人1アカウントまでに決められていた。

アカウントを解除後の再契約であれば可能かもしれないが、手続きが若干面倒である。

「こちらとしても、お前と事を構えるつもりはない――」

 アイドル投資家は、アイオワの話を受け入れたのかは不明だが引き上げていく。

ここで騒動を起こせば、逆にネット上が炎上して自分達の応援するアイドルに風評被害が出る事を恐れたのかもしれない。

お互いにネット炎上を恐れて慎重な行動を取った結果、大きな騒動になる事は避けられた。

「アガートラームは、あまり頻繁に使う様な物ではない――と言う話だけど」

 アイオワは手持ちバッグに入れていたARガジェット、アガートラームを取り出す。

本来であれば銀色の腕を思わせるデザインなのだが、ARゲームで使用していないときは腕に取り付けるタイプの端末として収納されている。

厳密にはARゲームで使用するガジェットやARアーマー等はCGで表示されている状態の為、収納と言うよりは省エネではなく、省魔力モードと言うべきだろうか?



 午前11時45分、アンテナショップの待合室に置かれた液晶テレビ、テレビで流れているニュースではスポーツ競技大会の辞退を発表するニュースが報道されていた。

『速報です。2020年に東京で開催予定だった国際スポーツ競技大会は辞退と言う事に――』

 このニュースを見て衝撃を受ける住民は多いのだが、それよりも中止の可能性自体はネット上でも言及されていた。

ニュースに関してはネット上に偽物の新聞コピーが出回る等の情報戦が展開されていたのだが、ここまでのかく乱が必要なのか?

【やはり、辞退の正式発表があったか】

【施設自体は遅れていないが、問題はその建設に関わる費用だな】

【やはり、芸能事務所が絡んでいたのか?】

【わずか1万人にも満たないようなファンしかいない超有名アイドル――まさか?】

【そのまさかだ。アイドル投資家の存在を甘く見ていた結果が、これらしい】

【下手をすれば公認スポンサーよりも悪目立ちし、日本の超有名アイドルを売り込む為にスポーツ競技大会を利用する――Web小説でもよくあるようなパターンじゃないか】

【もしかして、芸能事務所のステマか?】

【それだったら、もっと大騒ぎしていてもおかしくはない。超有名アイドルの芸能事務所が、国際的なスポーツ大会を中止に追い込んだという事で】

 ネット上でも十人十色と言えるような意見が存在するが、大会の中止その物を残念に思う意見は少数派だった。

その理由として、東京に決定してからも超有名アイドル絡みで様々な事件が起こり、更には建設工事の決定権等も全て超有名アイドルの芸能事務所が――と言う噂もあった。

しかも、超有名アイドルファンやアイドル投資家が働いている会社等をピンポイントで選ぶというやり方に対し、競技大会の委員会側も疑惑を持ち始めていたのである。

その詳細は週刊誌や報道バラエティー番組と言った勢力にも悟られずに調べたという情報もあるが、そのソースはネットまとめサイトだった為、尚更マスコミからは叩かされる結果に。

「真相は不明のまま――何とも不自然な中止ね」

 身長170位、デカリボンの金髪セミショートと言う周囲から見ても目立ちそうな髪型――体格は地味過ぎて、あまり印象に入らない。

巨乳ではなく、だからと言って貧乳でもない。中途半端と言うべきか。

目の色は金色なのだが、これは別のARリズムゲームで使用しているカスタマイズに依存している。その為、実際は黒であるが――。

「とにかく、今はARゲームのイースポーツ化がどのような物なのか――」

 しかし、しばらくたっても目当てのニュースは流れない為、テレビから離れてタブレット端末の貸出コーナーへと移動し始めていた。

彼女の名前は島風しまかぜと言う。ネット上ではコスプレイヤーとしても有名である。

「あれはコスプレイヤーの島風じゃないのか?」

「本当だ。何故、コスプレイヤーがARゲームに?」

 コスプレイヤーがテレビ以外で目撃するとすれば、有名な同人イベントだろう。ARゲームの行われているエリアでは目撃率は多めだが。

それ以外でもお察しください――と言わんばかりの場所でも目撃する可能性は高い為か、ARゲームのプレイヤーからは歓迎されていない傾向もある。

ただし、超有名アイドルや歌い手等と比べると――あまり批判的な意見は出ていない。

単純にコスプレイヤーの知名度やネット上での噂等で選別されている可能性もあるのだが、その辺りの真相は不明である。

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